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Ⅴ ニットリンデンの楔―ⅹⅲ

 至るところから、火の手が上がったのか煙が見える。色のついた煙が上がった箇所、あれはフィルセイン軍の何かの合図なのだろう。気を引き締めなくてはと思うが、サクラには何が想定されるのかが皆目わからない。隣にいるクレイセスが鋭い目つきで戦況を眺めているのに、頭の中ではすごい勢いでいろいろなことが考えられているのだろうと、思考の邪魔にならないようただ黙っていた。


「報告します! 我が軍ともフィルセイン軍とも違う何者かの動きが」

「どちらに加担している」

「それがどちらとも。援軍と衝突している箇所において、どちらともを退(しりぞ)けようとする動きです」


 その報告に、クレイセスははっとしたように言った。

「軍旗を(かか)げろ! あるだけのセルシア旗を掲げて街中を走れ!」

 御意! と走って行く伝令に、少しして個々に旗を掲げた騎馬一隊が内砦から駆けていき、それぞれに分かれて各通りを走って行くのが見えた。


「報告します! フレバン隊撤退! ツイード隊も押されています」

 それから少しして上がって来た報告に、クレイセスは顔色一つ変えずに言った。


「ツイード、アクセル隊も後退を」

「は……」

 困惑する伝令に、クレイセスはサクラに向き直って言った。


「行っていただけますか」

 差し出された手に、サクラは手を重ねる。

 クレイセスには何か考えがあるのだと、なんの疑いもなく信じられた。


「ギール隊はこの砦を死守。ほかは全隊出陣。セルシアに続け!」

「御意!」


 クレイセスの張り上げた命令に、砦全体から声が上がる。

 サクラはイリューザーも連れ、クレイセスに導かれるまま、市街への進軍を開始した。


 まっすぐにコンヒサールからの援軍がいる方向に進みながら、クレイセスは号令する。


「地下にいるセルシア騎士団に告ぐ! 主君セルシアはここにいる。今こそ我らに呼応せよ!」


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