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Ⅴ ニットリンデンの楔─ⅳ

「この土地にお()での日、雨とともに命の芽吹きを促されましたね。そのときに芽を出した幼木をお持ち下さい。それらの木々はあなたを母として慕い、あなたが願うままに成長を遂げるでしょう」


 その助言に、「わかりました」と真摯に頷けば、ユリウスは微笑んだ。


「では、どうか現実にお帰りください」

「待って!」

 ユリウスがサクラの目を閉じさせようとするのを制し、サクラは言った。

「本当に……亡くなったんですか……?」


「ええ。姿を現さない状態のままやられてしまいましたので、犯人はわかりません。ただ、あの気配はサウロスかと」

「サウロス……」


 不穏な事件のたびに、その名を聞く。

 サクラは平静と変わらないユリウスに、実感を持てずに視線で縋り付いた。


「私のために、鎮魂歌を献じてくださいましたね。それに導かれてあなたにたどり着けました。サラシェリーアの件をエリオット子爵に伝えることは叶わなかったことを、一言、お詫び申し上げたかった」


 そう言うとスッと片膝をつき、ユリウスは(こうべ)を垂れた。そうしてゆっくりと顔を上げ、言い聞かせるように告げる。


「我々は本来の意味を失って久しい。あなたによって取り戻されることはきっと、これからも多くあるでしょう。従騎士(ヴァルフレイア)の役割もまた、我々が思うよりもずっと大きな意味を持っていました。ことセルシアであるサクラ様には、人の身で受け止めるには過分なものを食い止める盾として、幾重にも重なった悲憤を切り拓く剣として、彼らの存在は必須です。あなたの生活圏内に、必ず一人は置いてください。少なくとも、レア・ミネルウァの痛みを癒やすまでは」


「でも、今はクレイセスがいるんじゃ」

「四人で守っていたものを、一人で引き受けることは不可能です。特に世界が荒れている今は。それでもこうしてここで踏みとどまれたのは、クレイセス様とイリューザーの存在があったからなのですよ」

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