Ⅳ 手掛かり─ⅹⅹⅴ
「呼応させる方法は?」
「長官を派遣します。この策は一斉でなくては綻びになる」
クレイセスの言葉にガゼルとクロシェ、サンドラを見上げれば、それぞれが力強く頷いた。
「わかりました。近日中に、ニットリンデンに進軍します。各自用意を」
サクラの言葉に、皆が一斉に「御意!」と芯の通った声で応じる。その空気にさらに身が引き締まる思いで、サクラは出て行く彼らの背中を見送った。
ふーん? と感心と驚きを含んだ声のしたほうを見れば、出て行く素振りもないままに、デュエルがサクラを見ている。クレイセスが退室を促す言葉を発する前に、彼はにっと笑って言った。
「本当にサクラの号令で動いてるんだな」
「ああ……長官たちが聞いてくれるから、だから、別にデュエルさんが思ってることも間違いじゃないですよ」
おおかたクレイセスが指揮を執っていて、それをサクラの名前で号令している、と取られていることを察して言えば、デュエルは弁解するように笑う。
「あれ、そう拗ねるなよ。素直に感心したんだし。上位の騎士って、気位高いから制御するのも大変だろうなって思ってた。特にぽっと出のお嬢さんにはさ」
「それはデュエルさんの偏見です。もちろん個々人で考えを持ってますけど、統率を乱すような真似は誰もしませんし」
サクラはデュエルから視線を外し、地図に目を落とす。
進軍する、と言っても、細かな作戦やタイミングは、それぞれを率いる騎士たちに頼りきりだ。サクラは方針を決めるだけ。それでも、サクラが「セルシア」として不足のないよう、務めてくれる。
「それから」
サクラはデュエルをまっすぐに見て言った。
「騎士たちを無駄に挑発するような物言いはやめてください。わたしが不快です」
これにも、デュエルは軽く口笛を吹いて笑う。
「へえ? 結構言うね? 守られてるだけのお嬢さんて訳でもないとか、ますますそそられる」




