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《叛逆者》とよばれた僕は、世界を破滅へと導く  作者: 久遠 鏡夜
第Ⅰ章 ~緋翔戦姫編~
9/10

第Ⅵ話 《恍惚の笑み》

魔煌都市ノインエルカディア、

―――黒鴉の部屋。


ミカ=アインツヴェルンが都市の脱獄に成功した数分前の出来事。

部屋一面に彩られた結晶は少女の血痕で赤く染められていて、雲耀の魔門に続く中央通路には二人の少女が倒れていた。


一人は致命傷を負って、もう一人は撃ち抜かれて俯せのまま。

その直後に、カッ……カッカッ……ッと大理石のタイルに反響する足音。


「……アリス様。いつまでその演技をお続けになるおつもりですか?」

後者に近づく少女の人影。彼女が着ている服装は白と黒のグラデーションを基調としたデザインと簡素ながらも上品な生地を使用したドレス姿だった。


「くすっ。実際に拳銃で撃たれたのに演技だなんてわたしの従者とは思えない酷い言葉よね。でも、あなたにはいつも簡単に見破られてしまうわレイン」

レインの言葉に目覚めたアリステラはゆっくり身体を起こして背筋を伸ばした。


「わたしはアリス様の従者でもあると同時に眷属でもあります。アリス様が嘘をついているかどうかは見ればわかります」

「それで話は変わるけど……」

レインは「はい」と答える。


「例の《アインツヴェルン》の少年ですが魔煌都市の脱獄を成功させ〝叢雲〟に保護されたと影から連絡がありました」

「そう」

「アリス様?」

アリスは致命傷を受けて呼吸が荒く朦朧としている少女を無言で見つめる。


「微かに意識が回復しているわね。……私の声が聞こえる?いまのあなたの姿はただ藻掻き苦しみながら死に縋る。その痛みはとても辛く苦しいだけよ」

「……………………」

「ねぇセラ。あなたが望むなら私が永遠の命を授けてもいいわよ?」

少女は意識がかすんで身体を震わせているが力を振り絞って口元を動かす。


「……永遠……なん、て……、ない。人間、して……死、ほうが……いい」

セラの言葉を聞いた彼女は感傷に浸るように虚空を見つめた。


「永遠に永劫に…………何百年の時が経とうと自ら命を捨てることもできずに生き続けるのはとても窮屈でつまらない。でも、生きる希望を捨てたあなたを見捨てるほど私は冷酷でもない。だから、あなたには私の〝理想〟のために眷属として永遠に生き続けてもらうわ」


少女の口元に自分の唇を重ね、少量の血を飲ませた。

直後、セラの身体に異変が起きて全身に燃えるような激しい痛みが走る。


「……うく、あ、あぁ、い、痛い……身体が……ああああぁぁっっっ!」

視界に映るその光景から視線を逸らして主の様子を遠目から窺っていたレインは、

(幼少期からアリス様の従者としてお仕えしてきましたが鋭利な双眸で笑みを零すアリス様を見たのは初めてですね)

その表情に一瞬驚きつつも従者の少女は静かに目を瞑った。





「……理想郷都市の相関図を細部まで確認すると始祖ネビュリスが統治し管理下に置く九つの都市が存在します。天空都市フォルカス、霊鏡都市イルミナ、帝皇都市ヴェルカーナ、輝煌都市ミストルティア、海底都市オルクス、煉獄都市レーヴァティン、神鏡都市カルヴァリン……なかでも代表的なのは魔煌都市ノインエルカディアでしょう。始祖ネビュリスは自らの血液を死骸と化した人間に投与し、彼女の眷属化による禁忌魔術《降魔影霊》によって体内に渦巻く人間のDNAなどが突然変異を起こす。それこそが人間から吸血種の姿へと変貌する要因となり現在まで研究者らの間で仮説が紐解かれています。そして、これら都市の全統治権を保有しているのが『氷禍の虚塔』にて始祖ネビュリスを封印したとされる理想郷都市アヴァンシエルです」


「私たちが暮らす独立都市エルサレムの魔導図書館にて厳重保管されている禁書によれば、他の都市と比較した際にアヴァンシエルの魔素濃度は非常に高い数値の濃度が検知されており有害物質が発生している可能性がある場所になります。生物はおろか毒耐性に適性のある魔術師でさえ命の危険が伴う禁忌空域ということです」


「また始祖ネビュリスの眷属には序列の階級があり、皆さんが周知している通りに上位の吸血種ほど個体値に差が出始め、始祖の眷属もまた新しく階級の低い眷属を隷属できるということです。それでは、間もなく終了時間の鐘の音が鳴りますがここまでの講義内容で何かわからないことがあれば、わたしに聞いて……」

登壇しているステージから周囲を見渡す講師の女性がそれに気付く。


「はぁ、何度私はあなたに注意をすればいいの?ミカ=アインツヴェルン」

そう名前を呼ばれた僕は前方のステージに登壇している講義中の先生に視線を送った。

そこには華奢な体躯に抜群のスタイルと線の細いくびれが特徴の美人が頭を抱えて溜息をつく。

お久し振りです。また、新年明けましておめでとうございます。

久遠 鏡夜です。

新年一発目の最新話投稿にはなりますが、改めて2ヶ月ほど投稿できず大変心待ちにしておられた読者の皆様に対し、ご迷惑をおかけして申し訳ない。

これを機に再開できたらいいと思いますので、また宜しくお願い致します。

それでは皆様、次回の更新もお楽しみに!

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