表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《叛逆者》とよばれた僕は、世界を破滅へと導く  作者: 久遠 鏡夜
第Ⅰ章 ~緋翔戦姫編~
7/10

第Ⅳ話 《空を切り裂く銀の弾丸》

――――――現在、魔煌都市ノインエルカディア第??層《黒鴉の部屋》。


「ねぇ、アインツヴェルン。私は、人間(わたし)が嫌いなの。人は生まれながらにして運命に穢されてもなお、罪禍に手を染めようとする。自ら禁忌を犯すことも厭わない。結局のところ誰もがそこにある希望を零れ落とすのよ。始祖様も、わたしも、無論……あなたたち人間だって、そう」

どこか寂しそうな雰囲気を醸しだしていた彼女はただ虚空をみつめて。


「大罪を犯し禁忌に触れた者は世界の安寧と秩序から拒絶され、崩壊した世界でより人間を破滅へと導く。だけど、世界の理から認識されない例外も存在する」

「例外?」

「そうよ。あなたのすぐ隣にいるじゃない。人の骸の皮を被った〝化物〟が」


「……え?」

彼女の視線を辿るように僕はゆっくりと後ろを振り返った。

もちろん、そこにいるのは梳いた白銀色の髪が微かに揺らいだ少女セラの姿だった。


だが、さきほどまでは気にも留めなかった少女のうっすらと赤みを帯びた頬にできたその刻印に違和感を覚える。

昔、一度だけ家族の諸事情でとある魔導学院を訪れた際に、暇を持て余していた子供の僕は偶然立ち寄った図書館である書籍に興味を持ち記載されていた資料を読んだことがあった。その資料の内容と少女の頬に浮かぶ刻印の形が酷似していたのだ。


「何故、人間が精霊紋の刻印を発現しているのかしら?」

「………………」

アリスの的を射抜いた言葉にセラの表情は血の気が引いたように青ざめる。


―――精霊紋。

それは、純粋な血統と精霊の血液が身体に宿る精霊種のみに発現する紋章のこと。


紋章には特徴的なデザインが流麗に表現されており、精霊種はさながら真祖ネビュリスやエレンリーゼ=アリステラも属する上位吸血種などにもそれは発現していた。

主に掌や頬、腰といった様々な身体の部位に

但し、逆の意味に捉えれば……それは異種族にしか発現しない。


「ふふ、最初はあなたに興味がなかったけれど……《アインツヴェルン》の心臓よりも喰う欲望が強いのは初めての感覚よ」


その観点から一つの疑問が生じた。

なぜ、人間の少女は精霊紋の刻印を発現することができたのか?

それは前者の記述にあるような説明とは少し違う解答だった。



()()()()()()()()()でしょ?



「なん、で……それ……!?」

「くすっ。人間の匂いとは違って独特だもの。下級の吸血種は騙せてもわたしを欺くことはできないわ。それに混血種は個体能力や魔術構成などの情報は一切秘匿されている」

アリスは金剛の玉座に頬杖をついて。


「でも、一つだけ懸念点があるの。始祖ネビュリス様が禁忌を犯した日、あるいはかつての天上世界を戦禍に陥れた日に精霊樹の聖域に棲む精霊は全滅させたはずなのに……」

何故、あなたは《アインツヴェルン》と一緒にいるの?

刻々と静止していた時計の秒針がゆっくりと動き始めていくのを感じた。


「それは、始祖を殺すためよ。始祖ネビュリスが禁忌にさえ触れなければ私の故郷は、精霊樹の聖域は消滅しなかった」

「でも、そんなときに転機が訪れたの。始祖が崩壊させた世界で虚ろになって自失していた私が最初に出逢ったのがミカだった」

白銀の髪を靡かせた少女はちらりと横目でミカに視線を送る。

くすっと笑顔を零した少女の仕草がとても可愛らしい。


「初対面のはずなのにキミは私の手をそっと優しく握り締めてくれた。あの時に感じた温もりは今も記憶に――――――」

「それが《アインツヴェルン》の隣にいる理由なの?……くくっ、馬鹿にするなよ。それがたとえ事実だとしてもキサマの戯言に耳を貸すほど私は愚鈍ではない」


その時にふと違和感に気付く。

彼女の隣にいたはずのミカ=アインツヴェルンがいつの間にかその場から姿を消したことに。


「ミカ=アインツヴェルンはどこに!?」

「……ようやく隙を見せたな?」


突如、アリスの視界に映る風景がぐにゃっと蜃気楼のごとく歪に揺らぎ、幻影とともに姿を現した《アインツヴェルン》の少年。

その右手には一丁の拳銃が握られていた。

カチッと。

人差し指が拳銃の引き金に触れ、銃口から圧縮された凄まじい衝撃音とともに周囲に重低音が反響する。

1発の銀の弾丸カルヴァレットが空気を切り裂き、射線上にいるエレンリーゼ=アリステラを捉えた。


「「………………」」

その一瞬、僕と彼女の視線が交差する。


狙いを定めた一つの弾丸は目に見えぬ速度のままアリスに着弾し、その衝撃で着弾地点からうっすらと煙がたつ。


その隙に僕はセラの手を握り締め、雲耀の魔門(黒鴉の部屋と魔煌都市ノインエルカディア外部を繋ぐ脱出路のこと)に通じる中央通路を駆けていく。

その時、不意に黒鴉の群れが啼いた。


「――――たかが奴隷に堕ちた人間の分際で序列第七位の私を殺害しようとするなんて腸が煮え繰りかえるほど憤りを感じるわ」

投稿が遅くなり申し訳ございません。構想は随時進めていましたがより物語を面白く展開させていくためにどう構想したモノを落とし込むか悩んでいた結果、投稿が遅れてしまいました。

さて、第Ⅳ話はいかがだったでしょうか。

ノインエルカディアに視点をおく第Ⅰ話《魔窮の牢獄》を始めとした出来事は主人公にとって一つの転換点ともいえる重要なストーリーとなります。

また、Ⅰ章の構成としては全体のおよそ2割程度しか進んでいないため、ここからどうストーリー展開されていくのかも楽しみなところです。

それでは皆様、次回の更新もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ