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第十三話

「館内で大きな声を出さないでください。利用者が他にいない場合でもお願いします」


 受付の男性がやってきた頃には、窓には暗い誰もいない公園の遊具だけがある夜の風景。


「け、警察を呼んでもらえますか!」


 那内は受付にパニックになりながらも、そう言う。


「何か、あったのですか?」


 雨狩は先ほどのことを説明しようにも相手が信じるはずもないと思う。

 上手く言葉に出来ず、警察を呼ぶべき分かりやすい内容を伝える。


「手に大きな鉈を持った着ぐるみを羽織った男が、女性を追いかけている光景をそちらの窓から目撃しました」


「雨狩君! 何を言ってるの!? あれは人間なんかじゃない! まるで悪魔だよ!」


「彼女も錯乱しているようなので、お願いします」


「わかりました! ここに居てください」


 受付はスマートフォンをかけて、警察を呼ぶ。


「あ、雨狩君!」


 那内が雨狩の肩を両手で掴む。

 恐怖で怯えているような表情だった。

 手は震えているのが、雨狩の肩越しに小刻みに伝わる。


「那内さん、もうあいつはいないです。昨日の幽霊と言っていた男と関係があるはずです。北井さんに相談しましょう。ご両親にも連絡を……しばらくは外に出る時は、車で移動してください」


 雨狩はひどく冷静になっていた。

 その時ばかりは自信のない彼はいなかった。


(男の言っていた能力者という言葉と、あの追いかけた女性が関係があるのは確かだ。この町でこんな事態は今までない。なのに、何故僕ら以外に発見されたということがニュースなどで報道されない?)


「あ、雨狩君。この前の幽霊と言い……あの悪魔と言いどうなってるの?」


 不安になる那内を雨狩らしくもなく、気にせずに思考を続ける。


(昨日を含めたら今回が初めてならば他にも目撃者がいてもおかしくはない。この町においては殺人事件も起きていない上に、怪談話もあるはずもない。警察もそれらの目撃調査をするために、聞き込みなどをかけるだろう。ただ一つ確かなことは……)


「雨狩君? どうしたの? 何か言ってよ!」


 思考している中で、那内が雨狩の胸をポカポカと叩く。


「那内さん、今日は警察の取り調べで、帰りが遅くなると思います。ご両親が来て、家にそのまま車で迎えられるでしょう。北井さんの家には泊まることはまずないので、彼女たちにも連絡を」


「そんなことを言っているんじゃ……!?」


 那内が言い終える前に、雨狩のその落ち着きながらも意志の強い瞳に次第に冷静になる。


「わかったよ! 今連絡する!」


(あれは人間なんかが解決できる問題ではない。男に胸を抉られた後に心臓に何か関連性が?)


 結局その後は警察が来て、心配した北井たちが両親を連れてやってきた。

 その後に異常な現象は起こることもなく。

 取り調べが終わって家に帰れたのは夜の十一時だった。

 雨狩の両親は、母親だけが警察の元にやってきて、雨狩に今後はタクシーで通学することを言う。

 そして食事は購買部のみで買うことと、寄り道をせずに帰り、家から出ないことを強く言いつけた。

 飯田からメールが来て、雨狩は真実を伝えた。

 そして那内を落ち着かせるようにしてほしいとメッセージを送る。

 空元気に見えたのが気になっていた。

 那内からのメールは無かった。

 雨狩も那内のことを色々考えたのか、メールを送らなかった。

 家に帰った雨狩は続く恐怖での疲労もあってベッドに入る。

 気づけば寝息を立てていた。



「えっ? それじゃあ四限の授業中には既に早退したんですか!」


 雨狩は昼休みが始まった時にメールで飯田に呼ばれ、廊下で飯田と北井に那内が早退した詳しい話を聞いていた。


「美空木の話では、テニス部の朝練には一緒に出ていた。部活中は特に問題ないみたいだったようだが、口数が少なかったらしい。察するとこの前のことを気にしているようだ」


「あたしもあの話題には触れないように三加のメンタルケアじみたことしたんだけど、微妙な反応だったわ。それで三限の授業中に気分が悪いと言ってね。保健室に行って四限になっても、戻って来ないの。担任の先生に聞いたら早退だもん」


 頬に冷や汗が流れる。

 不安になりながらも、那内の状況を聞くことにする。


「……学校側は那内さんを一人で、帰らせたんですか?」


「ああ。この町周辺にパトロールする警察官が普段より多めにいるから、と言う理由で一人で帰らせたと担任から聞いたよ」


「なんてことを……」


 あの日の異形が浮かぶ。

 警察の警備だけでは、無謀だろう。

 殺される。

 雨狩は警察に頼んだのは軍では動かせない問題だ。

 仮に軍でも人ではないアレを倒せるかと言う疑問を抱く。

 そして他に頼るすべもないので、藁にもすがる思いで行っただけだった。

 時間を稼いで、異形が自分たちの被害に遭わなければいいというどこか残酷な理由。

 そんなことをあんな光景を見ていない警察がただの殺人犯だろうと思い警備する。

 ただ逃げるしかない。

 一人では危険。

 今頃那内は……。

 不安から流れた冷や汗はポタリと、廊下の床に落ちた。

 飯田は、そんな雨狩を見て話を続ける。


「事件の後の雨狩君のメールを見た時は異常な話だし、警察も信じてくれないのもうなずける。私たちも同行すべきだったが、担任は騙せない。ましてや学校の警備は厳重だ。早退に同意してくれたのは、警察の事情を聴いて那内だけそうするように学校側が行ったのだろう」


 それならば学校の下校が終わるまで、雨狩達は身動きは取れない。

 早退も出来ない上に、抜け出したところで警備員には見つかるだろう。

 時間だけがかかり、下校が遅くなる。

 その間に那内は最悪殺されるだろう。

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