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切れ者の次の一手

「私はね。騎士だからと思っていたけど…… 」 


 そう言うとシャムは腰に下げている短剣に目をやった。そして力強く言葉を続けた。


「もうね、出しちゃ駄目なんだよ。私みたいにおとうを殺されたり、熊太郎みたいにおかんを殺されたり。もうそんなことが繰り返されちゃ駄目なんだ。だから戦うんだよ。もう私達みたいな悲しい子供ができない為に 」 


 そう言うとシャムは腰の短剣の柄に手をかけた。


「君は強いんだな 」 


 ジェナンはそう言うと下を向いた。ライラが心配そうに彼に寄り添うように立つ。


「いいわねえ、ジェナン君には彼女が居て。あーあ私も素敵な彼氏が欲しいなあ 」 


「私では駄目なのかね? ルーラ君 」 


 レムはそう言いながらルーラの顔に手を伸ばそうとする。ルーラはその手を払いのけた。


「何をやっているんだか…… 」 


 呆れたセニアの言葉にじりじりと地味な笑顔を浮かべたレムとルーラが近づいていく。


「そう言うセニアはどうなのよ。やっぱり隆志君一筋? 」 


「俺がどうかしましたか? 」 


 悪いタイミングで仕様書から目を上げた御子神。全員の視線が彼に集中する。


「何でしょうか? 」 


 自分が話題の中心になっていることを知らない御子神隆志中尉は鳩が豆鉄砲を食らった表情だった。


「ニブチン! 」 


「最低! 」 


 レムとルーラにけなされて、何のことかわからずに首をかしげる御子神。そこに入ってきたのはシンだった。彼は微妙な控え室の空気を観察しながらクリスに目で訪ねてきた。


「ジェナン君が何の為に戦っているのかって話題を出したんですよ 」 


「なるほど、ジェナンらしいな。俺は信念のために戦っているな。モスレムの同胞の苦しみ、ゴンザレスの圧制への人々の叫び。それに俺なりに出来ることがあると思って東モスレムにやってきた 」 


 シンはそう言い切るとセニアと御子神を見た。


「ブリフィス大尉、御子神中尉。嵯峨隊長がお呼びだ。南部基地攻略作戦の会議だ。急ぐように 」 


 そう言うとシンはすぐに去っていく。


「動きが早いな。さすがに百戦錬磨の指揮官ではないというところだろうな 」 


 ジェナンはそう言いながら爪を噛んだ。すぐさまライラの右手が飛んだ。


「ジェナン! その癖みっともないわよ 」 


「それじゃあ行って来るわ 」 


「僕も…… 」 


 立ち上がったセニア、仕様書を机に投げて後を追う御子神。


「お熱いわねえ。そう思いませんか? ホプキンスの旦那 」 


 ニヤニヤと笑いながらレムがクリスに話しかけてきた。


 セニアと御子神が出て行くのを見守るクリス達。


「それにしても早いわね展開が…… 」 


「たぶんここまでの手順は嵯峨中佐は準備していたみたいだよ 」 


 クリスのその言葉にジェナンとライラは頷いた。


「本当に? あの人一体何手先まで読んでるの? 」 


「相手が投了するまでじゃないの? 」 


 ルーラの叫びにレムが淡々とこたえた。そんなレムの言葉にクリスは共感していた。


『あの御仁なら、そこまで考えていなければ戦争を始めたりしないだろうな 』 


 嵯峨がわざわざ追放された故郷に帰ってくるのに郷愁と言う理由は曖昧に過ぎた。彼はどこまでも軍人だった、それも戦略を練る政治家としての顔さえ垣間見えるような。情で動く人間とは思えない。嵯峨とは相容れないゴンザレスと言う男の政権でどれほどの人間が傷つこうが彼には他人事でしかない。その濁った瞳にはすべての出来事が他人事にしか映っていないはずだ。クリスはそう確信していた。

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