形見の品
「シャム。その刀は結構使い込んでいるね 」
クリスのそんな何気ない言葉に、シャムは立ち止まった。振り向いた彼女の瞳が潤んでいることはすぐにわかる。彼女はひとたび目にたまった涙を拭くとまた先頭に立って歩き始めた。
「すまない。きっとつらいことがあったんだね 」
「グンダリの刀 」
前を向いたままシャムは答えた。
「私のね、初めてのお友達。その刀なんだよ 」
シャムはきっぱりとそう言った。自分の言葉が少女を傷つけたことに少しばかりクリスは動揺していた。
「その子も亡くなったんだね 」
その言葉にシャムは肩を震わせるが、気丈なことを装ってそのまま村へ続く道を歩き続ける。
「いろいろ教えてくれたんだ。グンダリ。電気が明るいこととか、車が何で走るのかとか、それに一緒に焼畑の跡地に生える花を摘んだり、村の男の子が喧嘩を仕掛けてきた時は一緒に戦ったり 」
「つらいなら良いんだよ 」
クリスのその言葉に、振り向いたシャムはクリスに抱きついた。彼女の涙は絶えることが無かった。
「みんな死んじゃったの! 私の友達はみんな死んじゃうの! 」
「そんなこと無いわよ。そんなこと 」
クリスの隣に立っていたキーラが泣きじゃくるシャムの頭を撫でた。熊太郎も後ろで心配そうな声を上げている。
「もう一人じゃないんだ。泣きたいなら泣くといいよ 」
クリスは胸の中で泣く幼い面立ちの少女を抱きしめた。
シャムは涙を拭う。
「いい子だ。泣いていたら天国のみんなが悲しむだろ? 」
そんなクリスの言葉に頷くシャム。キーラと顔を見合わせたクリスにも自然と笑みがこぼれた。
「じゃあ行くよ! 」
元気を取り戻したシャムは石を積み上げて造られたがけに沿った道を歩く。
「転ぶなよ! 」
クリスがそう叫びたくなるほど軽快にスキップをしていた。クリスはキーラと黙って歩いていた。お互いに何かを話すべきだろうとは思っていたが、どちらも口に出せずにいた。
「ホプキンスさん? 」
キーラが口を開いた。だがクリスは言葉が中々出てこなかった。
「ああ、別になんでもないよ 」
たったそれだけの言葉だったが、キーラは安心したような表情を浮かべたあと、早足でシャムのほうに向かった。それをちらりと振り返ると今度はとんでもないスピードで悪路を走り始めるシャム。
「ホプキンスさん。シャムちゃんを見失っちゃいますよ! 」
振り返ったキーラの言葉にクリスは笑顔を返すと、そのまま石造りの急な坂道を早足で登り始めた。村の中央の高台。初めてここに来た時は夜でよくわからなかったが、この墓の並ぶ広場は延々と続く北兼台地の入り口を見渡せる景色のよい場所だとわかった。シャムは摘んできた花を一本一本墓に手向ける。その隣では静かに花の入ったかごをくわえて待つ熊太郎の姿があった。
泣いていなかった。シャムは泣いていなかった。




