謎の多い少女
「彼女、ラストバタリオンですか? 」
キーラ達人造人間には老化と言う変化が存在しない。機能が麻痺して次第に衰えるだけ。それならばシャムと名乗る少女の姿も納得できた。
「まさか。私達の製造がなされたのは先の大戦の末期。確かに私達は老いの遺伝子を持ち合わせてはいないけど 」
キーラはそう言うと悲しげに笑った。遼州の外惑星に浮かぶコロニー群で構成されたゲルパルト帝国。彼らが地球と戦端を開いたのは10年前。もしこの塔婆の群れが作られたのが遼南帝国の帝位争い、通称『北兼崩れ 』の時期と言うことならば、『ラストバタリオン 』と呼ばれた人造人間の研究の完成の前にシャムはすでに生まれていたことになる。
「そこらへんは専門家にでも調べてもらいましょう。それよりシャムちゃん 」
キーラは肩を震わして涙しているシャムに顔を近づけた。
「シャワー浴びましょうよ。そんなに汚い格好してたらこのお墓の下に居る人達も悲しがるわよ 」
「うん。じゃあ着替え、持ってくる! 」
そう言うとシャムは熊太郎を連れて藁葺きの屋根の並んでいる闇の中に吸い込まれていった。
「ホプキンスさんも疲れたんじゃないですか? 伊藤中尉が部屋を用意しているはずですから、シャムちゃんが帰ってきたら本部に戻りましょう 」
キーラはようやく笑顔に戻った。
クリスとキーラがぼんやりとシャムの消えていった廃屋を眺めていると、闇の中から現れたシャムが行李を一つ、熊太郎の背中に乗せて現れた。
「じゃあ、シャムちゃん後ろに乗って 」
キーラの言葉にばたばたとシャムは四輪駆動車の後ろに乗り込んだ。クリスも再び笑顔を取り戻したシャムを見て安心しながら助手席に乗り込む。
「回収部隊が出るみたいね 」
キーラは車を切り返しながら、本部のある建物の前でアサルト・モジュール搭載用の二両のトレーラが出発する有様を見ていた。クリスは黙り込んでいた。




