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笑顔
「そう言えば私達の荷物は? 」
「ああ、裏の宿舎の326号室に置いておきました 」
そう言うとキーラはクリスと一緒に立っているハンガーの入り口まで駆け足でやってきた少年兵から渡された仕様書に目を向ける。
「ありがとう。ならしばらく休ませてもらうよ 」
クリスはそれだけ言うと、話し足りなそうなキーラを置いて自分の仮住まいへと向かった。
彼はこの部隊でこれほどの笑顔が見れるとはクリスは思っていなかった。
正直この仕事を請けるまでの人民軍に対する印象は悪かった。自由の敵。母国アメリカではこの遼南の紛争をその敵に対する聖戦だという世論まであった。クリスもこれまでは遼北による勢力拡大のための戦争と言うイメージでこの内戦を見ていた。そしてある意味それは正解だった。北天では脱走兵が広場などに集められ機銃で処刑される光景も見た。政治将校が徴兵されたばかりの新兵を殴りつけている様などは日常のものだった。
だが、この北兼軍ではそのような雰囲気はまるで無かった。綱紀粛正を主任務とする憲兵隊出身の嵯峨が全権を握っていると言うのに、どの兵士達の目にも自分で選んでここにいるとでも言うような雰囲気が見て取れた。
そう思った時、自然と自分にもキーラの笑みがうつっていることに気づいてクリスは苦笑いを浮かべた。




