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01 才能無しの少年

◆KRSG先生のコミカライズ版、及びアニメ版の情報から来てくださった方へ

コミカライズ版、及びアニメ版は『小説書籍版』を基に制作していただいており、WEB版(小説家になろう版)とは登場キャラクター・展開に違いがあります。

またWEB版のエピソードは時間がない中で書いたため完成度が低いものも多く、書籍版はWEBから加筆・修正を行なっており、カワグチ先生の素晴らしい大判口絵&挿絵と書籍版にしかない書き下ろしもありますので、ぜひともそちらもチェックいただければ幸いです。

<書籍版『パリイ』シリーズページ>

◆Amazon(1巻が現在無料で読めます。2巻、3巻もKindle Unlimited対象)

https://www.amazon.co.jp/dp/B0977NJZDR

◆BOOKWALKER(同じく1巻が無料、以降2、3巻が読み放題MAX対象です)

https://bookwalker.jp/series/264192/list/

 俺は母と二人、山小屋で畑を耕しながら育った。


 体の弱かった父は俺が幼い頃に死に──それからしばらくは平穏な生活だったが、俺が12歳になった時、母も病に倒れた。

 俺は必死に看病をしたが、母はだんだんとやせ衰えていき、ある日、


「何もしてあげられなくてごめんなさい。せめて、あなたの望む生き方をして」


 そう言って幾らかのお金の入った革袋を俺に手渡した。

 それが母の最後の言葉だった。

 次の日の朝には母は冷たくなっていた。


 ──そうして、俺一人が残された。


 俺は父の墓の隣に母の墓を作り終えると、山を降り、街に行くことを決意した。

 きっと、今のままでも生活はできるだろう。

 ここは医者も呼べないような田舎だが、良い畑もあるし、家畜もいる。

 森に入れば食べられる木の実も豊富にあるし、野ウサギのような獲物だっている。

 食べるには困らない。


 でも──。


 俺はその住み慣れた、小さな我が家を離れることにした。

 どうしても、やりたいことがあったのだ。

 俺は『冒険者』になりたかった。

 幼い頃、父からよく聞かされていた英雄譚の主人公のような冒険者に。


 仲間と共に巨大な竜を倒し──財宝を得て、さらなる冒険に挑む。

 老魔術師に魔法を教わり、森にかけられた呪いを解き、精霊の王から万病を癒す霊薬を手に入れる。

 そんな心躍らせるような冒険の数々を、父は何度も何度も話してくれた。


 ──万病を癒す霊薬。


 もし、そんなものが本当にあったら、父も母も死なずに済んだかもしれない。そんな風に想像したりもした。


 でも、実際にある保証はどこにもない。

 全ては幼かった俺を楽しませるためだけの、父の作り話かもしれない。


 確かめたかった。

 父の話のどこまでが真実で、どこまでが御伽話なのかを。


 いや、本当は真実などどうでもよかったのかもしれない。

 俺は、単に物語の登場人物に憧れていたのだ。

 父の話す物語の『主人公』。

 どんな困難があっても仲間のために、弱者のために剣を振るい──最後には必ず勝って物語をハッピーエンドへ導く。


 そんな風になりたかった。

 俺はただ単に、そんな英雄像(ヒーロー)への憧れを抑えられなかったのだ。 


 そして俺は数日かけて山を降り、街の『冒険者ギルド』を目指した。

 そこに行けば『冒険者』になれる、と聞いていたからだ。

 ギルドの建物にたどり着くのは簡単だった。

 衛兵のお兄さんに場所を聞いたら、すぐに案内してくれたからだ。


 そう、そこに行くのは簡単だった。

 でも、冒険者ギルドに入ると強面のおじさんが出てきて、こう言った。


「ここは子供の来るところじゃねえよ。家に帰りな」


 家に帰ったところでもう家族がいるわけでもない。

 俺がなんとか自分の事情を説明すると、


「なんだ、親なしか……仕方ねえな。それなら、お前【職業(クラス)】の『養成所』に行くか? ──こんな子供が行くのは前例がねえんだが……お前がその気なら、どうにかしてやる」


 おじさんは頭を掻きながら、そんな話を始めた。


 この街──王都の『冒険者ギルド』への登録志願者は、王立の養成所でいくつかの【職業(クラス)】の訓練を受けることができるという。

 新人冒険者の死亡事故を防ぐために、今の王が法律で決めたのだそうだ。


 それも、誰でも無料で受けられるらしい。

 それだけでなく、その期間中は衣食住が保証される。

 費用は全額、税金から出してくれるのだそうだ。

 俺にとっては願ってもいない話だ。

 もちろん、俺はその話に飛びついた。


「本気で冒険者になりたければ養成所に行って、まずは何でもいいから【スキル】を身につけて来い」


 その時の俺には何のことだかよくわからなかったが、ギルド職員のおじさんはそう言った。


 ──【スキル】。


 この時、俺は初めてその存在を知った。

 それが世間で言うところの強さや有能さの証らしい。


 ギルドのおじさんの話だと、どんな人間でも必ず一つや二つは秀でた【スキル】の才能を宿しているらしい。

 その【スキル】の才能を見極める為にあるのが養成所だという。


 この国には基本となる六系統の職業(クラス)の養成所がある。

 誰でも、望めば好きな職業(クラス)の訓練を受けることができ、訓練を積めばどんな【スキル】の才能があるのか、そしてどんな職業(クラス)に適性があるのかがすぐに分かるらしい。


 だから俺は冒険者ギルドのおじさんのアドバイスに従って、いくつか訓練を受けることにした。

 ギルドの受付のおじさんに場所を教えてもらうとお礼を言って、俺は真っ先にある職業(クラス)の養成所に向かった。


 ──【剣士(ソードマン)】。


 ずっと俺の憧れだった職業だ。

 大好きだった冒険譚の英雄は、一振りの剣で山のように大きな竜を薙ぎ払っていた。

 自分もいつかそんな風になりたいと思っていた。

 そんなの物語の中のことだとはわかってはいるが、もしかしたら、俺もそんな風になれるかもしれない。

 ──いや、絶対になってやる。

 そう思って訓練所の門を叩いた。


 でも──。


 数ヶ月の間、訓練教官に指導されて分かったこと。

 俺には剣の才能は無いらしかった。

 それも絶望的なほどに。


 剣士の役割はとにかく攻撃役だ。

 徹底した殲滅力──つまり、攻撃に適した【スキル】が何よりも求められる。

 だが、俺は養成期間の限度いっぱいに訓練しても、攻撃に有効なスキルが全く芽生えなかったのだ。

 それどころか、普通にやっていれば身につく程度のスキルが、なにも身につかない。


 そのまま決められた訓練期間が終わりそうになり、諦めきれなかった俺は教官に訓練期間の延長を申し出た。


 でも、「スキルもなく、ただ剣を振るだけでは剣士としては全く仲間の役に立たない。君の時間を無駄にするだけだろう」と言われてしまい、俺は落胆しながらも、次の職業(クラス)の訓練をすることにした。


 ──【剣士(ソードマン)】がダメなら。


 次に向かったのが【戦士(ウォリアー)】の養成所だった。


 【戦士(ウォリアー)】は身体を張って仲間(パーティ)の盾となり、あらゆる武器を使って前線で活躍する職業だ。

 これも、剣士ほどではないが俺の思い描いていた冒険者像には近い。


 俺に剣の才能はないらしい。

 それなら別に、剣でなくてもいいだろう。

 なんでもいいから、冒険者として生きられるだけの強さが欲しい。


 そうして俺は戦士の訓練所に入り込み、屈強な大人たちに混じって、血を吐くような思いをして数ヶ月間の訓練をした。

 でも、必死に訓練についていって、訓練期間の終わり頃にやっと芽生えたのは、身体能力を少し上げるだけという、誰でも使えるようになるごくごく基礎のスキルだった。

 それでは一人前の【戦士(ウォリアー)】としては認められないという。


 どうやら俺には戦士の才能もないらしかった。

 訓練教官は親身になって俺の相手をしてくれたが「このまま無理に続けても、お前はすぐに命を落とすことになるだろう」と他の職業に就くことを勧められた。


 俺はさらに落ち込みながらも、次へと希望を繋ぎ、違う職に就くための養成所に入った。


 次に向かったのは【狩人(ハンター)】の養成所だ。

 近接職が駄目なら、弓で戦うのも悪くないと思ったのだ。

 それに狩りだったら、山での経験がある。

 罠を仕掛けたり、石を投げて鳥を落としたりするぐらいは出来る。

 それなら、俺にだって見込みはあるかもしれない、そう思って訓練を始めた。


 ──でも、これも駄目だった。


 俺がいくら必死に努力しても【投石】という本当に誰でも習得できる、子供でも使えるようなスキルしか芽生えなかった。

 それどころか、肝心の弓すらまともに扱えないまま訓練期間が終わった。

 教官曰く、「繊細な道具を扱うセンスが絶望的にない」ということだった。


 狩人の養成所を出た後、俺はとても落ち込んだ。

 思い描いていた冒険譚の主人公になることは、自分にできないらしい。

 武器を持って華々しく戦う職業には全く適性がない。


 それなら……と俺は考えを変えることにした。


 冒険についていけるのなら、なんでもいい。

 主人公じゃなくても、補助で役に立てるのならいいと思うことにした。

 冒険譚の英雄らしくなくてもいい。

 なんだってやってやろう。


 そして半分ヤケになりながら俺は【盗賊(シーフ)】職の養成所に入った。

 もしかしたら、ここなら俺も活躍できるかもしれない、と淡い期待を持ちながら。


 だが──結局、それも考えが甘かった。


 結局、俺に芽生えたのは足音をすこし軽減する程度のスキルだけだった。

 訓練を担当してくれた盗賊職の男はこういった。

「罠のかかった宝箱の開錠もできない、気配察知スキルももたない斥候(スカウト)などお話にもならない」、と。全く才能はないから違う職を探せ、とはっきりと言われた。

 俺はここが最後の望みだと思っていたので粘ったが、結局追い出された。


 俺は途方にくれた。

 本当にそこが最後だったのだ。

 俺に出来そうだと思ったものは。


 残るは──『魔法職』だけ。

 でも、最初にギルドのおじさんから話を聞いて、これは無理だと最初から諦めていた。

 魔法は生まれ持った魔法力(マナ)の性質と、膨大な知識、地道な鍛錬が全て噛み合って初めて形になるという。


 魔法職に就くのは生易しいことではないのだ。

 剣士や戦士などの職業よりもずっと難しいと言われている。

 だから、自分でも無理だと思って選択肢から外していた。


 ──でも、やるしかない。

 俺にはもう他の道は残されていない。


 俺はまだ見たこともない、童話で聞きかじった程度でしか知らない、魔法の世界に足を踏み入れてみることにした。


 無謀なことは俺だって分かっている。

 でも、もしかすると、いわゆる隠れた才能というのもあるかもしれない。

 そう思って【魔術師(マジシャン)】の養成所の門を叩いた。


 結果から言うと──。


 どうにもならなかった。

 全然ダメだった。


 養成所の門を叩いて顔を出した老魔術師に「まあ、やるだけやってみなさい」と中に入れてもらえはしたが、結局、身についたのは指先にロウソクぐらいの火を灯すスキルだけ。


 これはどんなに才能の無い者でも三日ほど手ほどきを受ければだいたい身につく、といったごくごく初歩のスキルで、俺はその習得だけに全ての訓練期間を費やした。


 一言でいえば、全く魔法の才能がなかった。


 指導してくれた老魔術師は、

「ここまで魔法の才に恵まれない者もめずらしい」

 と、興味深そうにしながら俺の面倒を見てくれたが、やはり最後には、

「ここは君の居場所ではない。何か別の道を探すといい」

 と、優しく諭された。


 俺はもう何も言えず、その日に養成所を出て魔術師となる道をあきらめることになった。


 そうして──。


 冒険者ギルドの斡旋で試すことのできる職業はあと一つだけになってしまった。

 さらに無謀な魔法職──【僧侶(クレリック)】の職業(クラス)だ。


 僧侶は魔術師以上に誰でもなれるわけではない。

 治療術は生来の神の恩寵を得た者が、幼い時より長い修行を積んだ末に就くことになる職業だ。

 ギルドのおじさんにも「【僧侶(クレリック)】系だけはなろうと思ってもなれるもんじゃない」と言われていた。

 俺もそれには納得していた。


 でも──。


 俺は剣士にも、戦士にも、狩人にも、魔術師にも──盗賊にすら、なれなかった。

 もう他に希望もない。


 だから、最後の望みをかけて【僧侶(クレリック)】の職に就こうと養成所に向かった。


 辿り着いたのは重厚な石造りの大きな神殿だった。

 門を叩くと中から背の高い神官が出てきて、俺が自分の希望を説明すると、はっきりと「素養(したじ)がなければ無理だから、やめておきなさい」と言われた。


 それは俺だって分かっていた。

 でも、諦めたくなかった。


 門前払いを決め込む神官相手に「訓練を受けさせて貰えるまでは門の前から一歩も動かない」と伝え、実際にそうした。


 それが一日経ち、二日経ち、三日目となったところで最後には根負けした神官が「手ほどきだけなら」と許してくれた。


 ──そうして、俺は僧侶の修行をすることになった。


 だが、訓練期間目一杯の血の滲むような鍛錬の末に身につけたのは【ローヒール】という、僧侶の最下級呪文【ヒール】のさらに劣化版のスキル。自分のかすり傷を気持ち癒す程度の、僧侶職としてはあってもなくてもいいようなスキルだ。散々努力して、それだけ。


 つまり、ここでも俺に才能がないことが証明されたのだ。


 訓練教官の神官は「幼少時の祝福なしでここまで出来るのはすごいことですよ」と言って慰めてくれたが、同年代の訓練生たちはもっとすごいスキルをいくつも身につけていて、成長速度が段違いだった。

 俺が役立たずだということは明白だった。


 ──結局、全てダメだった。


 そうして、俺は有用なスキルを身につけられず、全ての職業(クラス)で『適性なし』とされたことを、ギルド職員のおじさんに報告した。


「まともなスキルが一つも身につかなかった? それじゃあ、冒険者なんかやってもさっさと野垂れ死ぬことになるぞ。やめて大人しく山に帰りな。それとも、俺が他の就職先探してやろうか?」


 ギルドのおじさんには当然、冒険者としての道を諦めるように言われた。


 冒険者は危険な仕事だ。

 それは俺だってわかっている。

 おじさんの言うことはとても理にかなっていた。


 でも、俺はあきらめきれなかった。

 だから、黙って街を後にした。


 ──俺には、才能がない。

 本当になんの才能もない。


 それがはっきりした。



 ──でも、それなら。

 俺はふと思いついた。


 才能がないのなら、その分、努力してもっともっと訓練すればいいのではないか?


 そんな考えが頭をよぎった。

 俺はどうしてもあきらめきれなかったのだ。


 なぜなら、『剣士』の訓練教官があるとき、「身につけたスキルをとても長い間鍛錬すれば、新たなスキルを身につけることが、極稀にだがある」と教えてくれたから──。


 ──そうだ、それしかない。俺はその言葉に縋りついた。


 その言葉は、俺にとって最後の希望だった。

 きっと、俺にとっては見極めの期間が短か過ぎたのだ。

 もっと鍛錬すれば、俺にだって。

 必ずいいスキルが芽生え、冒険者にだってなれるはず。


 よし、ならば特訓だ。

 山に帰ったら、徹底的に自分を鍛える訓練をしよう。


 そうして、やはり剣士になりたかった俺は、家に帰るとまず即席の木剣を作り、家の周りの木々から縄でぶら下げた木の棒を叩く訓練を始めた。

 

 ひたすら、弾く。

 ただひたすら、宙で揺れる木の棒を木剣で叩いて弾く。

 それだけの鍛錬。


「パリイ」


 ──俺が【剣士(ソードマン)】の養成所で唯一つ、身につけた剣技スキル──誰にも必要とされない、最低位のスキルを使って。


 俺は寝食も忘れ、朝から晩までひたすら木の棒を弾いた。




 ◇◇◇




 そうして、一年後。


「パリイ」


 俺はついに、一息で木の枝を十本同時に弾くこともできるようになった。

 自分でも成長が分かる。


 ──だが、まだ次のスキルを閃く気配はない。

 いつになったら次のスキルを閃くことができるのだろう。


 でもきっと、いつかは。

 こうして努力さえ続けていれば。

 新たなスキルを身につけて、一人前の冒険者になれるかもしれない。

 自分の冒険は、そこから始まるのだ。


 そう思うと胸が高鳴る。

 未来への希望を胸に、毎日が楽しみで仕方がなかった。




 ◇◇◇




 それから、三年の月日が流れた。



 俺は生活に必要な畑仕事と狩りの時間以外、ずっと朝から晩──疲れ果てて眠るまで、鍛錬を続けていた。

 吊るす木の棒はだいぶ前に自作の木剣に変えた。

 その方が練習になる気がしたからだ。


 そうして、ひたすら弾く。

 宙に舞う無数の木剣を弾き、鍛錬する。その繰り返し。


 そして──。


「パリイ」


 今では一息で百の木剣を弾くことすらできるようになった。

 もう、目を瞑っていても余裕だ。

 でも、次のスキルを閃く気配は、まだない。


「まだまだ、鍛錬が足りないんだな──」


 自分としては少しは強くなった気もするが、前に山を降りて、この世界ではスキルが全てだということを教えられた。


 そして、未だに、俺はあれからスキルを手にしていない。

 今のままでは、駆け出し冒険者の域にも達していないのだ。


 ──こんな調子では、冒険に出るなど夢のまた夢。


 俺はそう思い、さらに厳しい鍛錬を己に課すことを決意した。




 ◇◇◇




 それから、さらに十年の歳月が流れた。



 俺は1日も欠かさず、厳しい鍛錬を続けていた。

 日毎に宙を舞う木剣の数は増え、数年前に千を超えたあたりからは数えていない。


 とにかく、弾く。

 ひたすら宙にぶら下げた木剣を弾く、鍛錬。

 それだけをひたすら、無心に繰り返してきた。


「パリイ」


 今や俺は剣を振るわずして、千の木剣を弾くことすらできるようになった。

 でも、次のスキルを閃く気配は、まだない。


「世の中の剣士は皆、一体どれほどの鍛錬をしているんだろうな──」


 ──もはや、想像すらできない。

 今ではもう、『冒険者』という存在が雲の上の存在にすら思えるようになってしまった。 


 俺には、才能の欠片もない。そんなことは分かっている。

 だからこそ、それを補うつもりでここまでやってきたのだが──ついに己の限界というものを感じ始めた。


 俺は二十七になった。

 俺ももう、若くない。


 冒険者になるにはスキルを身につけろ、とは言われたが、結局あれからスキルは一つも身に付かなかった。


 どれほど足掻いても、「普通の冒険者」として必要なスキルには手が届かないらしい。


 ──でも、俺には夢がある。

 冒険者になって、広い世界を見て回るという夢が──。



「……無謀な夢、か」



 自分でもそれはわかっているつもりだった。

 もうそろそろ、違う生き方を探す頃合いなのかもしれない。


 それでも俺は諦めきれず──

 再び山を降りて、王都の『冒険者ギルド』の門を叩いたのだった。

お読みいただきありがとうございます。


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【告知】
増補改稿書籍版『俺は全てを【パリイ】する 〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜』
【10巻 5/15発売!】(画像を押すとレーベルページに飛びます)
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(Kindle Unlimited加入の方は一巻が無料で読めます)
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◇コミカライズ公式◇

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― 新着の感想 ―
アニメから。 冷笑系最強主人公が幅効かせるなろう界隈で、周囲が強すぎると勘違いし強度の高い修行に励む主人公の人柄が光ってた。最強はあくまで舞台装置で面白さの芯はすれ違いコントなのがよい。
アニメ観て、続きが知りたくて辿り着きました。 主人公が魅力的で良いです。
[気になる点] 剣を振らずにパリィとは?
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