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第七話「混乱」

逃げだそうとするほど嫌がっていた大腸カメラ。

「終わりましたよ。」

内視鏡室に入ったら、鎮静剤を点滴から入れられて、そこからよく覚えていない。

(痛かったような気がする・・・)

説明ということで、ササと笹夫は診察室に呼ばれた。

「洗先生が来ますので、もう少しお待ちください。」とキツツ木さんは言って、どこかに行ってしまった。

「せん せんせい って。」思わず笑ってしまった。

「笹夫。」

「何?母さん。」

「本当ならお父さんも笹香も来るはずでしょう。」

笹香というのは笹夫の妹だ。

「いやー仕事忙しいのかなと思うけど。」

父はフライパンの製造工場で働いている。そして、笹香は憧れのパンケーキ屋で働き始めたところである。

「実はね、さっきの電話はお父さんからだったのよ。」

「え?そうなの?」

「笹夫には言ってなかったけど、笹香はここのところずっと消化器内科にかかっていたのよ。血便が続くって。」

「え?」

「それで今日、笹香の検査結果が出るって、お父さんが行ってくれたのよ。」

「えーーーー!」

そのとき、かすかに遠くで話し声が聞こえてきた。

「お前も自分でわかるだろ!」

「だってさ、内視鏡やってるヒマあったら1つでも論文読みたいだろ!」

「結局お前が倒れたら患者さんにどれだけ迷惑かかるか!」

「わかったよ。」

「明後日でオーダー入れとく。行け。」

「洗先生、パン田さん、入られてます。」

そして、「お疲れさまでした。」と先生が診察室に入ってきた。

「大腸全体に炎症が起きています。ガンではありません。他の検査結果も出てからになりますが、これは潰瘍性大腸炎の疑いが強いですね。」

「は、はい?」笹夫は聞いたことのない病名に戸惑った。

「先生、やっぱりそうですか。」とササ。

「やっぱりってどういうことですか?」

「娘も今日別の病院で潰瘍性大腸炎だって言われたんです。」

「そうでしたか。」

「え?」笹夫はビックリしすぎて大きい声で叫んでしまった。

「私のせいで、ごめんね・・・。」涙目になるササ。

「お母さん、この病気は、原因がまだわかっていません。遺伝が関与しているとも言われていますが、必ず兄弟ともに発症するわけではないんですよ。むしろ兄弟で発症しているケースは少ないです。」

「そうなんですか。」

「腸の一部を採取して生検に出していますので、その結果が出たらまた説明します。」と言い終えた途端、先生は急いで診察室を出て行った。

キツツ木さんから冊子を渡された。


<潰瘍性大腸炎(UC)とは?>

大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる原因不明の疾患。特徴的な症状は、下痢、(粘)血便、腹痛。重症になると、発熱、体重減少、貧血、倦怠感などの全身症状が起きる。症状が強く出る「活動期」と症状が治まっている「寛解期」を繰り返す「再燃寛解型」が多い。国の指定難病の1つ。


(僕は難病になってしまったのか。しかも、笹香まで・・・。)

ふと病室の窓を見ると、雨が激しく降っていた。

笹夫の顔も雨に濡れたみたいになっていった。


笹夫は本当に潰瘍性大腸炎なのか?パン田家の運命はいかに?


つづく


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