第4話 灰のようなもの
灰を確認するため、机の下に潜ろうとした所で、響に声をかけられた。
「東城様。私の服で宜しければ、着替えになられますか?
それと傘も預けてくだされば、玄関で干させて頂きますよ」
先程の集中豪雨の話は違和感なく話していたが、
今の響は明らかに焦りが感じられた。
床に落ちている灰がキーになると判断しつつ、今は悟られないように話を戻す。
「可能なら着替えの服を貸してもらえると助かるかな。傘は持ち歩かないと
落ち着かない性質なので、手元に置いておくよ」
「あはは、東城様は面白い方ですね。かしこまりました。
上下の服とドライヤーを用意致しますので、
衝立の向こう側でお待ちください」
にこやかに微笑む響に案内されて、衝立の向こう側に行くと、
そこは最初に案内されたように、簡易の着替えスペースとなっていた。
簡易と言っても鏡も用意されているし、着替えを置くカゴもあるので、
実に細かい所まで行き届いている。
「行き届き過ぎ」な気もしないでもないが、
とりあえず琴音にお礼を言っておこう。
「琴音、本当に何から何まで甘えてしまって申し訳ないな」
濡れたTシャツを脱ぎながら、衝立の向こうにいる琴音に話しかける。
「大丈夫、誠は私のお客様だから」
確かに琴音が歓迎してくれているのは分かっている。
理由はまだ不明だが、SOSを出していたのは女性。
となると琴音が俺に助けを求めてたる可能性が一番高いが、
響が敵か仲間かで動き方が全く違ってくる。
「お待たせ致しました。
電源コードはそちらにありますので自由にお使いください」
着替えの用意が出来たようで、手に持ちながら響がこちらに歩いてきた。
「ありがとう。使わせてもらうよ」
響にお礼を言って、用意してもらったドライヤーなどを受け取る。
「響も仲間ならすぐに助けを求めてくるはず」と思いながらも、
それを口にはせず、タオルで体を拭く。
次に受け取った黒いポロシャツを着て、ズボンを脱ぐと深緑色のズボンを履いた。
「服は着たまま帰っても頂いても結構ですよ。
濡れた服は後で乾燥機で乾かしますので、籠に入れておいてください」
響の言葉に再度お礼を言って、濡れた服を折りたたんで籠に放り込む。
その後、俺はドライヤーで髪を乾かし、響は箒で部屋の掃除をし、
琴音は響が用意した紅茶を飲んで、それぞれの時を過ごした。
「東城様、お飲み物は珈琲か紅茶どちらがよろしいですか?」
着替えが終わりさっぱりとした後は、俺も元のテーブルに戻っていた。
「もらえるなら、珈琲をお願いしたいかな」
琴音と直接話をしたかったが、響が琴音の紅茶を用意してからは
ずっとリビングで掃除をしていたので、話しかける事ができなかった。
床に落ちていた灰も箒で掃き取られてしまったので、調べる事ができない。
響は掃除をした事で安心したのか「分かりました」と笑顔を浮かべたまま、
キッチンへと入っていく。
何も飲まずに動き回っている響に関心しつつも、
俺はここに遊びに来た訳ではないので、次のアクションを起こす事にした。




