後悔との決裂
マリィ様はこの砂漠の国テゼルトに咲いた華のようだった。
煌びやかで清廉されたオーラを放っていた。それはホークアイの希望だった。
スラム街でマリィ様に出会ってテゼルトの農村部の現状を知って資金提供や
難民キャンプ建設をしてくれた。
テゼルトの都市開発が進んでいく中で虐殺が起こっていた。
マリィ様はそれが我慢ならなずジョン首相がいる屋敷に出向いた。
そして殺された...。
引き止めたら良かった。何度もそう後悔しては自分が無力に感じて反吐が出そうになった。
でもあの少年はただ前を向いて足を止めなかった。何度葛藤して迷っても自分は何度も歩みを止めたのにそれが情けなくて後悔なんて無駄だ。
「ほんと馬鹿みたい」
スワンは静かに涙を流してただ夕焼けを見つめていた。
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マオとホークアイの者達とヒルア達は無事に合流してマリィの墓場に向かって
いた。
「母さんの代わりに約束を果たそうと思ったんだけど無理だったよ。
子供の僕には何も出来なかった。そればかりか...」
マオはマリィの墓の前で跪いていた。
「マオくんが何も出来なかった訳ないでしょ。あたし達だってマリィ様が
死んでからずっと後悔してた。でもねマオくんを見て思ったの...」
スワンはマオに寄り添う様に跪いていた。
「マオ君は迷ってもテゼルトに向き合う事に逃げなかった。あたしは逃げて
ばっかりだった。自分の無力さからマリィ様が死んでからずっと...。」
マオはスワンの手をそっと握った。
「スワンさんのせいじゃないよ」
「痛い程それは分かってるの。引き止めればよかった。でもマリィ様は頑固だから聞かなかっただろうな。マオ君は凄いよ。こんなにも酷い目に遭わされたのに
逃げなかった。マオ君に何も出来ないなんてあたしが言わせないよ」
マオは生唾を飲んで唇を噛んだ。
「僕はずっと分からなかった。テゼルトに何が出来るかなんて...」
マリィの墓に添えられた華が揺らいで煌びやかなオーラが見えた。
「立派になりましたね。貴方との約束を護れなかったことも
ホークアイの者達の事が心残りだった。ずっと見てましたよ。
本当にあの人はどうしようもない人だった。
貴方は優しいから後悔してるでしょうけどあの人が居たらテゼルトはもっと酷い事になってた。だから自分を責めないで貴方がやり遂げた事は母さんは誇らしく
思ってるわ。マオ、貴方には色んな世界を見て回って欲しい。
あたしはさせてあげなかったから...」
マオとスワンは呆然と見つめていた。
「スワン...あたしが死んだことは貴方のせいじゃないわ。引き止めてくれたでしょでもあたしが言うことを聞かなかった。あたしは貴方達とテゼルトで革命を
起こしたかった。その思いをマオが受け継いでくれてるからあたしはもう後悔は
ないわ。次はスワンの番よ」
マリィの霊は笑みを浮かべて去っていった。
スワンは瞼を閉じて涙を流れて来るのを肌で感じた。
「マリィ様の言う通りだ。後悔するばかりじゃ何も前に進めない。
スワン、俺達と一緒に革命を起こそうと約束したじゃないか」
クロウはスワンに歩み寄って手を差し伸べた。
「そうね...まだ始まったばかりよね。」
スワンはクロウの手を握って立ち上がった。
「母さん、安らかに眠ってね」
マオはマリィの墓にそう告げた。
墓場に添えられた花は激しく揺れて爆風が吹き荒れていた。空を見上げると
飛行機がこちらに降りてきた。
「皆今すぐここから逃げよう」
飛行機から降りてきたのはペッパー首相とロンディ首相とフェルトだった。
「どうしたのよロンディ首相」
パトラがロンディ首相に駆け寄ると新聞を渡された。
そこには新たな軍事政治体制と言う記事が書かれていた。
「ジョン首相の次は帝国騎士団騎士長ジタンがここをおさめる事になる。政策に掲げてるのは反政府組織ホークアイの完全撲滅だ。」
クロウはロンディ首相の襟首を掴んだ。
「俺達に逃げろって言うのかよ!」
クロウは声を荒らげたが近くにいたツバメに振り解かれた。
「現実を見ろ!ボスだってホークアイの皆だって逃げたくはないさ。
俺達が消えればテゼルトの希望は途絶えてしまう。勝機のない戦いに命を投げ
出さないで欲しい」
ツバメはクロウの肩を掴んで真剣に訴えかけた。
「俺だって無謀な事はしたくない。でもテゼルトはどうなるんだよ」
「何も変わらない今まで通りだ。逆らう者は殺され恐怖によって支配される。
それを止める者が国内に居なくなる。だが国外からの脅威に脅かされる」
ペッパー首相は淡々とそう語った。
「何をするつもりだ。ペッパー首相...」
クロウに睨まれるが背を向けられてしまった。
「マシーンアイランドで戦の準備をしなければいけない。君達も着いてこい」
ペッパー首相に手招きをされるが皆は戸惑いを隠せなかった。
「テゼルト村の難民キャンプにいる人はどうなるの?」
ロンディ首相にマオは肩を叩かれた。
「その者達はブルーメンヘッドで匿っている。後は君達だけだ。」
「ふたつの国が我々の戦いに協力してくれるんだ。テゼルトの事が気がかり
かもしれんが今は己の身の安全を考えろ」
ホークアイのボスであるタカの呼び掛けによって皆は飛行機に乗りマシーンアイランドへと飛び立った。
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レールのような真っ赤な絨毯を敷かれていた。彼はそこで跪き頭を深々と下げていた。
「ジタン、貴方は今日からテゼルトの首相よ。まぁ引き続き帝国の騎士長はやってもらうけど...」
白魔王は王座の椅子に座り佇んでいた。
「大変光栄です。テゼルトを白魔王様の理想な国へと変貌させます。」
「それは楽しみね。貴方の息子ジスタはどうやらホークアイに協力してるみたい
だけど...」
白魔王はジタンの耳元でそう囁いた。
「それは承知しております。身内であろうが関係ありません。
あたしは己の責務を果たすだけです」
「そう。テゼルトをよろしく頼むわ」
白魔王は不敵な笑みを浮かべ去っていった。
テゼルト編(END)
次回に続く。




