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僕は、君のヒーローになる。  作者: ブラックキャット
テゼルト編
93/121

飢えた蜘蛛は可憐な蝶を狙う。

  テゼルト軍本拠地の宿屋の部屋から重々しい足音が響いてドアが開いた。

「アリエッタ、ヒルア·ダルクと会ったと聞きましたがどこで会いましたか?」

「ハクさんじゃないテゼルト森よ」

  ハクはアリエッタがそう言うとすぐに部屋を去ろうとしていた。

「何しに行くつもりなの?」

「あなたなら分かるでしょ身柄を確保しに...」

  アリエッタに呼び止められハクは足を止めた。

「それだけの目的の為にそんなに武装して殺すつもりなの」

 ハクの格好を見てみると重々しい鎧を着て銃や大剣を腰に巻いていた。

「殺すつもりで行かないと捕まえられないでしょ」

「まぁね...あたしは白魔王様にヒルア·ダルクが何していたか知らないけど同族を

 虐殺するなんて最低だね。それは白魔王様も許さないよ」

  「そうですね。じゃああたしは行きますので...」

 ハクは足早に部屋を出ていった。


 ****************

  マオの具現化魔法でテゼルト国軍の悪事が映し出されていた。

「いいニュースってこれの事?こんなの見せたって否定するに決まってる 」

 ヒルアは地下室のソファに座りマオをじっと見つめていた。

「狙いが違う。国民の反発を高める為だこれは嘘ではない真実だ。」

  ペッパー首相が指を鳴らすと映像は途絶えた。

「捏造だって言われたらどうするんだ?」

  テゼルト政府にこの映像を見せたとしても猛反発してもみ消すことをユージン達は承知の上だった

「そんなの言いがかりだ気にするな。それに内戦を止めないとこの国は本当に帝国の物になる」

「おじさん...僕はもう分からないよ僕のお父さんは白魔王に殺されそうになった。帝国はテゼルトに何がしたいの」

 マオは頭を掻きむしり俯いていた。

「ジョン首相が無能だからだテゼルトはこのままだと帝国に飲み込まれる」

「どうやったらそれを止められるの?」

  ペッパー首相はマオから目を逸らした。

「残念ながら君に出来ることは民に真実を伝える事だけだ。政治のことは大人の

 仕事だ」ペッパー首相のその言葉を聞いた途端、マオの目は虚ろになり地下室を

 出ていった。

「マオくんにだって出来る事はあるでしょそんな言い方はないんじゃないの?」

 ヒルアは強い口調で訴えかけた。

「俺だってこんなことを言いたくないが子供に何が出来る。テゼルトを救う為には非道な事を平然としてやらなければいけない。マオにそんなものを背負わせるわけに行かない」

  ヒルアは衝動的にペッパー首相の頬を叩いた。

「なんでそれを本人に言わないの?それくらいわかるよ。マオ君だってこんな

 状況なのに立ち向かおうとしてるんだよなんで分からないの?」

「少年1人が立ち向かってどうするんだ?それで帝国に勝ってるのか」

  ペッパー首相はヒルアの腕を掴んだ。

「勝ち負けの問題じゃないよ。今はテゼルトをどうやって帝国の支配から逃れられるかでしょマオくんには出来ることがある。それが世界を救わないだとしても...それが全てじゃないでしょ」

  ヒルアの青い瞳は宝石のようで見るものを魅了したペッパー首相もその一人

 だった。

「どこに行くつもりだヒルア...」息を飲んでヒルアの腕を掴んでいた手を解いた。

「マオ君の様子を見てくる」

 ヒルアは足早に地下室を去った。



 *******************

「残念ながら君に出来ることは民に真実を伝える事だけだ。政治のことは大人の

 仕事だ」

  ペッパー首相の言ってることは間違っていないのになんでこんなにもマオの心をモヤモヤさせるのだろう。

  「真実を伝えてどうしたらいいんだよ」

 静かな森の中で叫んでも自分の声が誰にも響かない。

  国が大変な状況で何も出来ない、何も分からない自分が無力に感じてマオは

 木を殴った。

「そんなことをしたら手を痛めてしまいますよおぼっちゃま」

「セバスチャンみたいな喋り方しないでよハクさんでしょ」

 マオが振り向くと木の陰にハクが隠れていた。

「バレてましたか...マオさんはこんな所で何してるですか?」

「何もしてないよ。ハクさんは白魔王様の元で働いて楽しいの?」

  マオは手のひらから黒魔王を発現させていた。

「あたしは白魔王様にお仕えできるだけで光栄ですから...」

 ハクが満面な笑みを浮かべるとマオは冷めた目をしていた。

  マオの手を見ると白魔王と黒魔王は対峙して白魔王は杖を向けていた。

「ねぇ不思議だと思わない?千武族と魔法族で歴史が違うんだよ。僕ならその歴史の真実を教えることが出来るそれしか出来ないとペッパー首相に言われたんだ。」

「それは凄いですね余計な魔法を覚えたんですね」

  ハクはマオの耳元でそう囁いて首筋に剣を向けた。

「そんなに都合悪いことなのね。白髪の騎士さん」

  その金髪の少女の目はサファイアのように光り輝いていた。

  「ヒルア·ダルク。探してましたよ貴方を10年前から···」

 ハクは剣を納めヒルアに近づいた。

「随分と熱烈な告白だね。あたしに銃を向けるなんてどういうつもりなの?」

  ハクはヒルアの額に銃を押し当てていた。

「白魔王様に殺せと言われたので...」

  ヒルアはハクの腕を掴んでこう唱えた。

雷網(ライコウ)」ハクは電流を纏わせた網に縛り付けられていたが眉を一つ動かさずに

 呪文を口にした。

  「ウィンド」猛烈な風が吹き荒れ網は破れ去ってハクはヒルアの腸を殴り気を

 失わせた。

  「ヒルアさんを連れていかないでよ!本当は同族なんて殺してないのになんで

 白魔王様にそこまでされなきゃ行けないの?」

  マオはハクの足を掴んで必死に引き止めた。

「そんなの知らないですよ白魔王様の気に障ることする人が悪いんでしょ」

  ハクは冷酷な表情を浮かべながらマオを蹴り飛ばした。

「ヒルアさん!」

  マオが叫んでもハクは止まってもくれずヒルアを担いでどこかへと去って行ってしまった。


 次回に続く。




 



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