砂漠に吹く風はこの世界に響く
ロンディ首相はホテルにある応接室で人を待っていた。
「そろそろ来る時間よ」パトラは仁王立ちで壁掛け時計を睨んでいた。
ドアノブが回される音が聞こえ周囲が息を飲んだ。
「ロンディ首相!待たせてすまなかったな」
「全然待ってないから大丈夫だ。会うのは久しぶりだな」
ペッパー首相はロンディ首相の肩を叩き握手を交わしていた。
「君の周りに居るのは護衛か?」
「そうだ。一応敵国だからな」
パトラとケンは軽く会釈をして名を名乗っていた。
「そうか...何があってもおかしくない国だからな。君達も聞いたかもしれないが
ジョン首相の息子は今行方不明だ」
「悪い奴らに誘拐されてなきゃいいけどな。マオくんの目に希望がなかった」
「まぁ母親が自殺しているからな。傷が癒えていないのだろう」
押し黙っていたパトラが突如、口を開いた。
「お話中申し訳ないんだけど何で自殺したの」
「真相は誰もわかってない。これはあくまで噂話だが母親は反政府組織と関わっていた。」
ペッパー首相はソファーに足を組んで座りながら話していた。
「胸糞が悪いわね。この国では反政府組織は勇者だと讃えられてるわ。政府と
睨み合って内戦も時間の問題みたいね」
「随分と詳しいじゃないか?パトラと言ったか」
「そうよ。昨日仲間に情報を貰ったの。」
ペッパー首相は深く考え込んだ顔をしていた。
「どうしたんだ?」ロンディ首相は顔を覗き込んでいた。
「おかしいと思わないか?マオ君は行方不明で国は内戦に一触即発だ。裏で誰か
糸を引いてるじゃないか」ロンディ首相はペッパー首相の言葉に唾を飲み込んだ。
「その可能性は有り得るがジョン首相はマオくんの身を案じていない。微動だに
しないだろう」
「あながちペッパー首相の言ってることは充分有り得る事じゃマオの行方不明は
報じられていない。極秘事項じゃ。もしどこかしらから情報が漏れたら」
「フェルトさん...それは大事かもしれねぇな。あのおっさんからしたら都合の悪い情報だ。身内事だから下手に揉み消せない」
ケンは壁にもたれ掛かり腕を組んでいた。
「まぁ想定の話だけをしても真相は分からないペッパー首相。ホークアイが運営してる難民キャンプに行かないか?この国の内情が知れる」
「あぁ...喜んで行こうじゃないか。」
ロンディ首相に目を配られパトラ達が頷いた。
「ペッパー首相あたし達が案内するわ。難民キャンプには仲間がいるの」
「君たちもそうなのか」ペッパー首相は立ち上がりパトラに尋ねた。
「違うわ。あたし達の仲間も計りかねているの。彼らの同行次第で砂漠に風が吹くの。それは希望か絶望か...」
「君達は知らないだろうが独裁軍事政治から民主化はとても難しい事だ。
いくら血が流れるか分からない。そんなものに絶望も希望もない。あるのは一筋の光、己の中にある正義だ」ペッパー首相の言葉をパトラ達はグッと飲み込んだ。
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ロンディ首相一行はテゼルトの難民キャンプにたどり着いた。
「資金が足りてないみたいだなテントだ。我国から資金提供出来ないか掛け
合ってみるか」
「それは彼らにとっていい話ね。」
「随分と勢揃いだな」目の前に現れたのはチャラついた格好をした男だった。
「お偉いさん達とは初対面ね。この男はクロウって言うの」
クロウは頷き首相2人と握手を交わした。
「話はパトラの仲間が通してくれてる。お偉いさん2人はここの視察だよな」
「あぁ...そうだ。君に聞きたいことがある何を企んでいる」
「ホークアイの志は一つだ。独裁軍事政治からの脱却だ。」
クロウが言った事にペッパー首相は大きなため息を着いていた。
「やはりそうか...視察が終わってから君と話をしよう。」
「俺もそうしたい。早速案内するか」クロウについて行き難民キャンプを見て
回っていた。
「坊っちゃま!あんまりウロウロしてはダメですよ」
大型犬が吠える声がして皆が振り向いた。
「あれセバスチャンの声じゃない」
「パトラ...魔獣なんて皆同じ声だろ」ケンが呆れたかようにそう漏らすと見覚えのある少年の声が聞こえた。
「いいじゃないか少しくらい...ここの事をもっと知りたい」
パトラ達は周囲を見渡した。そこには行方不明のはずのマオが居た。
「なんであなたがいるの。もしかしてクロウが誘拐したの」
パトラに疑いを掛けられるが首を振った。
「森で迷ってる所を俺は保護しただけだ。」
「なんでロンディ首相とペッパー首相がいるの?」
「ここに視察しに来たんだ。マオくんなんで家に帰らないか知らないが早く帰った方がいい...」
「まだ報じられてないでしょ...僕の行方不明はここにいる人と偉い人しか知らない。僕は帰らないよ。お母様の死の真実を知るまで...」
「知っているだろう自殺だ。」
ペッパー首相は悲しそうな顔をしてマオの肩を掴んだ。
「みんなは知らないでしょ!お母様は僕とこの国を変えると約束をしたんだ。
それなのに自殺なんかするはずがない!」
マオはペッパー首相の手を振り払った。
「それが本当ならジョン首相にとって都合悪い事だ。マオくんこの先ここに居る
私達も君もどれだけ残酷な真実を知るか分からない。覚悟は出来ているのか?」
「そんなの出来てるに決まってる」
次回に続く...。




