少年が知った真実は残酷で鮮血だった。
あたしはこれ程の地獄を何度見たのだろう。幾度となく同族が目の前で殺され
胸が苦しくなる。10年経った今でも鮮明に蘇ってくる。
あの事件から生き残ったあたしだけが記すことが出来る書物だ。
誰も覆す事も出来ないあの女王でも決して...。
それは突然訪れた。千武族が住む村の近くの森に魔法使いの軍団がうろついていた。最初からなんの目的かは分かっていた。
何でかというと軍団の先頭には白魔王が居たからだ。
我ら千武族を虐殺しに来たのだろう。そんな事は許されない。
何としてもこの村を守り抜かなかければとその事を村の皆に知らせた。
すぐに同族の男達が高台で森に向かって矢を放った。その隙に子供や女をできる限りに避難させたがあの白魔王だ。何をしてくるか分からない。
あたしは村中を駆け回り様子を伺っていた。
「高台で矢を放ってあたしの軍を減らした気でもいるのかしら?」
煌びやかオーラを漂わせ白魔王は多くの軍勢を連れていた。
「大量の矢を放ったはずだ。誰もなぜ怪我を負っていない」
あたしがそう言うと白魔王は嘲笑った。
「あれは幻覚よ。あなた達の忌まわしい言霊術より魔法は素晴らしいの」
「それは幻想だ。魔法は殺戮に使われるまやかしだ。今もそうだろう。そんなに嫌か100年前の真実を知った者達が居るのが...」
あたしは白魔王を睨みつけたが眉ひとつすら動かない。
「邪魔なだけよ。あたしは反逆者達を潰しに来たの。それに100年前の出来事は
黒魔王が招いた事よ」
「とんだ嘘を...我ら千武族は黒魔王に武術や言霊術を教え説いた素晴らしいお人だ。それを受け継いだ我らは強いぞ。白魔王...」
「そうかしらね。あたしの軍よ撤退的にお殺りなさい。」
白魔王は指を鳴らすと軍勢は杖を翳した。
あたしは今見ている状況を確かめる為に「解析」と唱えた。やはりそうだ。
白魔王の軍勢は固まってるように見えるがそれは幻覚で本当は分散して村に侵攻にしていた。
「皆!解析を使え自分が見たもの全てを真実だと思うな!」
「忌まわしき術であたしの魔法を攻略出来ると思わない事ね。」
白魔王は残酷に嘲笑い辺りは赤く染められた。
あたしは村人の前に現れた魔法使いを切っていき命を救うことしか出来なかった。白魔王の魔法で同族の仲間達が殺されその死体を抱きしめる暇も無ければ嘆く暇も無かった。とにかく戦うしか道は残されていない。
あたしは鳴り止まぬ歴戦のせいで足がおぼろげだだが同族を魔法使いの手から
救わなければいけない。
あたしの手を届く範囲は助けなければと魔法使いを何度も殺した。
あたしはいくつの命を救えたのだろうそんなの分からないが避難場所にと用意した森の高台にはあたしが救った子供達が居た。
「おじちゃんまた行くの?」
あたしの手を引っ張り少女は心配そうにしていた。
「ああ...行くさあそこには俺の仲間がいるんだ」
「そっか。おじちゃんの怪我あたしが治してあげるよ」あたしの手を
少女は掴んで「修復」と唱えた。
怪我が治っていき一瞬目を疑った。こんな幼き少女が巧みな言霊術が使えるのか。あたしは未来に繋ぐために戦っているのだ。少女のおかげでそう思えた。
「ありがとう」と少女と子供達に別れを告げた。
──────再び村に戻るとそこには地獄が拡がっていた。
村人の大量の死体と魔法使いが横たわっていた。
「白魔王様が火を放った。」
魔法使いは瀕死状態であたしの足を掴んだ。
「それは本当か?」
「本当だ...幻覚じゃない。火はまだ全体に広がっていないがいずれ村全土に広がるだろう。」
「なぜあたしにそんなことを教える?」
「白魔王様は逃げようとしているからだ。き、金髪の少女の両親を目の前で
殺して報復された。」
あたしは彼の話に耳を傾けた。
「報復とは何だ?」
「雷糸という言霊術で白魔王様を縛り上げ剣山と唱え周囲にいた我が兵士数十名
殺られた。白魔王様はそれでも生きておられたが怒りのあまり火を放った。」
想像するとその出来事はあまりにも凄惨で残酷だった。
「そうかここにいるもの全員皆殺しする気か」
「そうだ...」と魔法使いの命は途絶えた。
あたしは立ち上がり逃げ遅れた村人を救うと心に決めた。村中を駆けずり回って命を未来へと繋げた。
村を覆っていた火は益々強くなっていきあたしも逃げなければ死ぬことになる。
ふと目の前を見ると己の目を疑った。あたしの前に白魔王が現れたのだ。
「あたしは強いのよ。あんな小娘に瀕死に追い込まれたなんてなんかの間違いに決まってる」
白魔王はゆっくりとした足取りで村を出ていこうとしていた。
「白魔王!貴様は逃げるのか!村をこんなにしておいて」
「うるさいわね。あたしは黒魔王の受け継いだ奴らが嫌いなだけよ。
憎たらしいわほんと...」
白魔王に魔法で電流を流されあたしは気を失って倒れた。
あたしは火に燃えて死ぬかと思ったが起きたらそこはベッドの上だった。
「良かった。おじちゃん起きてくれて...」
あたしの手を握り少女は泣いていた。そこには先程別れを告げた子供達と少女が居た。ここは業火を逃れた森にある家みたいだ。
「コクという人がここにあたし達を連れてきたの。
おじちゃんをあの火の中助けてくれたの」
「そうか。」部屋のドアが開き大男が現れた。
「コクだ。君は多くの同族を救ってくれた。あたしの仲間にはならないか?
世界を変えるために白魔王を...」コクという男に手を差し伸ばされたが拒んだ。
「すまんな...あたしは復讐に生きないと決めてる。これからは白魔王のせいで
不幸になった人達を助ける。各地の世界を回って、だからそれは無理だ。」
「そうか。」コクという男は残念そうだったがあたしの野望を嬉しそうに聞いていた。ここで手記に終わりを告げたい。
あたしは未来に希望があると感じて繋げた。今も後悔はしていない。
あたしは白魔王を倒せなかったがいつか倒せる者がいたのなら世界を
変えられるだろう。あたしは今できる限りの事をするだけだ。
何度考えを巡らしても人間はそうする事しか出来ない。
だからこれを読んだ者が迷いに立ったされていたら周りを見渡さればいい。
己を野望なんだと問い正せばいい。そうして人は変わっていく...。
最後にあたしの名をここに記しておこう。我の名はツバメだ。
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マオは書物を読み終えた。目の前にいたクロウの肩を叩いた。
「どうした?」
「僕はテゼルトに革命を起こしたい!世界を変えるんだ。」
マオの目からは迷いが晴れて眩しい瞳に変わっていた。
次回に続く。




