変われるのは自分だけ...。
彼女は10年前のあの日の事を鮮明に覚えていた。
村中に炎が渦巻いて、そこには魔法使いもいた。
彼らは大人子供関係なく殺戮を繰り返した。そして彼女の両親は彼らに殺された。「残るのはお前だ」と手を握られ首筋に杖を擦り付けられた。
「パトラ!!助けに来たぞ」乱暴にドアを蹴って訪ねてきたのは、ケンだった。
周りにいた魔法使いに矢を撃って気を失わせた。ケンはパトラを連れ出し必死に追っ手から逃げた。
彼女はその時、手を握り返さなかった。
生きている感触を感じたくなかったからだ。
両親が死んだ現実を受け止めたくなかった。これが夢ならどんなに良かったの
だろう。ただの悪夢で済まされたのに現実は残酷だ。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
パトラに巨大な手が覆いかぶさり今にも握りつぶされそうだ。
ヒルアが必死に雷網で縛り付け制止しようとするがビクともしない。
「パトラ...こんな奴に苦戦してるじゃねぇ!」
鋭い剣はクロスを描き巨体の腕を切り落とした。パトラはその瞬間、解き放たれケンに寄りかかった。
「助けにきてくれたの?」
「逃げてきたらお前が居ただけだ」
ケンはパトラと目を合わさず巨体の化け物と睨み合っていた。
「男は、趣味じゃないが栄養にはなるだろう。」
「誰がお前の栄養になるかよ!殺してやるさ」
ケンはすぐさま剣を向けた。
「ケン、辞めるじゃ...勝てない戦などするべきでは無い。麻酔炎囲」
フェルトは巨体の化け物の周辺に猛烈な炎を発生させ囲んだ。すると奴は、
隔離され麻酔薬の匂いが漂って気を失った。
「すげぇフェルトさん。凄いな!!」
ユージンは大興奮しながら駆け寄るがフェルトの顔は、深刻そうだ。
「油断するじゃない。奴がいつ起き上がるかわからん。逃げるじゃ...」
「なんでだよ。このまま倒せば...」
「こいつは切ってもすぐ再生する。お前の切った腕なんてもう再生してる。作戦を考えるのが先決だ。」
「そうかよ。見逃すのか?」
ケンはフェルトが気に食わないのか嫌悪が混じった目線で睨んだ。
「フェルトさんの言う通りよ。勝てる気がしない。それに誰も見逃すなんて言ってない。作戦を立てるの。どうせこいつは、あたし達を襲いに来るわ」
パトラの言葉にケンは舌打ちをして1人で歩いて行った。
「ケン!1人で行かないでよ」ヒルアが引き止めるが聞き止めもしなかった。
「いいのよヒルア。あたしの意見に反論が出来ないのか気に食わないだけ...追いかけましょう」
パトラは穏やかに淡々と述べた。
同意をするように皆は、ケンを追いかけフェルトの家に帰って行った。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
奴は、体を誰かに揺さぶられ目が覚めた。
「起きたわ12番。なんであなたがここにいるか知らないけど戻るわよ。餌をいっぱい用意してあるの着いてきなさい。」
巨大な化け物の腕に注射を刺され動く度に痺れを生じさせる。
「餌とはなんだ?」
「喋るようになったの?不思議ね。それはここの国民の事よ。もう待ってられないわ。あなたも嬉しいでしょう?」
アイラは不気味に笑いかけ巨体の化け物も微笑んだ。
そんな異様なやり取りを博士は不快に覚え、遠巻きに見ていた。
いくらなんでも変異しすぎだ。一体こいつは、どれ程の人間を食ったのだろうと思うと博士は手が震えた。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
方向音痴なケンをフェルトの家に誘導しながらやっとの事でたどり着いた。
「相変わらずケンは道に迷うわね。」
パトラは、疲れたのかすぐさまソファに座っていた。
「うるせぇな!早く作戦を考えようぜ」
「そう急ぐな。まずはあいつらじゃ。アイラと博士の暴走を止めないとダメだ。」
「ブルーメンヘッドに嫌がらせしてる証拠がないよ。絶対に嘘ついたり言い逃れするよ」
ヒルアは不安そうに言うが動じずフェルトはデータチップとバッジを見せた。
「これはブルーメンヘッド森林に仕掛けてある監視カメラのデータが入ってある。バッジは国際研究者所長の特別性の奴だ。後ろに名前が書かれてる」
フェルトの言う通りバッジの後ろにアイラと記されていた。
「俺がいい考えがある!ジスタがこの前やったゲスい奴だ。やってみる価値は、
あると思うぞ」
ユージンはフェルトの手を握り締めて饒舌に語った。
「そうか。わしの作戦と組み合わせて実行するのじゃ。奴を倒してアイラ達の暴走を止めてみせる。」
フェルトの問いかけに頷き、家を後にした。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
真っ暗の部屋の中テレビだけが明かりとなっていた。
嫌なことを忘れる為、ロンディ首相は酒に溺れていた。
「緊急速報です。ブルーメンヘッド国の官房長官が緊急で記者会見を開かれています!」
すぐに中継先であるフェルトの会見の場に場面は映されフェルトは数多くの
スポットライトを浴びていた。
「我が国は帝国に様々の嫌がらせを受けてきた。証拠だってちゃんとある。国民のことを思うと黙ってなんか居られない。覚悟しろ帝国...」
カメラ目線で威圧的な態度で語っていた。
画面の向こうでロンディ首相はテーブルに酒を零して唖然としていた。
すぐさま、ロンディ首相はフェルトいるであろう首脳官邸へと向かった。
次回に続く。




