揺らぐ心と変われない臆病者
フェルトの悲しそうな後ろ姿を忘れられなくてフェルトの家まで走り抜いてきた。でもブルーメンヘッド森林の様子がおかしい。
草花は、揺れ周辺にいつも居た動物達は、姿を消していた。
「なんだ?この不気味な静けさは、」ロンディは、そう吐き捨て周囲を見渡した。
木々の隙間から電流を纏った蜘蛛の巣ような糸があった。
突如として猛烈な風が吹き荒れ足音は、鳴らす度に地震に似た地響きを起こした。こんなにも巨体で化け物は、彼も未だかつて見たことがない。
あまりの恐怖に尻餅をついてしまった。
「ロンディ首相!なんであなたがここにいるのよ!」
ロンディの前に現れたのは、パトラだった。彼女は、激しく怒りを露わにしていた。「俺は、フェルトに会いに来たんだ。君には、関係ない」
ロンディは、パトラを冷たく突き放すが舌打ちが聞こえた。
「それどの面下げて言ってんの?フェルトさんに会いに行って帝国の奴隷なる許しを得たいの?」
「そんなじゃない!!俺は、帝国と話し合いを...」
「別に外交は、話し合いだけじゃないでしょ。ブルーメンヘッドは、交渉の土俵にすら上がっていないのよ。白魔王の手のひらで動かされるだけよ」
「何も知らない癖に好き勝手な事を言わないでくれ!俺は...」
巨体の化け物は、木をむしり取りパトラに振り落とした。
銃を咄嗟に盾に変えたが力が強すぎて抑えられる気がしない。
ヒルアが絡ませた雷網の糸は、全く効いておらず歯が立たない状態だ。
「あたしを居ることを忘れないでくれるかな。火蜘蛛糸」
巨体の化け物の四肢に縛り付けて燃やし尽くした。
火を纏いし糸は、腕を灰にして溶けさせたが数秒しか経っていないのに再生していた。「早く逃げなさい!あたしは、確かにブルーメンヘッドについてあなたより詳しくないけど今あなたを失ったらこの国は、消え失せるわ。貴方の親友である
フェルトさんも殺されるでしょうね」パトラの息が荒く激しく動揺していた。
「脅しのつもりか?帝国のそんな事をしないはずだ。彼らだって人間だ。いつかは、考えが変わって...」
「しつこい!確信もないのに人が簡単に変われると思わないで変われるのは、貴方だけよ。救いのない望みは、早めに捨てた方がいい。帝国が欲しいのは、広大な
土地と豊富な資源よ。それ以外はどうでもいいんじゃないの?」
パトラは、失望した目でロンディ首相を睨んで巨体の化け物にアサルトライフルを撃った。そう何度も...。
やがて周囲に散りばめられていた草花は、血に染った。
それを見たロンディ首相は、白魔王のあの言葉を呼び起こした。
「窓の外にある花畑が血に染まるわよ」
白魔王は、初めっからロンディ首相を脅して強硬手段でブルーメンヘッドを
奪うつもりだった。それは、彼も分かっていたが考えたくもない事実だった。
足は、すくんでこの場を立ち去りたい気持ちが先走りロンディ首相は、背を向け必死に逃げた。
「最初からそうすれば良かったのよ」
パトラは、呆れ混じりにため息を吐き捨て巨体の化け物と対峙した。
「餌が逃げてしまった。でも我には貴様らがいる。四肢を切り取って喰ってやる」
巨体の化け物はヨダレを垂らし手でふき取った。
パトラは震える手でアサルトライフルを握り締めて言霊術を施した。
「炎華撃」パトラが放った銃弾は華のように咲き乱れ花びらは、炎を発して激しく浴びせた。激しく銃撃が飛び交い腕は、切り落とされるが…。
「紫の色をした髪の女。お前の首をむしり取ってやる!」
銃弾を振り切り巨体の化け物はパトラを握り潰す気だ。
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アイラ達と対峙していたユージン達とフェルトは、固唾を飲んで開けられた箱に一心に視線を注いだ。
毒々しい煙が立ち込め周囲に行き渡らした。ユージン達とフェルトは吸うと
危険だと分かっていた為、口を手で塞いだ。
「アイラと博士。よくもわしの前で毒を使ってくれたな。わしは、薬のスペシャリスト。毒も例外ではない」液体が入った瓶を零して草花に浴びせた。
周囲が霧に支配され視界は、遮断されてしまった。
「霧が濃すぎて見えないじゃない!毒ガスも消えちゃうし何者なのよ」
アイラは、慌てふためくが博士は、肩を叩いた。
「そんな事言ってる場合じゃない。あいつら逃げたぞ」
「えっ?」
霧は、数分しか経っていないのに消えていて目の前にいたはずのユージン達や
フェルトは、居なかった。
「追いかけるわよ!あの老いぼれがこの事を口外したらタダでは、済まないわ」
走っていくアイラを博士は、追いかけ森林の奥に消えていった。
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ロンディ首相は森林を走り抜くが幻影が染み付き足が思い通りに動かない。
周辺が血に染まって見えただの石ころが死体にも見えた。
突然として立ち止まって耳を塞いだ。
彼は、心は、国を救いたい気持ちと保身に走る心に揺らぎ足がすくんでいた。
早く決意しなければこの国の人々が犠牲になる。だが自由は、もう取り戻せなくなる。自由を代償に平和を得れるのなら...。
そう思ったが彼らの言葉が胸を締め付け息が荒くなる。
「俺は、変われない臆病者なのかもしれない」
次回に続く。




