魔法なんか大っ嫌い。
パトラは、魔法が小さい頃から嫌いだった。やつら魔法族は、虚言だらけの歴史を振りかざして差別や虐殺をしてきた。オマケに彼らに戦争の冤罪までかけられた。全てそちらが吹っ掛けてきたのにあまりにも身勝手すぎる。
魔法自体は、こんなにも綺麗で素晴らしいのに操る者に対しての嫌悪感しかなかった。パトラの仲間に魔法使いは、いるが彼らは、人柄良く何度も助けてくれた。
だから考え方も少しは、変わったが魔法は、嫌いだ。
意識がボッーとしてただ呆然と立ち尽くしていた。
「ケン...追いかけた方がいいかもしれないね。パトラ」
「そ、そうね。ケンは、方向音痴だから」ヒルアの問いかけに肩をビクリとさせた。「ごめんね...ビックリさせたね」ヒルアに顔を覗かれ首を横に振った。
「大丈夫よ。ケンを探しに行きましょうか?」
ヒルアは、頷き2人は、フェルトの家を後にした。
「ユージン、お前は一緒に行かないのか?」
彼は、首を振って「ここにいる」と言っていた。
「そうか...わしに聞きたいことがあるのじゃな」
「今思えば偶然会った奴は、ロンディ大統領だった。俺はさぁ政治にも世の中の事は、よく知らないけど奴は、この国を守る事に精一杯で...」
「それが空回りしてるのじゃ...守りに入るのも大事かもしれんだが帝国の奴らの前では、それは、利用されるだけだ。この国の存亡をかけて挑むしかない」
「フェルトさん...ブルーメンヘッドは、味方がいないわけじゃない。俺らがいるからこの国を守ってみせるから1人で背負わないでくれ」
「生意気なガキじゃの...こんな老いぼれが死んでも誰も悲しまない」
フェルトの声も拳も震えていた。
「俺は、もう見たくないんだ。あの白魔王の身勝手な野望のせいで死ぬ人達を...」
ユージンは、フェルトの震える拳を握った。
「お前が今持ってる剣は、伝説の英雄の剣だ。それがあれば世界は、変われると思っていた。だが思い過ごしだったみたいだ。白魔王がいる限り変わることも分かり合うことも不可能に近い。」
彼は、悔しくて歯を食いしばった。何のために叔父からこの剣を貰ったのだろう。理由ばかりを考えてしまう。
「せめてブルーメンヘッドだけは、救ってみせる。絶対に奴なんかに渡さない」
「お前にすがるのもいいかもしれんな。ユージン」
フェルトは、冗談交じりに笑っていたがユージンには、無理してるように
しか見えなかった。
救いたい...救わなければという気持ちがユージンの心を締め付けた。
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血が欲しい血が...小さい獣に手を伸ばして抵抗させまいと四肢を先にむしり取った。痛々しい悲鳴を上げて捕食されていた。
「本当に食欲旺盛ね。いい事だけど殺し方が酷いわ」
化け物を呆れに混じった目線で見つめていた。
「何やってるんだよ!てめぇら...」
「この前の奴らじゃない?名前は、ケンだったかしら」
「またあたし達の野望を邪魔しに来たのか?」
白衣姿のアイラと博士がそこに居た。
「そういうことにしておく...早速ばら撒くか」
ケンは、液体状の抗薬剤を食事中の化け物にぶちまけた。
「うちのビーストヒューマンに何やってくれるの!」
「そんな名前なのか...そいつさっきより大きくなったが関係あるのか?」
食事が終わった化け物は、先程より少し大きくなり牙が鋭くなっていた。
「あなたにそんな事を教える訳ないでしょ」
アイラは、声を荒らげ軽く笑って見せた。
「知らないんだな。エリートのお偉いさんが知らないこともあるんだな」
「馬鹿にしないでよ!こいつらは、他の動物や魔物を食べる事で性質や能力を吸収することが出来るの。凄いでしょ...」アイラは、得意げに饒舌に語っていた。
「そうか。そんな凄い化け物は、弱ってるけどな」
化け物は、先程食べた獣を物体ごと吐いていた。
抗薬剤が効いたのか弱々しい元の魔物の姿に戻っている。
「何でなのよ!何をしたの!」
「さぁ?俺は、こういうのに詳しくないんだよ」
ケンは、惚けてアイラを睨んだ。
「本当に余計な事をしかないわね!」
「それは、お前らじゃろう...それは、抗薬剤じゃ」
彼らの前にフェルトとユージンが現れた。
「ブルーメンヘッド森林を汚しおってタダで済まされると思うな!」
「そんな事を言っていいと思っているの?あなたの所の大統領は、臆病者ね。ちょっと脅したら狼狽えてたわ」アイラは、狂おしい程に笑みを浮かべていた。
「お前らの馬鹿さにか?魔法族は、千武族の知恵を馬鹿にする。魔法があれば薬など必要ない。馬鹿にしてきたものに壊される気持ちは、どうだ?」
フェルトは、激しく歯軋りを起こし怒りを露わにする。
「老いぼれがやかましいわね!そんな時代遅れな物に狼狽えると思っているの!こいつの代わりなんていくらでもいるわ!」
アイラは、怒鳴り散らして白衣のポケットを漁り1つの箱を出した。
「もう怒ったわ。この森をぐちゃぐちゃにしてやるわ」彼らは、固唾を飲んだ。
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憎い...こいつが憎い...自分を苦しめた奴を滅多刺しに四肢を切り裂きたい。異形の化け物は、ヨダレを垂らし巨大な牙を覗かせた。
「なんで生きているのよ」ヒルアがそう呟くと異形の化け物は、笑った。
「首だけあれば何度でも蘇る。よくもあたしを苦しめてくれたな。四肢をむしり取って食ってやる」ヒルアを舐めるように見つめた。
「そうは、させないわ!ヒルア、行くわよ」
ヒルアは、パトラの問いかけに頷き、それぞれの武器を振りかざした。
次回に続く




