あなたは、あの白い悪魔みたい。
「可愛い」とは、なんだろう...目がくりっとして、毛並みもモフモフで鳴き声も愛らしくて、思わず、可愛いと口から零れてしまう。でも、この熊らしき魔物は、毛並みは、モフモフとは、してるものの屈強な肉体と鋭い牙。瞳だって、赤く、 ヨダレまで垂らしている。それを可愛いだなんて、この男は、可笑しい。
「なんだ!その目は、俺がおかしいって言うのか?」
ヒルア達の蔑んだ目に耐えられなかったのか、怒鳴り散らしていた。
「ヒルア、この雪山でも凍らない薬草って、どこにあるんだよ?」
ユージンは、男の言葉を無視して、屈んで、薬草を探していた。
「それを今探してるのよ」ヒルアは、ユージンと共に薬草図鑑を片手に目当ての物を捜索している。この男は、そんな中、1人取り残されていた。
「それは、恵みの花だろ?」
「貴方知っているの?」ヒルア達は、やっと男と目を合わせ、話に耳を傾けた。
「知っているさ。恵みの花は、この雪山の山頂にある。案内してやる」
「そうさせてもらうか、さすがに雪山で迷うなんて嫌だしな」
ヒルア達は、男に山頂までついて行った。雪を踏みしめる度に重く、ゴミすらもなく真っ白くて、、綺麗な布の上で歩いてるみたいだ。
「君達は、なんの為にここに来たんだ?」男は、歩きながら、ヒルア達に尋ねた。
「スモークとビーストと感染した魔物の暴走を止める為だよ。」
「そうか。そんな化け物が居たんだな」ヒルアは、コクリと頷いた。
「そして、フェルトさんとの約束を守る為...」
彼女の話を遮るようにユージンは、口を開いた。
「約束なんてしてないだろ?ヒルア」
「フェルトさんは、信じてくれてるよ。普通だったら、追いかけて怒ったりしてるよ」「俺が失礼な事を言ったのは、確かだしな。その後も話しても普通だったし...そうかもな。」ユージンは、ヒルアの話に小刻みに頷いていた。
「君達は、仲がいいみたいだな。」
男の言葉にユージンは、照れくさそうにするがヒルアは、キョトンとしていた。
「それより、頂上に着いたみたいだね」彼女の言う通り、目的地にたどり着き、恵みの花が一輪咲いていた。それは、花びらが虹色に光り輝き、摘み取っても、眩い光は、変わらなかった。何とも不思議な花だ。
「こんな奴、初めて見たぜ...」ユージンは、圧倒され、吐息を吐いた。
「最近までここいっぱいに恵みの花が咲いていた。」
男は、遠くを見据え、こう語り始めた。
「これは、ある友人の話だ。休憩がてら聞いてくれ」ヒルア達は、男の話にコクリと頷いた。
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この男のある友人とは、ブルーメンヘッド国のロンディ首相だった。
彼の話によると、ロンディは、由緒正しき名家で、ブルーメンヘッド国の歴代の首相を生み出した正真正銘のエリート一家だった。
ロンディには、将来が約束され、勉学も極め、魔法も極めてたが、フェルトという老人に出会って、薬学に目覚め、この魔法世界に疑問を感じた。
首相になっても、それは、変わらず、疑心は、消えず、濃くなって行った。
それに白魔王に目を付けられ、先日、脅されたそうだ。
これらをきっかけに彼は、塞ぎ込んでる。
「そんな奴に俺は、どんな言葉をかければいいか分からない。」
男は、そう言って俯いていた。
―――ユージンは、珍しく真剣な面持ちで意見をこう述べた。
「ブルーメンヘッド国を思っているのなら、帝国とは、距離を取るべきだ。あっちは、目当ては、資源とこの広大な土地だ。それを上げてもいいのなら話は、別だけどな...」「そうか。ロンディ首相は、何も渡したくないと言っていた。国民も望んで居ないだろうし、何よりこちら側に利益がない。」
「あるだろう。利益なら帝国と仲良しごっこして、もしどっかの国と喧嘩しても、帝国が力になってくれて、こっちは、戦争なんてしなくてもいい」
ユージンの言葉に男は、複雑な表情を浮かべた。
「そうかもしれんな。ロンディ首相は、同盟の話を保留にしたばかりにブルーメンヘッド国は、嫌がらせをされてる。」
「もう、ただの暴力でしょ。観光名所の花畑を荒らして、国が大事してる植物に まで手を出して、それを嫌がらせっていう言葉で済まされないよ。」
ヒルアは、立ち上がり、悲しそうな顔をしていた。それは、パトラからの電話でこの国の現実を知ったからだ。
「あたしは、これが誰の仕業か知らないけど、検討が着いているのなら、止めるべきだよ。大事なものを汚されて、壊されて、嫌な気持ちにならない人なんて誰もいない」ヒルアの目には、涙が流れててもおかしくは、なかった。
「皆、誰しもそうだ。でも耐えるしかない時だってある。君達がしてる事を正義だと思うな。それは、ただのお節介だ。」
「そんな残酷な事があるの?貴方は、あの白い悪魔みたいね。」
ヒルアの拳が震え、怒りに身を任せては、いけないと踏ん張っていた。
「自分達がしてる事を正義だなんて、思うなよ。知らなくていい真実だってある、全ては、この国を守る為...」ユージンは、男の言葉に激昂して、声を荒らげた。「正義とかどうでもいいんだよ!目の前で悲しんでたり、苦しんでる人達が救えればいい。名誉も何も欲しくは、無い。知らなくていい真実って何だよ?悪いことをしてる奴に目を逸らして、好き勝手にさせて、耐えて、その先には、絶望しかないだろう?」「生意気な口を聞くなよ。」男は、何かを企んだ笑みを浮かべ、意味深な言葉だけを残して去っていた。
「指名手配のヒルア·ダルク英雄の祖先ユージン。君達の事は、知っている。」
次回に続く。




