潜む闇は、心優しき老人を襲う。
「擬態」奴は、どんなに小さな音でも聞き逃せ無い位に人より、耳が優れていた。滴る血と彼らを突き刺した刃には、返り血がびっしりと付き、奴は、それを舐めとった。何故か調味料のような味がした。
「居るな!人間共、出て来い!」奴は、周辺に視線を注いだが、なんの気配も感じない。この遺体は、ただの人形なんだろうか?それとさっきの声は、気のせいなのか?奴は、遺体を抱き寄せ、考えを巡らせていた。静かな環境の中で機械音が鳴り響き、音が一際激しくなった瞬間に遺体は、爆発した。肉片とは、違い、綿が飛び散った。遺体は、精密に作られたただの人形だったのだ。
「...損傷が激しいみたいですが、大丈夫ですか?」どこかに隠れていたのか、ジスタは、奴の目の前に現れた。彼の言う通り、奴は、彼らの人形を抱き寄せたせいで腹辺りから下半身まで、吹っ飛んでいた。
「余計なお世話だ。こんなまやかしなどに我に効くはずなどない」
「貴方に痛みは、ないのですか?それとも自分の敗北が分かっていないと?貴方が俺達を突き刺した時には、もう偽物でしたよ。」
彼は、淡々とそう語っていた。ジスタ1人しか居らず、ほかの仲間は、どこに、いるのだ。ただそれが、やつの気がかりだった。
「そうか。でも人間共は、知らないだろう。治せることを...」
奴は、ニタリと笑い、損傷した部分は、元に戻っていた。
「自己再生能力ですか、厄介な人ですね。」ジスタは、そう言うだけで、余裕の笑みすら浮かべていた。「随分と余裕そうだな。何か策でもあるのか?」
「言うわけないでしょ、貴方は、馬鹿ですか?」ジスタは、奴を馬鹿にしたような目で嘲笑っていた。「雑魚が何を言っている!我が馬鹿な訳ないだろう。」
奴は、爪を鋭くさせ、切りかかろうとしていた。パチン!と指を鳴らす音が聞こえ、絶え間なく、銃撃は、止まず、首が吹っ飛んだ。
姿を消していた仲間は、奴を囲み、見下ろしていた。
「魔物だったみたいだな」奴は、死ぬと、人型の姿をしておきながら、魔物特有の尻尾が生えていた。「そうみたいですね。ビーストでは、なかったですね。」
「フェルトさんに調べてもらおう。じゃないと何もわからないよ。」
ラブリーとジスタは、互いに頷きあっていた。
「これから、どうするんだ?ジスタ達は...」ユージンがそう聞くと、ジスタ達は、先約があるらしく、ブルーメンヘッド国を明日にも出るらしい。
「ルビア達と約束をしてまして、テゼルトの村の再建を手伝わきゃ行けないので、後は、おまかせしますね。」「おう、気をつけていけよ。」ユージンがそう言うと、ジスタは、頷き、ラブリーと共に去っていた。
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翌日になり、フェルトの家へと向かった。奴の遺体を見せると彼は、険しい顔をしていた。「これは、ビーストでは、ないな。ヒルア、これがなにか分かるか?」彼女は、首を横に振り、奴の正体が何なのか分からないでいた。
奴の遺体が解剖台に横たわっていた。フェルトは、メスを入れ、心臓には、粘着質の猛毒がへばりついていた。
「これが奴を襲った毒だ。この毒は、スモークとビーストを組み合わせ出来た奴だ。感染すると、進化し、劇的に強くなり、自己再生能力や他の生物と超越した者になる。」フェルトは、語りながら、次々と腎臓や内臓を取り除いていた。
「何か弱点は、無いのか?」ユージンは、そう聞くが、「ない」と即座に言われた。「ひたすら再生する間もない程、攻撃するしかない。それにこの毒は、今どき、存在などしないはずだ。誰かがばらまいたのだろう。」
「フェルトさんは、この国にテロリストが居るっていうの?」
「ただのテロリストがこんな事を出来るはずがない。引き続き、調査を続けてくれ。」ヒルア達は、頷くが、ひとつ疑問が残っていた。
「国には、報告は、しないのですか?フェルトさんは、首相の側近ですよね」
「報告は、しない。確証が得られてないからだ。犯人は、テロリストでもない。犯人は、白魔王の下僕だ。」「でも、帝国とは、同盟を結んでいるよな?」
ユージンは、そう言うと、フェルトは、笑っていた。
「そんなの名ばかりだ。うちの国の資源や自然豊か土地が欲しいだけだ。こちらの事など何も考えていないんだよ。」「酷い...」ヒルアがそう呟くと、フェルトは、こう言った。「君達には、関係の無い話だ。ただ、わしは、友人の為にどう動こうか迷ってる。このままじゃブルーメンヘッドは、帝国のものになる。」
「あたし達には、関係ない話かもしれません。フェルトさんは、この国が帝国の物になってもいいのですか?」ヒルアの目は、澄んでいて、ただフェルトを見つめた。「良くは、ないが、白魔王にアイツは、怯えて、塞ぎ込んでいる。そんな奴に俺は、厳しい言葉しか、かけられない。」フェルトは、蹲り、悲しいそうな表情をしていた。「アタシ達は、これからも調査を続けます。証拠も集めて、帝国にそれを突きつけましょう!絶対に嘘も暴力もさせないような絶対的な真実。」
ヒルアは、フェルトの手を握るが、それは、振り払われた。
「白魔王の前では、真実は、偽りでしかない。お前もよく知ってるだろう。なんで、魔法使いは、わしらから、何かを奪ってばっかりなんだ?この国が初めて、 千武族のワシを認めてくれた。ブルーメンヘッドは、帝国に悪い事をしたのか?」
「...何もしてないんだよ!する前から怯えるなよ!帝国に奪われるのが嫌なら、どんな事をしてでも守り抜くんだよ。フェルトさんに関係ないと言われても、俺達でブルーメンヘッドを守る。黙って見てろ!」
ユージンは、激しく怒鳴り、フェルトの家を去っていた。




