国と友を大事に思う老人。
「クマちゃん?」この化け物をくまちゃん呼ばわりする程、可愛くもないだろう。ユージンとヒルアは、互いに目を合わせ、首をかしげた。
「なんだ!その疑わしい目は!このブルーメンベッド森林は、穏やかな魔物しかいない。貴様達は、こんな可愛い子を殺しに来たのか?」老人は、声を張り上げ、
激昂していた。
「あの...そんな可愛い子があなたの頭を噛んだのですよ。捕食する気満々ですよね?」ヒルアは、遠慮気味にそう言ったが、老人は、息を吹きかけ、再び、怒鳴り上げた。「彼なりの愛情表現だ!これ以上、罵倒するなら、この毒をここにばら撒くぞ」この老人に何言っても、無駄だと、二人とも呆れ混じりにため息を吐いた。
「その毒の副作用は、鼻から毒が入り、数時間で痙攣など、意識を失うが後遺症などは、残らない。100年前の戦時中に使われた。」
ヒルアは、自分が持っている薬の知識を淡々と語りだした。
「ほう...分かっておるな、小娘。今時、珍しい、薬剤師か?それとも見習いか?」
「あたしは、見習いです。叔母が薬剤師でフェルトという方に会いにここに来ました。」彼女は、叔母に書いて貰った紹介状を老人に見せていた。
「それ、ワシじゃ...そうなら早く言ってくれれば良かったのに...」
ヒルアとユージンは、目を合わせ「えぇ..!?」と驚きの声を重ねた。
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フェルトという老人に連れられ、黒を基調とした小さな家に辿り着いた。
「小娘がノアールの孫だったなんて、ビックリしたぞ。あいつは、元気やってるか?」「元気過ぎて困ってる位です。あたしは、小娘では、なくヒルアです。」「俺は、ユージンです。」ヒルアとユージンは、ソファに座り、フェルトにお茶を差し出された。「そうか。指名手配犯に...これは、言わない方が良いか。なんの目的でここに来たんだ?」フェルトは、ユージンと目を合わせるが、直ぐに逸らした。「ビーストについてなのですが、ここでは、無いのですが、ブルーメンヘッドでビーストらしき魔物が彷徨いてる目撃情報が上がっています。」
「小娘、ビーストに感染した魔物を連れてこい。話は、それからだ。物体が無ければ、確証は、得られない。」とフェルトに冷たく突き放された。
「...じゃあ、ここにビーストに感染した魔物を持ってきます。」
「ほう。人生において、時間よりお金の方が大事だ。これは、報酬だ。ここに魔物を持ってきたのなら、渡そう。」フェルトは、テーブルに金貨が入った袋を置いた。彼らは、頷き、フェルトの家を後にした。
早速、ビーストの情報を聞こうと、ジスタ達の所へと彼らは、向かった。
ブルーメンヘッドホテルのフロントにその者達は、佇んでいた。
「ユージン、久しぶりです。話は、マスターから聞いています。」
「それは、話が早い...フェルトという老人に会いに行ったが、ビーストに感染した魔物を連れてこないと話にならないと言われた。」
ジスタは、眼鏡を上げ、キリッとした表情をしていた。
「そりゃそうでしょう。まだ、ビーストとも決まった訳でもないでしょうし...」
「そうなのか?」「俺は、薬関係や感染病についての知識は、ありません。ヒルア、俺達とブルーメンヘッド遺跡に向かいましょう。」
「そこにいるの?」ヒルアは、そう尋ねるが、ラブリーがこう答えた。
「得体が知れない者がね...ビーストなのかも、あたし達には、分からないし、戦っても、倒せるかどうか分からない。とにかく何もわからないんだよ。」
ラブリーは、頭を掻きむしり、不安そうに語っていた。
「大丈夫...どんな魔物にも弱点は、あるよ。行こう、ブルーメンヘッド遺跡に...」
彼女は、覚悟を決めたような瞳をしていた。彼らは、その足でブルーメンヘッド遺跡に辿り着いた。
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遺跡周辺は、薄暗く、骨や魔物の死体がそこらへんに食い散らかされていた。
「むごいね。目を背けたくなる」ヒルアは、腕で顔を覆い、見えないようにした。
「ここは、まるで地獄のようです。ブルーメンヘッドは、魔物が少なく、どこも、穏やかです。それに魔物も人を襲う物では、無い。」
彼らが歩く所々に血の絨毯が敷き詰められ、グロい以外の何物でもなかった。
匂いも不快で腐敗が進んで、今にも吐きそうだ。
「ヒルア、大丈夫か?」ユージンが彼女の背中をさするが「心配は、要らないよ」と手を振り払われた。
「皆、聞こえますか?この足音が...」彼らは、耳に神経を注いだ。ヌルッとした液体が歩くような、重ねるリズムは、とても静かで後ろを取られそうだ。
「危ないよ!前じゃなくて、背後に居たんだね。気配を消していたのかな?」
ラブリーは、潜めていた杖をかざし、呪文を唱えようとした。液体のような奴らは、とってもビーストという化け物とは、程遠かった。これは、なんだ?
「なんなの?ジスタ...これをあなた達は、見たって言うの?ビーストじゃないわよ!」ヒルアは、奴らを指を指して、動揺を隠せない。ジスタは、彼女の問いに首を横に振った。「同じものですが、俺達が見たものとは、違う。進化しています。人の形に...俺も何を言ってるか...」
「とりあえず、冷静になれ!こいつの正体なんて、フェルトさんに見せたらすぐにわかる。」ユージンは、とっても澄んだ様な目をしていた。それは、逞しくて、 剣は、それと似たようなオーラを放っていた。
「人間...限りある生命が我に勝てるか?人間は、歳をとり、衰退していくが、我らは、何かを犠牲にする度に進化していく...」
人型の液体のような奴は、ゆっくりとして、こちらに近づき、声をそう発した。
「喋ったよな!人間の言葉を分かるのか!世紀の発見かもしれねぇ、魔物が喋るなんてオーク位だ。」ユージンは、皆と目を合わせ、1人だけ驚いていた。
「そんな程度の低い魔物と一緒にするな!我は、モンスターじゃない。神だ。」
「うわ...厨二病と自意識過剰だ...」ユージンは、消え入るような笑い声を張り上げた。奴は、無数の刃を彼らに突き刺した。
次回に続く。




