ブルーメンヘッド国
滴る汗と震えた手で書類を握った。
「そんなに緊張しなくていいわよ。ロンディ首相、あたしは、ただあなたの国を帝国に迎えたいって言ってるの。そちらに不利益なんてあるかしら?」
白魔王に耳元で囁かれ、首相は、手が更に震えてしまう。
「ロンディ首相?ブルーメンヘッドの事を想えば、どちらが不利益か分かるわよね?同盟を捨てるか、帝国の傘下に入るか。あなたの国は、資源が豊富で自然豊かじゃない。欲しくてたまらないわ。」白魔王は、首相をじっと見つめ、手を力強く握った。「ちょ、ちょっと待ってくれ。国民のことだってある。考えさせてくれ。」首相は、白魔王に握られた手を振り払い、視線を逸らした。
「下民のことなんて気にしなくていいのに、真面目なのね。待ってあげるけど、 その間は、何が起こっても、帝国に助けなんて求めないでね。」
首相は、白魔王の意味深な言葉に耳を疑った。
「それは、どういうことだ?白魔王様」立ち去っていく女性は、振り向き、こう言った。「貴方が今ここで答えを決めないから、悪いのよ。まぁ、一応脅しておくわ。もし同盟を捨てたら、負け戦をする事になる。窓の外にある花畑が血に染まるわよ」白魔王は、狂ったようにニヤリと微笑んだ。「行きますよ、白魔王様」
ハクに連れられ、白魔王は、去っていった。首相は、崩れ落ちるようにソファに座り込んだ。これから、ブルーメンヘッドは、どうなるんだ?そう考えると彼の頭は、真っ白になってしまう。同盟に捨てれば、即戦争だ。帝国の奴隷か、どっちがいいかなんて、どちらも嫌に決まってる。でも逆らえば、ブルーメンヘッドにこの平和な日々が壊されるだろう。
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騒がしく耳元で鳴り響くサイレン音で目が覚めた。ふと横を見ると、パトラがあの気持ち悪い人形を持っていた。「普通に起こせないのかよ!今度は、なんだよ。」「ユージン、初めての他国の任務よ。来なさい」
「お、おう」ユージンが起き上がると、パトラは、部屋を去っていた。
「おはよう、マスター」下の階に降りると、既にギルドの皆がリビングでマスターの話を聞いていた。「ユージン、起きたか?ブルーメンヘッド国から任務が来たんだ。」「それは、パトラから聞いた。どんな仕事なんだ?」
「依頼主は、ジスタからだ。」
ユージンは、目を丸くさせ「あの、ジスタがか?」と思わず、聞き返してしまう。「あの、ジスタがだ。皆が知ってのとおり、ジスタとラブリーがブルーメンヘッドで旅行中だ。そこでトラブルというか、不審に思う事に出会したらしい。」
「マスター、らしいってなんだよ。」ケンが険しい表情で聞き返した。
「ジスタは、あのビースト似た魔物に出会したと言っているが、それが確かかどうか分からない。ヒルアとユージンにブルーメンヘッドに出向いてもらう。」
「それは、いいけど、俺達は、そこで何をすればいいいんだ?」
「ビーストの調査だ。まだ感染してるかも分からないからな。」
「でもあの毒は、誰かがばらまかないと、感染は、しないものだよ。テロの可能性があるかもしれないよ。」ヒルアは、真剣な面持ちでそう話していた。
「それなら尚更だ。原因究明を急いでしなければいけない。」
コクは、強い口調でそう語っていた。
「マスター、ヒルア達だけなら、あたし達は、要らなくない?」
パトラは、首を傾げ、怪訝な顔をしていた。
「ヒルア達の調査報告によるが、お前達にも、ブルーメンヘッドに出向いてもらう。」「ふーん。分かったわ。」パトラは、そう言いながらも欠伸をしていた。
「皆、ブルーメンヘッドの資料よ。ヒルア達は、早速行ってもらうね。」
ユージンは、ユミンに差し出された資料を鞄にすぐさま入れた。
「ヒルアは、ノアールお婆さんに許可貰ってるのか?」
「うん、なんとか貰ったよ。まずは、おばちゃんの知り合いに会いに行こう。調査は、それからだよ。」ユージンにそう聞かれると、ヒルアは、笑顔でそう答えた。
「調査の時にジスタ達と合流する事になってるから、忘れるなよ。気をつけて行けよ。」「分かった。行こうぜ、ヒルア...」マスター達に見送られ、ユージン達は、空挺バイクでブルーメンヘッドに向かった。
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ピンク色の花が咲き誇り、そこには、花畑が広がっていた。
「ここがブルーメンヘッドか、綺麗だな」
「そうだね。この奥におばちゃんの知り合いがいるらしいよ。」
ユージン達は、花を踏まないようにゆっくりと足を進めた。花畑を抜けると、 そこは、森林で魔物が居たが、ビーストには、侵されては、いないみたいだ。
「ヒルア?なんか聞こえないか?」そう言われ、彼女は、耳を澄ました。不快な音が周囲に響き渡り、奥へと走っていった。
ある老人が魔物に頭部を食われ、血だらけで項垂れていた。
「ユージン!ここは、あたしに任せて...」彼は、頷き、ヒルアは、魔物に「雷網」を施した。電流を纏った網に縛り上げられ、魔物は、悲鳴を上げていた。
「グワァァァァァァ!!!」
「何やっとるんじゃ!!ワシとこいつは、ジャレとるだけやったのにどういうつもりだ?」老人は、血だらけの姿で怒鳴り散らしていた。ヒルア達は、耳を疑い、聞き返した。「あ、あの襲われてましたよね?あたし達は、貴方を助けようと思って...」ヒルアは、老人にそう言うが、睨まれるだけだ。
「余計お世話じゃ!うちのクマちゃんを傷つけたな。たっぷりお仕置きを受けてもらうぞ」老人が持っていたのは、猛毒の液体が入ったフラスコだ。
ヒルア達は、固唾を飲み込んで、戦いに臨んだ。
次回に続く。




