女王の栄光と揺れ動く独裁。
博士の意識が途絶えていく、熱く、まるで体が燃え上がるようだ。彼は、ここで死んでいくのか?誰か...誰か助けてくれと祈るが、誰の足音も聞こえない。
数時間前、ラブリーとジスタは、気を失った博士達の傍に居た。
「寝たみたいですね、どうしますか?」
「分かってるくせに聞くんだね、ここに燃え移るまで時間が無い、逃げるよ」
ジスタは、彼女の腕を掴んだ。
「ラブリー?白魔王は、この事態を揉み消すでしょう...」ジスタは、震えながら、拳を握っていた。
「今は、そんなこと言ってる場合じゃないよ?逃げ遅れたら死んじゃうだよ」
ラブリーの言う通り、火は、今すぐにもこちらに燃え移りそうだ。
「揉み消されたらルビアの苦しみは、永遠に報われる事は、ないでしょう。そして、世界は、変わることなく平穏を...」
「何が言いたいの?どんな事をしたって消されるものは、暴いても消されるの」
ラブリーがそう言うと、ジスタは、何故か笑っていた。
「何でも利用しましょうよ。ラブリー?この事態を嗅ぎつけた野次馬を...」彼女は、目の前にいるジスタのその言葉で窓を覗いた。フラシュ音が聞こえ、大型のカメラを持った記者が立っていた。
「手段なんて選んでられないね。いっその事、ここを爆破して火に爆弾を投下しよう」 ラブリーの言葉にジスタは、頷いた。
「その方が良さそうですね」彼は、手榴弾を投げ入れ、唯一の出口である窓から、飛び降りた。そして、ヒルア達の元へと降り立っていく...。
*****
ヒルアとパトラとケン以外の生命線を感じて、ユージンは、周りを見渡すが、 怪しい者は、いない。「どういうことだ?」
「ここですよ、ユージン」ジスタは、魔法の力で浮遊させ、ゆっくりと地上に降りていた。「大丈夫だったのか?ジスタ」
すぐさま、ユージンは、彼らの元へと駆け寄っていった。
「まぁ...何とか行けましたよ。それよりも、オークは、倒せそうですか?」
彼らの周辺には、血走った目をしたオークが数十匹、居た。
「もうちょっとだ。それにしてもマスコミが邪魔だ。まともに戦いも出来ない」
彼らをさらに囲うようにマスコミが集まっていた。さっきまでこんなには、いなかったのだが、数十人位に増えている。
「そうですか...マスコミは、俺達がどうにかするのでオークを殲滅して下さい」
ジスタにそう言われ、ユージンは、頷いた。彼は、次々とオークを大剣でなぎ倒していた。「炎囲」とヒルアは、唱え、オークを炎の檻に閉じ込めた。
「ナイスだぜ☆ヒルア、集中剣華!」
得意げにケンは、剣を何本も花びらのように並べた。そして、檻に乱立していく、返り血を浴びると、まるで鬼のようだった。
「終わりみたいね。骨が折れちゃうわ」パトラは、紫の髪をなびかせ、銃を閉まっていた。「ジスタとラブリー何やってるんだ?」
ケンは、振り返り、あちらの様子を気にしていた。
「ジスタが悪い顔をしてたわ。何か仕掛けてるじゃないの?」
彼等達は、マスコミの相手をしており、カメラの前で何か話していた。
「ふーん。どうでもいいから、早く帰ろうぜ」
ケンは、疲れ切った顔をして、ため息を漏らした。
「どうでも良くないわよ。ジスタに話を聞かなきゃ分からないことだってあるのよ。待つの!」パトラは、去っていくケンのフードを掴んでいた。
「....はぁ、わかったよ」彼は、呆れた様子で項垂れていた。
*****
彼らの目の前には、熱心に科学機関の爆破の様子を話す記者が居た。別に奴らには、悪意も何も無い。ただ真実を知らないだけだ。
「取材中にすいません、俺は、魔法使いのジスタです。この事件の真相も知っています。ある事情で顔出しは、出来ないのですが、皆さんにお伝えしたいことがありまして...」記者の肩を掴み、ジスタは、にこやかに答える。
「はい、是非お願いします、あたしも国民に真実をお伝えしたいです。じゃあ、 音声のみの取材ということでよろしいでしょうか?」
記者のその言葉にジスタは、頷いた。
「最近、どうも魔物が大量に増え、凶暴化もしていた。怪しいと思い、俺達は、 森や洞窟や遺跡を調査しました。その中でスモークウィルス、ビースト、以前、報じられていましたよね?誰かが誰かに揉み消されましたけど...それには、訳があったんです。どの事件もこの国際科学機関が関わっていたからです。」
「でも、科学機関が何故そんなことを?」 記者の女性は、不思議そうに尋ねた。
「はい、それは、独裁政権が長期化し人々は、体制に疑問を抱きます。あなたもそうですよね?」彼女は、ジスタにそう聞かれ、小さく「うん」と呟いた。
「政府は、求心力を失いつつあります。それは、他国にも影響も出ますし、帝国にとって都合よろしくない事でしょう...だから、世界に誇れる軍事力で圧倒的な力を示し、かつての帝国を取り戻そうとしているんです。」
ジスタは、淡々と冷静にそう語っていた。
「...それがスモークウィルスやビースト」
彼女がそっと呟くと、ジスタは、頷いた。
「貴方は、鋭いですね、そうです。それらを作ったのが国際科学機関なのです。 そして、事態は、マスコミに報じられる事になり、ここは、研究員が揉み消すため、爆破されたのです。」
女性の記者は、ビルを見るなり、震え立っていた。
「そうですか、それが真実なのですね...。これは、許されない事です。しかも、 ルビアのという女性のせいにして、もみ消そうとするのですね。この事態について、あたしは、白魔王様にご説明をお願い致します。国民の皆様に...」
彼女は、真摯な態度でカメラと向き合っていた。
*****
彼らがいたホワイト砂浜には、亀裂が出来て、戦いを物語っていた。
「ジスタ、偏向報道の手伝いしてどうするの?ねじ曲がって伝えてるよ」
記者の取材が終わり、ジスタの顔がすっかり疲れていた。 彼女のその言葉にすぐに答えられずに居た。
「俺らがしてなくても、あちらは、そうしましたよ。ラブリー、これで、いいんですよ」「流石に汚すぎるよ。あたしは、ジスタ君がしてる事は、正義だとは、思わないよ」 ラブリーは、非常に辛そうな表情をしていたがジスタは、冷たく引き離した。「何も真実だけがすべてじゃないでしょ」
「ジスタ君の中でそうかもしれないね?でも...」
ラブリーの言葉を遮るようにパトラが間に入った。
「揉めてどうするの?あたしは、別にジスタは、悪い事をしてないと思うわ。汚れ役になっただけよ。それにもみ消されるよりかは、マシじゃない?ラブリー」
パトラは、彼女にそう言うが、不服そう顔をしていた。
「そうだけど、だからって、ねじ曲がった真実を伝えるのは、良くないよ。どうなっても、あたしは、知らないからね」
「...ラブリーの言う通りかもな。ジスタ...あのビルから生命線が3人も見える、生き残ってるかもな」ユージンは、ジスタの方に触れ、ビルを一心に見つめていた。
「···そうですか、賛否両論ですね。どんな事が起こってもおかしくないですし、見守るしかないですね」ジスタは、ため息を吐きながら、そう語っていた。
「ねぇジスタ、きっとルビアちゃんは、報われるんだよね?」
ラブリーのその言葉に彼は、遠くの方を見据えていた。
「俺だってそう願っています、この事件の1番の被害者は、ルビアなんですから····」 ――眩しい、その言葉は、白魔王にふさわしいだろう。周辺には、カメラのシャッター音が響き渡る。「白魔王様、会見です。」部下にそう呼ばれ、彼女は、表に望んだ。
次回に続く。




