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僕は、君のヒーローになる。  作者: ブラックキャット
第1章繰り返す日常で変わる覚悟。
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ワールドプロジェクトというギルド

  彼女は、この世界の汚れに呆れ、真っ白にならせる事を諦めていた。

  ついには、現実からも逃げた。自分に濡れ衣を着せた犯人も探さず、事実を

 受け止めていたが何もしなかった。大切な人を守るためじゃない。


  多分、自分の保身の為だ。そう。彼女は、それを痛い程、分かっていただから

 目を逸らしたのだ。


「──竜牙斬!!」と木々を切り裂く音がする。振り向くとなんとユージンは

 粉々に剣で木を切り裂いた。そして平然として、立っていた。

 本当だったら彼は、下敷きになってたはずだ...。


「···ハァハァ、俺を殺す気かぁぁぁ!!」

  ユージンは息が荒く酷く動揺していた。それもそうだ。普通なら死んでも

 おかしくは、無い。だが、彼女にはユージンを殺す気などない。だだ他人と

 向き合う事に逃げたかったのだ。


「そうじゃないって言ったら信じてくれる?」

  彼女は、目が泳ぎ出して、少し、うつむき加減にそう言った。


「信じるも何も君の行動に殺意がない。君は、優しい人間だ、俺を生かすなんて···。」ユージンの思わぬ言葉に彼女は、びっくりしていた。

 てっきり怒って、攻撃されると彼女は、そう思っていたからだ。


「随分、あたしを買い被っているだね。誤ってたら貴方は、大怪我を負わされていたのに?」


「まぁそうだな。でも優しさが無いのなら普通、殺すだろ、こんな怪しい奴。君を政府に突き出せば、俺は、大儲けもんだ」

 ユージンは、笑い混じりにそう言っていた。 


「あなたも捕まるでしょ。反政府組織の一員なんだから儲け所じゃ済まないよね」

 彼女は、少し微笑んでみせると、ユージンは、直ぐに口を開いた。 


「それもそうだな。この行為が政府側に発覚するリスクを負って君になぜここまで執着するか分かるか?」


「さぁ、ただのお人好しじゃない?」

 ユージンは、鋭い刃を彼女に向けた。殺されると思い彼女は、後退りしていた。


「これが俺たちに出来る。精一杯の反逆行為だからだ。マスターが言うには

 千武族自体が反乱分子らしい。君も両親や俺の仲間も肉親は失ってる。皆、

 やつらに殺されたんだ。だから、俺達がナイフを持つ意味をわかって欲しい」


「──だから、意味を分からせる為に刃を向けたの?」

 ユージンは頷き、ヒルアに真っ直ぐな剣を向けていた。


 最初、彼女は、ユージンに剣を向けられる理由も言われた言葉の意味も分からなかった。でも次、発される言葉でハッキリとそれは、分かった。


「そうだ。互いにちゃんと向き合おう。傷つきあってもいい。だけど逃げるな、

 抗え!何もしてない人間が救いを求めるなよ。守られるだけじゃ

 君は、嫌だろ?」


 このナイフは、なんで、あたしの心に刺さるのと彼女は、そう思っていた。

 始めっから、彼女は、わかっていたかもしれない。

 10年前から逃げる事しか頭になかった彼女は、立ち向かうことを知らない臆病者だ。それをユージンは、ただ見抜いただけなのに、なぜ、ユージンの言葉は、彼女にこんなにも深く突き刺さるだろう。


「おばあちゃんに心配をかけたくない。でもあたしに冤罪かけた奴が誰かを知りたいし、決して許さない。10年前の真実が知りたい」

 ユージンは、彼女の手を握った。


「この世界で全てを知りたい。それは、反逆行為と同じと言っていい。反政府組織 ワールドプロジェクトと共にしないか?君にとって悪い話じゃないと思うよ」

 彼女は、銃を投げ、剣に変化させ、ユージンに刃を向けた。


「嫌よ。ただし、協力はする。とりあえずは、それでいい?」

 彼女は、覚悟を決めた瞳でユージンを睨んだ。

「まぁよしとするさ」ユージンは、にこやかに笑い、互いに剣をしまった。


「明日、ギルドに来るといい。じゃあな」

 ユージンは、手を振り彼女は頷いて手を振り返した。


 *******


 ヒルアの夢は、悪夢ばっかりだ。鬼のような目付きをした誰かが、自分の首を

 締められていた。逃げても、逃げても執拗に狙い続ける。

 それが毎日、続いて、まともに寝れもしない...。 

 夢の中でヒルアは、そっとこう呟いた。


「なんで、あたしを殺そうとするの?」

 その誰かが黒づくめの奴だった。ヒルアにそう言われると、こう怒鳴り散らした。「あたしを追い詰めた。お前が憎いからだ!殺してやる!!」

 黒づくめのやつの顔が恐ろしくて、そこで夢は、途絶えた。目が覚めると

 ちょうど朝だった。ここは、寝室で横には、叔母が立っていた。


「随分とうなされてたけど、大丈夫かね?」


「大丈夫。ただの夢だから何ともないよ」

 彼女の無理した愛想笑いに察したのか、叔母はうつむき加減に問いただした。

「···そうかね、ヒルア、それが正夢だったらどうするんだ?」


「多分、あたしは、身を守る為にその人を殺すと思う」

 ヒルアは、ベッドから立ち上がり、そう言った。


「そう。命を狙われる夢を見たんだね?だけど、怯える事じゃない。行くんだろ?奴らのところに···」

 叔母には、ヒルアが考えている事が見抜かれていた。でも言う訳に行かない。

 心配をさせない為に...。


「おばあちゃん?あくまで協力だよ。それ以上のことは、しないから。真実が知りたいの」


「別に止めは、しないさ。でも真実を知ったっていい事なんてない。それだけは、覚悟しときな」

 叔母に肩に手を置かれた。その言葉は、偽りなどない。叔母は、彼女の過去を

 知っている。でも言わないのは、孫であるヒルアの為かもしれない。


「うん、わかってるよ」

 ヒルアが笑うと叔母は、複雑な表情を浮かべ、部屋を出ていった。自分が動く

 ことで叔母に心配をかけるかもしれない。でも、ヒルアは、真実が知りたかった。


 ───フードを深く被り、『ギルド ワールドプロジェクト』のドアを開けた

 誰もおらず静けさが部屋に立ち込める。

「誰かいないの?」と彼女が発すると誰かがこちらに駆け寄って来た。


「ヒルアちゃん?ユミンよ。せっかく来てくれたのは、悪いだけど、街で千武族が暴れてるみたいで皆出ていちゃったの」水色のロングヘアーの女性1人がそこには、立っていた。


「ユミンさんは、いかないですか?」ヒルアは、首を傾げ、そう尋ねた。


「あたしは、非戦闘員だから留守番だよ。敬語なんて肩苦しいから辞めてよ」

 ユミンは、ヒルアに優しく微笑みかけていた。

「それは、同族が起こしたって事?」


「そう。あたし達みたいな反政府組織なんだけど、今、テロを起こして政府側の

 魔法使いを1人、殺したって情報が入ったの。そこまで目立った行動しちゃうと

 族ごと、目をつけられるのね。さらに厄介なことにその周りの国民を巻き込んで

 やってるからね」


「それで皆、いないの?政府側の魔法使いってなんなの?」


「そうね。政府側の魔法使いは、国際ギルド局の局員よ。救われた人次第で

 人生変わちゃうから不思議よね。ある意味、あれも洗脳ね」

 ヒルアは、怪訝な顔をしていた。


「10年前に千武族の村は、誰かによって燃やされた。あたし達は、マスターに

 救ってもらったけどあいつらは、奴によって救われた。行ったら分かるよって言うことで場所教えるから、援軍に向かってくれる?協力してくれるだよね」

 ユミンは、少々、無理やりすぎるが、こんな脅迫めいた目で見つめられたら

 ヒルアは、断れない。コクリと頷き、テロの事件現場に向かった。


 ************


 ヒルアは、早速に事件現場に着いていた。爆発音が聞こえ、火の渦に周りは

 包まれていた。

「なんか、あそこだけ、火に囲まれてる」

 よく見るとそこには、ユージンとパトラと見知らぬ男がいた。


「これ外からじゃないと消えない仕組みになってるじゃない、奴らを止めないと

 偉いことになるわよ」

 パトラは、顔が険しく、この火柱をどうするか、考えを巡らしていた。


「火の海になるな、仕方がないじゃねぇの?自業自得だろ」

 見知らぬ男は、少し冗談交じりにそう言ったが、パトラにあからさまに呆れ顔をされた。


「ふざけた事を言ってんじゃないの。ケン、目立った行動されるとあたし達の活動に支障を来すでしょ」

 ユージンを間に挟み、2人が口論となり、呆然としていた。どうやら埒が

 明かないみたいだ。


 自分が助けるしか糸口が見つからない。そう思い、ヒルアは、銃を投げ、

 バズーカに変化を遂げた。


「──豪雨!!」発射口から水を発射させ、少しずつ火は、消えた。

 こっちに向かって猛烈なスピードで目の前にいるあたしに駆け寄ってきた。


「死ぬかと思ったわ。誰かさんが魔法が使えなくて、苦労してたのよ!ありがとうね。ヒルアちゃん」

 パトラに抱きつかれ、オマケに頬づきをされて苦しい。


「中から、水の魔法をかけたとしても消えないだろ。そういう仕組みなんだから俺のせいにするなよ」

 ユージンは、そう言って、パトラを睨んだ。


「そんなの関係ないわよ。分かってないわね。魔法は、術者の思う通りに発動されるのよ?魔力が強い程ね。全体的にかければいいのよ!相変わらず馬鹿ね」

 ユージンを睨み返して、そして嘲笑っていた。


「抑えろよ、ユージン」ケンと言う男に宥められていたが、ユージンは、不服そうな顔をしていた。


「ケンに言われたくねぇよ。さっきまで喧嘩してたろ?」

 尋常じゃない威圧をかけられユージンは黙り込んでいた。

「あっはい、すいません」


「で、この女は、誰だ?えっと、俺は、ケンだ。お前は?」彼女は、指を指され、すぐさま名前を名乗った。「ヒルア·ダルク。協力させてもらうよ」


「そういうことか。面白くなりそうだな!よろしくな」

 ケンは、静かに頷き、上空を見上げると空を飛んだ船が爆弾を投下していた。

「あれを止めるの?」


「そうね。骨が折れるけど、ヒルアちゃんが助けてくれたおかげでこれから

 ショーが始まるわ」

 にこやかにパトラは、そう言っていた。


「船をぶっ壊すだよ。腕試しと行こうじゃないか?」

 ケンは、大剣を引き出し、肩に背負っていた。


「嫌。その前にどうやって空飛んでる船まで行くの?流石に対策、考えてるだよね」ヒルアがそう言うと残りの3人は、黙り込んでいた。

 まさか何も考えてないというのは、ないだろう。彼女は、そうは、思っていたが彼らなりの考えがあると望みを持っていた。


「「「あっ!!」」」という声が3重に重なり、彼らに焦りが見え始めた。


 彼らを含めて、自分があの、空飛ぶ船に果たしてたどり着けるだろうか。叔母の顔を浮かべて、考えを巡らしていた。彼女は、こう思っていた。

 ヒルアは、前途多難すぎて不安しかないです。


 次回に続く。


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