幸せも不幸も貴方となら·····。
ジロンは、自分なりに頑張って、白魔王を引き止めたり、少女の命を救う為の手助けをしたつもりだった...でも、彼にとっては、どうしようもない事だ。
ジロンは、去って行った仲間を思う度に後悔が胸を締め付ける。いつだって彼は、自分が傍観者だった事に気付かされた。彼女には、悪い事をした。彼は、それを直接、言えばいいのに、勇気を出せないでいた。
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赤い目をした巨大な奴の瞳がギラギラしていた。ジスタ達を睨み、今にも奴に襲われそうだ。ここは、大門の森で彼らは、抗薬剤をばら撒きに来たのだ。だが、彼らは、こんな事になるとは、予想が出来なかった。
「とんでもない奴を作ったみたいだね」ラブリーは、博士達に近づき、睨みをきかせていた。「何言ってるんだね。これは、野生の魔物だよ?決して、僕達がつくったんじゃない。」博士は、呆れたようにため息を吐いていた。
「そんな嘘、信じてると思ってるの?」ラブリーは、軽く笑い飛ばして、そう言っていた。「さぁ...それは、君達に任せるよ?一般庶民が言うことなんて、誰も信じない」「言ってくれるんだね。ジスタ!やるよ!」
ラブリーの問い掛けにジスタは、頷いた。そして彼は、杖を引き出した。
「グワァァァァァァン!」魔物の雄叫びが響きわたり、地面に拳を打ち付けただけで地響きを起こしていた。「はぁ...ファイアブレード」ジスタが杖を振るう度に炎は、舞い上がり、火傷を負うかと思ったが、魔物は、無傷だった。
「野生の魔物は、魔法に弱いと聞きましたが、違ったみたいですね」
「そんな諸説、あったかしら。あたしは、知らないわ」アイラは、悪戯に惚け、
首を傾げた。「貴方達は、魔物を捕まえて実験体にして色々な事をしてる聞いた事があります。もしかして...」ジスタは、彼女が惚けたのが気に食わないのか、険しい顔をしていた。「もしかして?そんな怪しいと思われる事してないわ。ささっとおやりなさい!012」アイラは、何故か魔物を番号で呼んでいた。それに人間が魔物に命令するなんて聞いたことが無い。彼らは、博士達を疑いの目で睨んでいた。
「君は、何を言ってるんだ!アイラ」
博士にそう言われ、アイラは、マズいと思ったのか、申しわけ無さそうにしていた。「あっ!ごめんなさいね」そんな主人達を魔物は、横目に次々と地響きを起こしていた。彼らは、何度も魔法をかけるが効かない。これじゃ、ジスタ達は、防御しか出来ない。
「もうバレたから言っとくけど...」アイラの言葉を遮り、ジスタは、こう言った。
「何も言ってませんよ!」
「うるさいわね!そいつは、魔法耐性が特化しているの。つまり、そういうことよ」アイラは、強い口調で怒鳴り散らした。
「そういう事とは、どういう事ですか?ちょっと分からないですね」ジスタは、何か、分からず、首を傾げていた。
「...はぁ?よっぽど、強いやつじゃないと効かないのよ!」アイラは、溜息に混じりにそう言うと、ジスタの表情に微笑みが見えた。
「はいはい。ラブリー?敵側さんがアドバイスくれたんでやりますよ」
ラブリーは、棒読み気味にこう返していた。「そうだね」
「我らに火の御加護を!!ファイアスフィア!」
ラブリーは、魔法を唱えた。魔物は、炎の球体に包まれ、悲痛な顔を浮かべていた。「火の神よ!我らに力を与えよ。ファイアインフォニティブレード!」ジスタは、魔法を唱えた。そして、無数に地面から炎を纏った剣が乱立して、魔物を突き刺していった。
「あぁー!?やられちゃったわ!」アイラは、頭を掻きむしり、唖然としていた。
「君のせいだ!なんで敵に塩をかける真似をするのかい?」博士は、軽く彼女の肩を叩き、怒りを露わにした。
「そ、そんなつもりは、なかったわ」
「本当、ポンコツなんですね。俺の口車に乗ってくれて良かったです。何とか、
ピンチも乗り越えられましたし...」ジスタは、最高の笑みを浮かべていた。
「こ、これで終わりと思ったら、大間違いよ!?博士!!」アイラは、魔物に鋭い注射器が魔物を刺した。そして、奴は、目が見開き、立ち上がっていた。
奴が1歩を踏み出す度に足音が響いて、今にも地面が揺れそうだ。
「うわっ...完全にずるいじゃないですか」ジスタは、完全に引いており、後ずさりしていた。「これで魔法は、効かないわ。つまり、そういう事よ」
アイラは、仁王立ちをして、ドヤ顔までしていた。
「へー、どういうことなんですか?」
「馬鹿ねぇ...物理攻撃しか効かないのよ?そんなの魔法使いじゃ無理でしょ」
アイラは、ジスタをコケにするような笑みを浮かべた。「またか!君は!?」
博士は、そう言うが、アイラ本人は、なんの事か、気づいてないみたいだ。
「なんの事よ?博士...」「····はぁ、出番ですよ」ジスタの背後には、きらびやかな髪をなびかせ、少女が現れた。
「...ルビア?なんであなたがここに...」アイラは、そう呟いていた。
─────────数時間前────
バァァァァァン!と国際ギルド局のドアを蹴り倒す音が聞こえた。
「ルビア!どうしたんだよ?ここは、国際ギルド局だ。そ、そんな事したら...」
彼女は、ジロンの言葉を無視して、彼に向かって、スタスタと歩き始めた。
───パァァァン!といい音が鳴り、ジロンは、この可愛らしい顔をしてるルビアに平手打ちをかまされたのだ。
「ジロンさん!場所なんて関係ありません!ラブリーさんに言われて分かったんです。貴方とは、真正面から向き合わないと分かり合えない!貴方は、偏見がありません。だから信じてます。これからも今も...」
「何をだよ。あの件か?その可能性は、分からない。君だって、命が危機に瀕されるかもしれないだぞ!むやみに手出しは、出来ないだろ!」彼らは、互いに見つめ合うが、ルビアは、ため息をつき始めた。「···貴方は、そんな事を心配してたんですか?」「そんな事ってなんだよ!大事な事だろ?」
「あたしは、ジロンさんとなら、不幸も幸せな事もどんな苦難でも受け止めます。貴方の迷ってる姿や世界を見てる姿も博士に似てるからです。博士は、研究に迷い、それでも偏見に立ち向かおうとした。」ルビアは、胸に手を当て、ゆっくりと落ち着いた表情でそう言っていた。
「俺は、そんな素晴らしい人間じゃない!ずっと傍観者だったんだ。それは、変われない」ジロンは、俯き、ルビアから目を逸らした。
「変われない?変わろうとしてないだけです。ジロンさんは、頑張り次第で何にでもなれるですよ!可能性どうだっていい。後でついて行くもんなんですから!」
彼女にジロンは、手をしっかりと握られ、今度は、解かせないとそう思う程に強く感じた。「ルビア、俺は、強くないんだ。でも、誰よりもこの世界が好きで守りたいって思ってる。権力にだって屈しない自分で居たかった。仲間がいた昔に戻りたい」 彼は、未来じゃなくて、常に過去を追いかけていた。
「過去には、戻れませんが、今なら間に合います。その仲間は、もう居ませんが、あたしがいます。だから、ジロンさんの後悔を晴らしに行きましょう」
彼は、ルビアに強引に手を引かれ、どこかに向かっていった。連れていかれた先は、大門の森だった。そこには、アイラと博士と何故か、ラブリーとジスタがいた。「拘束紐!!」ルビアは、巨大な魔物を縛り付けただが、すぐに解かれた。
「スカイシールド!」ジロンは、後からルビアの姿を追いかけ、壁となって立ちはばかった。そして、魔物の追撃を防いでいた。
「何のつもりかしら...ジロン?あたしは、あなたの上司よ?その行為は、反逆に
なるわ」アイラは、彼を睨んでいた。
「それでいい。俺は、覚悟を決めたんだ。ルビアと一緒に国際科学機関を壊すって...」ジロンは、杖を向け、アイラを睨み返した。
「随分なこと言ってくれるじゃない!おやりなさい!012」アイラの命令を合図に激しい雄叫びを上げた。魔物は、彼らに牙を剥き出した。
次回に続く。




