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僕は、君のヒーローになる。  作者: ブラックキャット
第1章繰り返す日常で変わる覚悟。
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救いたいという名のエゴ

    彼女は、この世界を好き?嫌いと聞かれたらNOと答えるだろう。

 誰でも愛国心という物があるとは、言えない。若干18歳のヒルアでも

 それは、分かっていた。

  不平不満は、みんなにもあるだろう。それは、言うか言わないの問題だと思う。

  ヒルアは、そういう風に考えていた。


「今日は、星が綺麗ね」と振り返ると叔母がいて、ヒルアに寄り添った。

  ベランダには、綺麗な夜空と星が見えた。

「おばあちゃん、追い出してよかったの?あの人達...」

  夜風が当たり、寒く、叔母がブランケットを被せてくれた。


「なんでそんな事を聞くんだい?あんな怪しい奴らにヒルアは、渡さんよ」


 叔母は、いつだってヒルアの味方になってくれる。彼女にとってそれは、心強いものだ。でもたまに不安になる。両親がいなくなったみたいにいつかいなくなる

 じゃないかって···。


「あたしねぇ、おばあちゃんの負担になるのは嫌だから。いつだって投げ出してもいいんだよ?あの人達の言う通り、10年も逃げきれたのは、奇跡だったかもしれない。でもこの先は、そんなの起こせるか分からない」

 頬が手の間に挟まれ、ヒルアは、目を丸くしていた。


「アンタの為だけじゃない。ヒルアを守ってきたのは同族存続の為でもある。

 あたしは、昔、何者だったか知っているかい?」


「──黒魔王の部下の天才薬剤師最年少ノアール」


「そうだ。ヒルア、話しただろう?小さい頃にこの世界は、真実を知らない。黒魔王は、反逆者で残酷、極まりない。かつて世界を滅亡させようとしたがそれは

 英雄と白魔王が阻止した。人は見た、聞いた事のみ真実だと思うがそれは違う」

  ヒルアは、思わず、言葉に出てしまった。


「見た世界だけが全てじゃない」


「 そうだ。あたしは、ねぇ100年以上前から世界が嫌いだった。変えたいとすら思っていた。でもそれは、叶わなかった。せめて、あんた、ヒルアだけ守りたい。息子達の約束を果たさなければ、あたしは、死にきれない」


「おばあちゃん···」

  抱きしめられた温もりで彼女は、泣きそうになった。でも、堪えたのは、叔母に弱さを見せたくなかったから...。


 ────プルデゥゥゥゥンと奇妙なベルが鳴り、ベッドから飛び起きて目が

 覚めた。ここはギルドの2階にあるメンバーの部屋だ。みんなでここで寝泊まりを

 している。


「起きなさい!ユージン、いつまで寝てるのよ」

  勢いよくドアを開け、声で分かるパトラだ。


「なんだよ、その変なやつは、」

 押す度に変な声を発して、より不気味に思わせる。


「あぁ、これ?押したら鳴る人形よ」

  パトラが持っていた。気持ち悪い人形は、ギロりとユージンの方を見ている。


「怖いんだよ!相変わらず、変な趣味してるよな」

  パトラが人形を押しっぱなしで話すものだからうるさくて仕方がない。

 いきなり起こされてユージンは、状況がよく分からなかった。


「やかましいな!パトラ。だいたい、なんで起こしに来たんだよ!いつもだったら、ほったからしだろ」


「マスターが呼んでるわよ」

  ベッドに寝転んでるユージンを見下して、彼女は、 ドヤ顔でそう言っていた。


「初めからそう言え!!」

  パトラの耳元で叫び散らした。パトラにウザそうな顔をされたがユージンは

 無視してマスターの部屋へと向かった。

 ドアの隙間からユミンが顔を覗かせていた。


「何か騒がしたかったけどユージン君は、反抗期なの?」


「違うわ、あたしがからかっただけ」笑い混じりに彼女は、そう呟いていた。


「そうなの?マスター。険しい顔してたけど大丈夫なのかな」

  ユミンは、ユージンの部屋をそろっと入ってきて、心配そうに首を傾げていた。


「さぁ?マスターが何考えてるか、分からないもの」


  ユミンは、「そうだね」と笑い混じりに頷いていた。ユージンは、階段を降り

  ホールには、マスターが居た。


「マスター、何か話があるってパトラから聞いたんだけど···」

  ゆっくりとユージンに近づいてきて、耳元で怒鳴り散らされる。


「逃がしたらしいな!!どういうことだ?」

 耳を掴まれユージンは痛そうにするがマスターは眉1つ、動かさない。


「嫌、パトラがそれでいいって言ったから。これからは守ればいい。当の本人は、求めてないだろ。俺達の助けを···」


「そうか。やはり、鉄壁だったか。叔母がいただろう?」


「そうだけど。知り合いなのか?」


「そうだ。だが俺は嫌われてる。救えなかったからなまだ生きていたんだな。まぁ安心ちゃ安心だな」


「そんなに強いのか?」


「別にそういう訳ではないが用心深いだよ。それに知識だって豊富だ。叔母がいる限り、国ごとというか、世界全体で動かないと捕まらないな。ヒルアは···」


「そこまでなんで逃げるんだよ」


「大事だからだ。ヒルアは、千武族の希望になるかもしれない。まぁそれは、お前らには、秘密だけどな。ユージン、保護じゃないぞ。仲間にならせるんだ。

 分かったな」


  マスターに去り際にユージンの肩を強く握った。これは、絶対だ、逆らうなど

 許されない。マスターは、そういう目をしていた。階段からユミンとパトラが聞き耳を立て、しゃがんでいた。


「何やってるんだよ」


「マスターに怒られてなかったじゃないの?パトラ」


「ふーん。つまんないねぇ、ユミン」


「何、目当てだったんだよ?ケンがいないからってハメ外し過ぎだろ」


「仕方ないじゃない。野郎共は、マスターとあんたしかいないんだから」

  パトラは、盗み聞きした事を悪びれず、言い訳までしていた。


「だからってなんで俺なんだよ」

  弄り倒される事に不満なユージンは、少しむくれていた。


「そりゃ弄りやすいからよ、何言ってるのよ」

 彼は、パトラのその言葉に呆れて「最低」としか出なかった。


 彼は、ずっと、自由に大して、こう思っていた。ユージンという男は、チャラい見た目のわりに考えることは真面目なのだ。 逆らなければこの世界は、平和なの

かもしれない。でもそこには、自由は、無く鳥は、飛べるがそれだけにリスクが

ある。飛び立ちたいのなら、覚悟を決めなければいかない。

 この世界に歯向かう事を...これがユージンの考えでそう思っていた。子供の頃

からずっと...。


 ***********


    朝は、晴れていたのに、今は、雨が降っていた。少女は、傘も差さずに

1人で立っていた。


「ヒルア、風邪ひくぞ」ユージンの顔を見るなり、険しい顔を見せた。そう、

ユージンがいる場所はヒルアの家の近くの森だ。


「なんであなたがここにいるの?おばあちゃんに昨日、追い出されたでしょ」

 ヒルアは、ゆっくりとユージンは、近づいていた。


「そうだな。君は、この狭い世界の中生きるのか?それが聞きたくて、来たんだ」

 ユージンにそう尋ねられるとヒルアは、すぐに目を逸らし、空を見ていた。


「余計なお世話ね。あたしは広い世界では、生きれないの。飛べない鳥よ、嫌い、この世界が嫌い」


「飛べないのなら、今出来ることをしよう!嫌いならこの世界を好きになる努力をしようぜ。どんな形でも刃向かってでも、自由を手に入れる」


「──綺麗事ね、雷網,(らいこう)」

  ヒルアは、言霊術(げんれいじゅつ)で繰り出した網をいくつもの木に括り付けていた。

その網は強力な電流を纏い綺麗に輝いていた。


「君は、綺麗だ。儚げでどこか切ない。嫌いなら俺が好きにならせるよ。だから、希望を捨てないで...」


「お節介な奴ね。それと今日でさらばだわ」

 ヒルアが繰り出した糸に絡まった木が次々と倒れ、ユージンの周りは、真っ暗になった。



 次回に続く。





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