ねじ伏せられた正義の数。
「 あたしが正義なの」と幾度なく聞かされた言葉は、ラブリーを縛り付け、動きにくくさせた。それが恐怖なのか、それともただ臆病者だったのか、今になってもどちらかもラブリーには、分からなかった。ただ1回、逆らったというよりかは、ラブリーは、民の命を守りたかっただけだった...それだけだったのに...白魔王様のプライドと名誉の為に捨てなきゃいけない命ってなんなのだろう。
ラブリーは、そう疑問に思い、口にしてしまった。感情の衝動に駆られた彼女は、エリートの道に外れてしまった。でも、ラブリーは、それに後悔は、無かった。それは、この思いが生まれたからだ。国際ギルド局を変える。そんな夢は、果たせなかったが、今度こそ変えるだけじゃ、変わらない。もう壊すしかない。
ラブリーの心情を表すように空が青く、曇りさえもなかった。
「 貴方は、ジロンさんと先日、話してましたよね?ジロンさんなら、今、任務中ですよ」ルビアに話しかけられ、ラブリーは、振り返った。
「 あ、ありがとう」ラブリーは、国際ギルド局の玄関前にもたれ掛かり、ジロンを待っていた。ジロンの部下だろう。とっても美人でお人形さんみたいだ。「 良かったら、ジロンが帰ってきた時にでも、ラブリーさんが来たとお伝えした方が宜しいですか?」ルビアが微笑みかけると、ラブリーは、手を握った。
「 よく、ラブリーの事話してるみたいだね?じゃあお願いしていいかな。貴方の名前、教えて貰っていい?」彼女がそう言うと、ルビアは、コクリと頷いた。
「 ルビアです、承りました。ラブリーさん」互いに軽く会釈を交わし、国際ギルド局を後にした。
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自分は、こんな事をしたいが為に正義を振りかざしてるじゃない、権力の前にどれだけ無力なのだろう。ジロンは、身を持って、それを実感していた。ふと、彼は、民の為に、去った仲間の事を思い出していた。ジロンは、それをただ見ていただけだった。この世界で自分に何が出来るのだろう。ただ、そう考えるしか道が、なかった。「 どうしたのですか?浮かない顔して例の女性がさっき、来ていましたよ」ルビアは、ジロンが座っているソファの隣に寄り添った。
「 嫌、なんでもないさ。あいつの事か、分かった。ルビア、俺は、もう正義が何か分からない。」
ジロンは、そう俯くと、ルビアは、彼の肩を優しく触れた。
「 あたしも分かりません。ですが、ジロンさん。貴方は、あたしに色んな事を教えてくれました。だから、あたしと貴方なりの正義を探しましょう」
ルビアは、にこやかにそう語りかけた。
「 それもいいかもしれんな。ルビア、ありがとう。じゃあ、行ってくるな」
ジロンは、ソファから、立ち上がり、ラブリーの所へと向かおうとしていた。
「 はい、いってらしゃいです。ジロン様」
ジロンは、数メートルの離れた所でルビアの笑顔が凄まじく冷めた顔をしてた気がした。まぁ、気のせいだろう。彼は、そう思い、国際ギルド局を後にした。
──────ドンッと言う音がして、激しく、壁に押し付けられた。
「 あ、あのラブリーさん?何か気に食わない事、しましたっけ?」何故か、ジロンは、ラブリーに路地裏に連れ込まれていた。そしたら、さっき、彼女が殴った壁の衝撃の影響でヒビまで入り、ジロンは、足が震えて、仕方なかった。
「 なんで、何も教えてくれないの!あんな可愛い彼女が居るなんて!?」
ラブリーにそう肩を揺らされ、ジロンは、首を激しく横に振った。
「違います。ラブリーさん。」
「 あら、そうなの?」ラブリーは、真顔で首を傾げた。
「 そっちかよ!彼女じゃねぇよ!びっくりしたわ。驚かせるなよ」
ラブリーを軽く、突き飛ばし、壁ドンから、ジロンは、逃れた。
「 なーんだ、つまんないの。本題なんだけど、あの彼女さんは、何者なの?」
「 何を勘づいてるか知らんが、森で倒れてた彼女を助けただけだ。それ以上何も無い。」ジロンがそう言うと、ラブリーは、静かに問いただした。
「 そっか、ジロン君は、どう思うの?魔物の増加、変死体、異常な凶暴化···」
「···それをどうにかするのが、国際ギルドの仕事だ」
ジロンは、そうキッパリと言ったが、ラブリーは、ため息を混じりに声を荒らげた。「 あぁ···相変わらず、今も変わらないだね。ねぇ少しは、疑わないの?白魔王の事。だっておかしいでしょ。魔物は、より美味い獲物を求めるの。それが人間だって有り得るだよ。だから、民の命だって危ぶまれる。彼らは、街や都市を襲うかもしれない。それは、あの人なら、わかってるはず···」
「 部外者の人間が口に出すなよ!自分の正義を貫く。それは、あの人を言うことを聞かなければ、組織には、居られない。」ジロンのその言葉にラブリーは、憤りを覚えた。「 それが、ジロン君の正義なの?あの人の言うことを聞いたって、誰も救えないよ。いつか、あの人は、自滅するよ」
「 あの人は、絶対的な存在だ。そんな事が、あるはずないだろ」
ジロンの言葉にラブリーは、呆れ、こう言い放った。「 それは、白魔王しかいないからでしょ。ジロン君、あたしがこの組織を壊してあげる。だから、その時は、敵かもしれないね。首を洗って、待ってて...」
いつから、彼女の背中が遠くに見えてしまったのだろう。ジロンは、あの時と同じようにただ、見つめてるだけだった。
「 あっ、これ、返しておくよ。追加に情報、入れといたよ。」
ラブリーにUSBを投げられ、ジロンは、受け取った。いつの間に奪われていたのだろう。彼が、そう考えを巡らせてるうちに彼女は、去っていた。
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毒々しい色をした洞窟には、オークの死体がゴロゴロと転がっていた。
「 ”今回は”、失敗したな、素質があるみたいだな」
彼が見つめていたオークは、身体が紫色に変色して、目がまっ赤になっていた。
「 博士、いいの?このまま、ほっておいて」
彼の付き添いらしき女性は、仁王立ちして、オークを忌み嫌った目で睨んでいた。「 別にいいさ。俺達には、強い味方がいるからな!それに安全は、守られてるし、別にいいじゃないか?」「 そうね。じゃあ、帰りましょうか」白衣を着た男女は、すぐさま、洞窟を後にした。
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翌日、パトラと、ケンは、薄暗い洞窟に来ていた。泥臭い匂いとジメジメした空気が彼らを不快に思わせた。
「 遺跡の次は、洞窟か?オークがまた、突然変異したらしいぜ」
彼は、魔物がいない、視線を散らせ、警戒していた。
「 ケン、それは、マスター情報でしょ。もうちょっと、具体的に言って欲しいね」
パトラは、ため息を漏らし、洞窟を見て漁っていた。
「 パトラ、そりゃ見てからのお楽しみだ。」
ケンがそう語りかけると、パトラは、不愉快に満ちた表情をしていた。
「 そんなの嫌よ。だいたいねぇ、不気味なの。なにか、出そうじゃない?」
パトラは、疑い深く、周辺を見て回っていた。彼らは、ジスタに言われ、洞窟に魔物の突然変異の調査の為、ホワイト洞窟に出向いた。
「 罠とかある訳、ないだろ。パトラ、用心し過ぎだぜ」ジロンは、そう軽く笑うと、何故か、彼女は、激しく、震えていた。「 ...あっ、あっ...」と途切れ、途切れに驚きのあまり声が裏返っていた。「 どうしたんた」とケンは、パトラに近づいた。「 ケ、ケン?ゾンビよ」
パトラが指さした先には、ゆっくりとノラりとオークがやってきた。でも、普通の奴らとは、違うみたいだ。青い顔したオークが皮膚が干からびて、骨が剥き出しになっていた。完全にゾンビだ。彼らは、そう思い、後ずさった。
「 怯える必要は、ないだろ。化け物でも、どんな敵だってねじ伏せてやるぜ」
ケンは、双剣を奴らに向けた。
(次回に続く。)




