遺跡
跡形さえも何も無かったのだ。あれだけ、落ちてた銃弾も血痕すらもそこにあった全てが消えていた。ここは、確か、ルビアが倒れていた森のはずなのに。ジロンは、ルビアと一緒にホワイト森林を尋ねていた。
「これはどういうことだ?ルビア」
「知りません。あたしには、わからないです」
ルビアは、首を横に振り、冷めた表情をしていた。
「まぁそうだよな」ジロンは、無表情で返されて分かったが、この森で彼女は、倒れて、気を失っていたんだ。何も覚えてないのは、当たり前だろう。
「ジロンさん?あなたは、何故、あたしを助けたんですか?」
「君が倒れていたからだろう。助けるのは、当然だ。」
「そうですか。あなたがあたしを救って、何か利益があるんですか?国際ギルド局の者は、皆、命令されたこと以外、何もやらないって噂ですよ」
ルビアは、キッパリと毅然とした態度でそう言っていた。
「お前ってそんなに饒舌に喋るだな。その方が組織に気に入られるからな。でも俺は、違う。民を助け、救うのが使命だ。」ジロンは、ルビアに熱い視線を注ぐが、冷めた目で睨み返された。
「ジロンさんは、熱い人なんですね」
「よくそう言われるよ。ほんとに俺は、国際ギルド局に居るべき人間だろうか、
迷う時があるよ」
「さぁそれは、ジロンさんが決める事ですから、あたしには、分からないです」
ルビアの答えに頷き、ジロン達は、森を出ていた。
****
薄暗く、排水溝の似た匂いが漂っていた。気持ち悪さが混み上がる。ここは、遺跡で多くのオークが生息していた。
「ほんと臭いわね。ケンは、平気なの?」
パトラは、鼻を押さえるが、異臭から逃れられない。
「な訳ないだろ、パトラ。遺跡でオーク退治なんて珍しいから来たが、後悔してる。」ケンは、眉間に皺を寄せ、唾を吐いていた。
「今更よ。もう来たんだから、さっさと倒して、ギルドに帰るわよ」
「はぁ...それにしてもここは、ジスタにうってつけだな」
ケンとパトラが来ていたのは、ホワイト遺跡だ。
「遺跡オタクだからね。残念ながら、ジスタは、別件で忙しいのよ」
パトラ達は、遺跡を歩き回っていたが、何も見当たらない。
「魔物の大幅増加か?ただの繁殖期だろ。」
遺跡では、オークが大量出現して、研究者や冒険者が困らされている。
「それが問題なのよ!あたしが言ってるのは、そういう時期でもないのに、可笑しいでしょ!」パトラは、ケンの耳元で声を張り上げた。
「うるせぇな。生物上、命が危機を瀕した時に子孫存続の念が強くなるじゃねぇの?」ケンは、口からでまかせに適当な事を言っていた。
「適当な事を言ってんじゃないわよ」
パトラの声に反応して、バタッ!バタン!片棒を引き下ろす音が聞こえ、どんどん近づいて来た。そう...奴らだ。
「相変わらず、キモイ顔面してるのね」
パトラは、咄嗟に片棒を握り、オークを背負い投げしたが倒れた状態で足を掴まれた。「オーク、お前に欲情してるじゃねぇの?」
ケンの言う通り、オークは、ヨダレを垂らし、吐息さえも漏らしていた。
「そんなの嬉しくないわよ!!」
パトラは、オークを思い切り蹴りあげ、回転して、石にぶつかり、倒れ込んだ。
「悲惨だな。お前知ってるか?女は、オークに恐れるものだぜ」
ケンは、倒れたオークを棒で突っついていた。
「知ってるわよ。大きいし、見た目が気持ち悪い。報酬が高いけど、嫌よね」
パトラは、顔を青白くさせ、鳥肌さえも立っていた。
「そうだな。そんな奴によく蹴り技が出来たな」
ケンは、パトラの背中をそっと撫でていた。
「慣れてるのよ。出たのは、1人だけね。オークは、集団で生活するのよ。近くに絶対にいるわ」パトラ達は、遺跡の大通りに出て、先に広場が見えた。
「めっちゃいるじゃねぇか。俺だけ突っ込んで来るから。お前は、弓でも打ってろ」「それ、大丈夫なの。集団リンチに遭うわよ?それともそういう嗜好なの?」
挑発的な瞳で見つめられ、ケンは、心底、嫌そうな顔をされた。
「そんな趣味は、ねぇよ。痙攣を起こさせるだよ。分かったか!パトラ」
彼女は、耳元で叫ばれ、不快な顔をしていた。
「分かったわ。さぁ行くわよ、ケン」パトラの問いにケンは、頷いた。
─────皆、広場に集まり、談笑していた。ここは、よく遺跡研究者や魔法が使いが来るのだ。可愛い娘や豊満な女性。思い浮かべるだけでヨダレが出てしまう。だが襲ったら返り討ちにあってしまう。だから、オーク達だけを集まって策を練っている所だった。
「おいおい。欲求不満かよ?同族ですればいいものを気持ちわりぃな」ケンは、何本もの剣を投げ、風を起こしていた。なにかブツブツ喋っているが、聞こえない。仲間のオークが急いで応戦がするが、剣の餌食になり切り刻んでしまう。徐々に周りのオークは、人間を恐れ、逃げ惑うが同族オークの前に立ちはばかったのは、パトラだ。仲間のオークは、嘲笑い、ジリジリと近づいていた。
こんなに囲まれちゃ、女が持っている弓じゃ太刀打ち出来ない。パトラに彼ら、オークは、虜だった。「気持ち悪いわね!!もう嫌!痺矢!」
パトラが放った矢は、1本の矢が無限に広がり、仲間のオークが続々と打たれ倒れていた。「俺を忘れるなよ、魔物」ケンは、振り向きざまに剣を刺され、命を落とした。オークを倒し、そこに座り込んだ。
「瓶だらけだな、薬品か?」
変な色をした液体瓶がそこら辺に散らばっていた。
「知らないわよ。気になるなら、ギルドに持ち帰って、ヒルアに調べてもらったら、いいじゃない」パトラは、瓶をリュックに入れ、すぐさま、閉まった。
「そうだな。じゃあ、早く帰ろうぜ」
ケンは、パトラに手を差し伸べ、遺跡を後にした。
「そうね。あたしは、早く寝るわよ。ケンは、ヒルアに薬品分析してもらいなさい」ケンは、「分かってるさ」と呟いた。
*****
翌朝、パトラとケンは、ヒルアにギルドの解剖室で薬品分析をしてもらっていた。「生物の繁殖を推進させる薬だね。副作用は、凶暴になり、人を襲う」
「外部の者が飲ませたか、それとも盗んだのか」
遺跡では、暗くてよく見えなかったが、液体の色は、紫色で毒々しく感じてしまい、ケンは、顔をしかめてしまう。
「さぁね。でもこれから、これを見つけたら、回収した方がいいね、それにこれは、その辺の薬草じゃ作れない。珍しいものばかり使ってるよ。作った奴は、どっかの国機関って考えた方が早いかもね」パトラは、ため息を漏らしていた。
「ヒルア?これは、やばいかもな。政府側が手を回してる事も有り得るだよな」
ケンは、ヒルアにそう尋ねるが、首を横に振っていた。
「分からない。だってこれをやる意味がないし、利益が生じるとは、思えないの」
「またテロ集団か?」ケンは、そう聞くが、パトラに真剣な面持ちでこう言っていた。「その可能性は、捨てきれないけど、注意して。これ程の薬を作れるのよ。
どんな化け物だって有り得るよわ。ケン」
「その時は、その時だ、何とかするさ」
ケンの問いかけに心配そうに彼女は、頷いた。
「その時は、協力するよ。それに何かありそうだしね」
ヒルアは、意味深にそう呟いた。
次回に続く。




