謎は、深く沈む。
あの爆弾から、ヒルア達は、無事に逃げれたが、何も証拠も持ち帰れなかった。
例え、引き戻ったとしても証拠は、消されてるかもしれない。
「なんだっただろうね。ユージン」
ヒルアは、慌てて、走ったのか、息を切らしていた。
「さぁな。煙のせいで周りが見えなかったからな。犯人が誰か、分からないな」
ユージンは、何故か、狼の死体を抱え込んでいた。
「それは、そうだけど、あの状況でどうやって、それ持ち込んだの?」
彼が背負っていた狼は、腐敗して、異臭を放っていた。
「あぁ、狼のことか?咄嗟にな。何も持って帰らなかったら、何も分からないだろ」ユージンは、あの爆発から、毒に感染した狼を1匹背負って、逃げ出したのだ。「凄いね。あたしには、そんな余裕すら無かったよ」
ヒルアは、逃げるのに、必死でそれ所じゃなかった。死ぬと思ったからだ。
「褒めてるのか?それ」ヒルアが頬を突っつかれ、不機嫌な顔をすると青年は、
笑っていた。ギルドに着き、ジスタが帰ってくるのを待っていた。
「なにそれ!気持ち悪っ!?ホヤホヤじゃない」
解剖台の上の狼を見るなり、パトラは、不快に満ちて、顔が青くなっていく...。
「帝国の間に国境に森があるだろ?そこに狼の(ウルフ)死体が転がってた」
ユージンは、パトラに事情を説明していたが、死体に圧倒され、それ所では、
無い。「それで持って帰ってきた訳?完全に毒に侵されてるじゃない。目が赤いわ」パトラは、携帯ライトを片手に狼の瞳孔を確かめていた。
「そうなんだよ。ヒルア、体内にある毒性なら調べられるじゃないか。詳しいだろ?」ヒルアは、祖母の影響で毒に詳しいだろうから、きっと何か分かるはずだ。
「調べられるけど、道具がない。毒防御の手袋じゃないとあたしが毒に侵されるよ」ヒルアの言う通り、狼の体は、外観だけで分かるように紫色に変色していた。
「あっ、そっか。体の内部を調べるもんな。すまないな。俺、そういうの詳しくないんだ。」ユージンは、申し訳そうに、ヒルアに謝っていた。
「ユージン、女の子を危ない目であわせちゃダメよ。それとも、毒に侵されたヒルアに口移しされたいの?」
パトラは、挑発するような瞳でユージンを完全にからかっていた。
「な!何を言ってるんだ。パトラ!そういう訳じゃない」ユージンは、唾を飛ばしながらも必死に否定したが、パトラは、嘲笑っていた。
「何、照れてるのよ。ユージン、からかっただけでしょ」パトラにそう言われ、
ユージンは、右側にある鏡に気づいた。ふと、それを見ると、自分の顔は、まっ赤になっていた。「ヒ、ヒルア、違うからな!」
「何がよ、ユージン」ヒルアは、眉1つも動かさず、首を傾げた。
しらばくすると、ギルドの鐘が鳴り、ジスタが帰ってきていた。
■□■□■
「騒がしいですね。何があったんですか?」
「帰ってきたか。早速なんだが、お願いしていいか?」
この気まずい空気に無関係な奴が入ったら、一気に変わるはずだ。ユージンは、そう思い、ジスタに駆け寄ったが、険しい顔をされた。
「貴方は、犬ですか?調べるのは、いいですが、毒なら、ヒルアの方が詳しいでしょう」「調べる道具がないの」解剖台があるだけで、道具は、ジスタが持っていた。「そうですか。俺が道具持ってますので、毒の成分分析をお願いします。」
ヒルアは、コクリと頷き、手袋をはめていた。
「ユージン、取られちゃったわね」
パトラは、ユージンの肩を揺らすが、すぐさま、振り払われた。
「何がだよ!意味が分からないぞ。パトラ」
彼らが、騒いでる間にヒルアとジスタは、毒がへばりついた狼の心臓を取り出していた。「確実に心臓を狙ったみたいですね。結構、強い毒ですか?ヒルア」
グチュグチュという音が聞こえ、内部の毒は、沸騰しており、ドロドロとしていた。「そうだね、魔物のサリンの毒だね。襲われたにしても傷が深すぎる。人間がやったに近いね」
「そうですね。サリンなら傷が浅いですし、外傷は、無いはずです。毒の炎と言ってましたね。サリンの毒と炎をくっ付けたですかね?」
「そうかもしれないね。魔法使いの仕業だね」
ヒルアは、狼の体に優しく、撫で、「切傷塞」と唱え、メスによって切り裂かれた腹は、塞がれた。
「魔法なら、こんなのお得意様ですからね。ユージン!分析は、終わりましたよ」
ジスタに大声で呼ばれると、ユージンは、肩をビクリとさせた。
「お、おう。ジスタ、もう終わったのか」ユージンは、暇すぎたのか、完全に夢の世界へと連れて行かれていた。つまり、彼は、寝ていたのだ。
「立って、居眠りしないでください。もう、仕方ない人ですね。毒で目を覚ましますか?」ジスタは、手袋にへばりついた毒をユージンの顔に当てようとしていた。
「すいません!ジスタ様、許してくだせぇ」
「それだけは、嫌だ」とユージンは、平謝りするが、ジスタは、呆れたのか、狼の死体処理に戻っていった。
「容赦がないわね。それにしても狼をこんなにも殺す必要があったのかしら」
パトラは、ヒルア達が撮った写真を拾いあげ、低い声でそう呟いた。
「さぁ、知りませんよ。ジロンにその件、聞いてみたんですが、ギルド局は、関係してないみたいですよ。今、調査中ですって...。」
ジスタは、首を横に振り、残念がっていった。
「ジロンって国際ギルド局の奴よね。信用していいの?」
パトラは、ジスタを疑いの目で睨んでいた。
「根っからのお人好しですから、警戒しなくて大丈夫ですよ。国際ギルド局に残ってる唯一の良心です。」
ジスタは、そう、にこやかに答えた。
「ふーん、ジスタがそう言うなら、大丈夫ね。愛しのラブリーちゃんは、どうしたの?」パトラの言う通りだ。ジスタの横にいつも居るラブリーが居ない。
「そのジロンに色仕掛けしてる所ですよ。色々と吐かせるです」
彼は、悪い笑みを浮かべていた。
「ジスタ君、悪い顔してるわね。まぁいいけど、嫉妬とかしないの?」
「別に恋仲でもありませんから、そんなのしませんよ」パトラは、そう尋ねられ、ジスタの声が震えていた。
「心臓、握りつぶさないでよ。ジスタ!大事な奴だから、やめてよね」
「あぁ...すいません。ヒルア」ジスタは、心臓を力一杯に握りすぎて、今にも爆発しそうだ。「からかいすぎだぞ。パトラ」
ユージンは、パトラに腕で肩を突っつくが、「面白いからいいじゃない」と呟いていた。「そう言う問題でもないだろ」
*****
「それじゃ、なんにも分からないって事?ジロン君、嘘ついてない?」
ジロンは、奴に路地裏に連れ込まれ、はたから見たら、迫られてるように見える。だが、これは、脅迫だ。
「ラブリー、嘘をついて、俺になんの利益がある?」
ジロンは、彼女に壁ドンをされ、ナイフを首筋に擦り付けられた。
「だって、連れて帰ってきたのは、女の子だけって、何かのジョークだって思ったよ。どうするつもりなの。身元は、わかってるの?」
「分かってないさ。このまま、ギルドに在籍させるつもりだ」
「白魔王様が何言っても知らないよ?魔法使いみたいだけど、なんか怪しいでしょ。用心しときなよ」ジロンの顔に触れていたナイフは、離れ、ラブリーは、去っていた。一人になった彼は、一息をつき、心臓のドキドキがいろんな意味で止まらず、遠い空を見ていた。
次回に続く。




