暗闇の行く末
背後から、銃声が聞こえたが、決して、振り返っては、いけない。彼女は、奴の恐怖に蝕まわれてしまうからだ。”逃げなきゃ”とその言葉だけが彼女の脳裏に過ぎった。バン!と彼女は、道端に落ちてあった石に躓き、盛大にコケてしまった。
「酷い間抜けだな。お前は、心がない奴なんだ。感情なんて持ったらダメなんだよ」奴の言ってることが彼女には、分からなかった。後退りして、何とか、その銃口から逃れようとしたが、それは、叶わなかった。
「喋れないのか?ははっ!!そうだよな?お前は、」
ねぇ、お父様、あたしは、なんの為に育てられたんですか?こんな奴の道具なんかなりたくない。それが彼女にとってのただ一つの願いだった。
「奴の手駒には、なりたくない。」と彼女は、小さく呟いた。
「あたしは、あなたの道具なんかじゃない。ここに武器だってある。反逆だって出来るのよ!」彼女の傍には、木の棒が転がっていた。
「そんな、木の棒で何が出来る?言ってみろよ」
「形、姿がなんだろうが、なんだって変えられる。必要なのは、勇気と覚悟」
彼女は、奴に対して、強い眼光を放った。
「お前は、何を言ってるんだ?」
奴は、怪訝な表情をしていた。いつの間にか、彼女が持っていた木の棒が剣に変化していた。奴の馬鹿にしたような笑い声が聞こえ、不快に覚えた。
「ほう、あの親父にそんな所まで仕込まれてたのか凄いけどよ。その力は、うちのボスが気に入らない。すぐさま、捨てろ」
奴の首筋に刃が触れ、同時に額に銃を当てられた。
「これは、あの人がくれた力、失いたくない。だから、あたしは、ここを離れ···」
──────バンッ!バンッ!銃弾を脳に撃ち込まれた。彼女は、目を瞑った瞬間に見た奴の顔は、冷酷で残虐極まりないものだった···。
「離れるも、なにも、お前は、もう用済みだ。調べ尽くしたしな。じゃあな」
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国境の間に森があり、ジロンは、そこにいた。大型の狼がいるって聞いたがどこにもいない?どういうことだろう。ジロンは、そう思い、周辺を見回していた。この森は、整備すら、ろくにされてない。草花が伸びきり、それは、人すら隠していた。「ひどい傷だ。生きてるか?」ジロンは、女性の体を揺らし、心臓が動いてるかどうか確かめるが、何か違和感を感じた。何も音がしない。死んでいるのか。ジロンは、顔を険しくさせた。
「あの、女性に対して、その触り方は、セクハラですよ?」ジロンの手を掴み、気を失ってたはずの彼女は、起き上がっていた。怪我していたはずなのに···。
「なんで、立ってるんだよ。無理すんな!回復してやるから、待ってろ」彼女は、額が血だらけで、脳には、銃弾が埋まっていた。
「お前、人に恨まれることでもしたのか?」
ジロンは、彼女をひとまず、座らせ、魔法陣の範囲で回復魔法を施していた。「あなたに会った以前の記憶は、ありません。なので、分かりません」
彼女は、首を横に振っていた。
「記憶喪失か?名前は、わかるか?」ジロンは、そう、優しく尋ねていた。
「名前ですか?ルビアです。」
「分かることは、それだけか?」ジロンの問いかけにルビアは、頷いた。
「はい。貴方は、誰なのですか?」
「ジロンだ。ルビアよろしくな!行き場も無さそうだし俺の職場で働くか?」
彼は、冗談で言って見せたが、彼女は、「良い」と言っていた。
「はい。断る理由もないですから。とりあえず、この森を出ませんか?」
「それもそうだな。今日からパートナーだな!ひとまず、ギルド局に着いたら、休憩だ」ジロンに肩を叩かれ、すぐさまルビアは、振り返った。
「任務じゃないんですか?」ルビアは、首を傾げ、そう尋ねた。
「今は、治ったが、さっきまで重傷を負ってたんだぞ。休むのは、当たり前だろ」ルビアに目を丸くされたが、ジロンは、理由が分からなかった。
不思議な女性との出会いが自分の人生を左右するなんて、ジロンは、この時は、夢にも思わなかった。
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閑静な街並みを抜けていくと、所狭しと店が沢山建てられていた。
「ヒルア、任務に行く前にまずは、準備だ」
ユージンとヒルアは、商店街をゆっくりとした足取りで向かっていた。
「嫌、それは、分かってるよ。あんな、ざっくりしたメールでよく分かってないんだけど、今の事の状況を説明して欲しい。」ユージンは、ヒルアと任務に行くことが決まっていたが。簡潔なメールしか送っていなかった。その内容がこれだ。
(明日、集合は、ワープロでよろしく☆)と、ヒルアにとっては、これだけじゃ、
訳が分からないだろう。
「あぁ...そうだ、説明するよ。帝国の国境に森があるの知ってるか?」
ユージンは、端末のマップアプリをタップして、地図に載ってあった目的他を指さした。「知ってるけど、それがどうしたの?ユージン」
「そこで銃声が聞こえたんだ。でも村長は、そこの森は、役人とクエストを受けた冒険者しか入らせないようにしてる侵入禁止区域だ。まぁ、魔物がいっぱい居て、一般人を入らせない為なんだけどな。」
「それ、普通に入国する時は、どうするのよ」
「事前に届けを出してたら、国境にいる門番人が門まで送ってくれるらしいよ」
「そうなのね。銃声が聞こえた事は、魔物を殺したかもしくは、人を殺しかどっちかだよね?」
「今からそれを確かめに行くって訳だ。そして俺は、今、マジカルアイテムが無い」ユージンとヒルアの目の前には、道具屋が建てられていた。
「無いと使えないだっけ?」
ヒルアは、ユージン本人からは、聞いた事は、ないが、ジスタから聞いていた。彼は、魔法が使えないと...。
「無くても使えるだけど、失敗リスクを減らそうと思うとなぁ。これが必須になる。ヒルア、道具屋に行くけど何かいるか?」
「ん?じゃあ、太い網かな」
「言霊術で何かするつもりなんだな?じゃあ買ってくるさ」
ユージンは、頷き、道具屋へと入っていた。彼の買い物が済んだところで例の森へと向かった。煙ったい匂いと大量にそこら中に狼が死んでいた。
「凄いエグイな。これは、見事に証拠隠滅だな」
周辺は、燃やされ、ユージンは、あまりの異臭に鼻を押さえていた。
「そうだね。銃声が聞こえてたのなら、銃弾が転がってるはずよ。でも何も無い。」ヒルアは、しゃがみこんで、銃弾を探したが、見当たらない。
「そうだな。さっき買った網で調べてみるか」
ヒルアは、コクリと頷いた。周辺に網を張り巡らせ、「解析網と呟いた。
「完全に消されてるね。狼の事しか分からないけど、毒の炎で燃やされたみたい。恐らく魔法だとは、思うけど、体の内部まで、解剖しないと調べられないね」
ヒルアは、ウルフに軽く触れていた。
「そうか。じゃあ、ジスタに頼もう。あいつは、そういうのに、慣れてるからな」
ユージンは、そう冗談交じりに微笑んでいた。
「国際ギルド局での経験ってやつだね」
「そうだな、現場検証でこれで終いだな」
ユージンとヒルアは、森を出ようとして、足を進めたが、なにか、物音がした。「ゲッホ」と奇妙な音が聞こえた。狼は、口から青いバッジを吐き出した。
「ウエッ!?えっと、8398?どういう事だ?」
「ん?あたしも分からない、ジスタに調べて貰おっか...。」彼らの足元にボールが転がり、隙間からは、毒ガスが放出された。
「ヒルア!逃げるぞ!!」ヒルアは、ユージンに手を引かれ、その場から急いで去っていく。ユージンは、必死で分からなかったが、遠くから、彼ら達を見てる者がいた。とっても恐ろしくて、それに気づいたヒルアは、目を合わせられなかった。
逃げ切れたのに、彼女は、胸騒ぎが止まらないのか、何故か、分からなかった。
次回につづく。




