悪魔の魔法使い。
「自分だけが見えてる世界が全てだと思うな」
ジスタが聞いたその言葉は、飽きる程に繰り返された。聞かなくなったのは、いつからだろう。もう蒸し返すのもう面倒だし無意味だ。彼は、そう思った。
でも、この言葉は、ハンネスがきっと似合うはずだ。彼から見た世界では、きっと、ジスタは、血だらけだ。当の本人からしたら、痛みなんて感じない。
「つまりは、そういうことです。ハンネスさん」
ジスタは、ハンネスが聞こえないように小さく呟いた。
ハンネスは、ずっと夢にまで見てきた。魔法使いの奴らを切り裂き、串刺しに出来る。この状況を...。
ハンネスの心は、満たされ、歓喜に溢れてる。彼は、ゆっくりと歩み寄り、横たわった死体に触れた。「あら、そういう趣味のお持ちですか?気持ち悪いですね」
ハンネスの背後からは、見覚えある声に聞こえた。彼の体が震え上がった。まさか生きていたのか?なぜだ、確かに自らの矢で貫いたはずなのに。その事ばかりに心は、囚われていた。
「振り向いてくださいよ、それとも怖いですか?あなたは、こう思ってますね?なんで、生きてるのか、普通の人間だったら、即死ですよね。それは、偽死体なんですよ。肉体が2つある訳もないですから」
目の前にある死体は、偽物だ。背後にいるやつが本物って事なのだろう。ということは、ジスタは、ハンネスの至近距離にいる。「猛風円!!!」ハンネスは、そう唱えた。猛烈な風が吹き荒れ、剣を振るった。これなら避けられないとハンネスは、そう確信した。「何度言えば分かるんですか?瞬間移動すれば、こんなもの、避けられますよ」ジスタは、ハンネスの耳元に囁き、振り向くと彼は、そこにいない。ジスタをどこだと探すが、どこも見当たらない。ハンネスは、押し寄せてくる恐怖で、手が震え、次の策へと動かさなければいけないのに何も出来ないでいた。
「敵の居場所が分からないのなら、おびき出すか、全方向に攻撃を仕掛けるかですよ!仲間の命が危ぶまれますが...」突如、ジスタは、ハンネスの背後に現れ、ナイフが突き刺さった。
「そ、そんな事が出来る訳が無い!お前は、仲間を巻き込んで、攻撃できるのかよ」ハンネスは、血だらけになりながらも、声を張り上げた。
「出来ますよ、信じていますから、仲間とは、そういうものじゃないですか?まぁ死に際に言っても無駄ですが...。」
ジスタは、ハンネスの事を完全に嘲笑っていた。
「知らねぇよ!勝手なお前の価値観だろ?お前らの理想が共存って言うんなら、
千武族にあんだけ酷いことをしておきながら、仲良く一緒暮らせって、可笑しくないか?」ハンネスは、血に染まった腹部を抱え、怒鳴り上げた。
「言っておきますが、10年前の出来事など、国民は、知らないですよ。その百年前は、黒魔王は、魔法族虐殺の首謀者として語られてますよ。何か間違いがありましたか?」ジスタは、首を傾げ、挑発的な瞳を見せた。
「お前ら、こんな悪魔みたいな魔法使いが仲間でいいのかよ!なんも知らないなんて言わせないからな」ハンネスは、パトラに向けて、指を指すが、淡々とこう答えた。「うるさいわね。間違ってないじゃない?皆がそう思ったらそうなのよ。歴史上、そうなってるし、一つだけ言えるわ。ジスタ君は、嘘も平気でつくわ。でもね、 仲間の事は、絶対に信じて、策をこうじてくれる。策士様よ」と言いながらも彼女は、ガイラとライナーと戦っていた。ハンネスからしたら、彼女の顔は、見えないが、声質でパトラだと分かった。
「それって褒めてるですか?ハンネスさん。あなたにとって魔法使いが悪魔なんでしょ。魔法族だからと言って無関係な人を殺すのが正義だと言うのなら、今後も
それを貫けるですか?世界を敵に回しても、貴方達は、魔法を恨むのですか。」
「そ、そりゃそうだろうがよ」ハンネスは、腹部から血が滲み出して、口からも吐きそうだ。こんな無残な姿を魔法使いに見せたくないと必死に手で隠していた。
「確かに魔法使いは、貴方達、千武族に酷いことをしたかもしれません。でも、世界がこんなにも発展したのは、間違いなく、魔法のおかげです。ただ恨んで憎む続けた貴方達とは、違って、甘いんですよ。何もかも貴方達が世界を支配したとしても破滅に向かうだけですよ」
ジスタの言葉がハンネスは、虚ろんで聞こえる。彼は、死に際だろうか血が出過ぎて、意識が朦朧としてしまう...。
仲間が死んで行く姿は、あまりにも無残でアクアは、叫びたくなってしまう。
「ジスタ、それって死んでるの?」ヒルアは、そう尋ね、ハンネスの姿をじっと見ていた。「出血多量で気を失ってるだけですよ。死ぬのも、時間の問題ですか...」
「そう、生きてるだったらいいや。アクアさん、気を取り直して戦いましょう」
ヒルアは、ハンネスの事なんてものともせず、真っ直ぐにアクアだけを見つめていた。「生かすつもりなの?それとも殺すつもりでいるの。貴方達は、なんの為にこの戦いを仕組んだの?」
「アームズ壊滅の為だよ。それしかない。テロを辞めるって言うんなら、あたしは、貴方を殺さないよ」
「そんなの信用ならない。それに組織を壊させる訳に行かないの」
アクアは、ヒルアの言うことが信じられなく、なんも戸惑いもなく、銃を握った。「チャンスをあげたのに無駄にするんだね。ねぇ、大事なボスさん、野放しだけど大丈夫なの?」
「余計お世話ね、ボスなら強いから大丈夫だし、アジトの場所なんか誰も掴めないよ」「えっと?馬鹿ですか?さっきまでナビをハッキングしてたんですよツッコミたくて仕方ないんですけど!?」
ラブリーが結界を張りながら、ジスタの太もも辺りを強く蹴っていた。
「ジスタ、黙りなさい!余計な事を言わなくていいの!参謀役でしょ!」
彼は、嫌々だが頷き、黙り込んでいた。
「何が言いたいの?魔法使い、はっきり言ってよ」
「気にしてないでくれるかな?ラブリー、そういう人まじで苦手かも」
彼女は、笑っているが、目が笑っていない。何かが怪しいと、アクアは、疑った。
*****
「マスター、ここで合ってるのだよな」ユージンとコクは、ある所を目指し、森を歩いていた。「そりゃそうだろう、なんだってうちの策士様がハッキングして、
手に入れた地図だからなぁ」
周りは、ジャングルで草も伸びっぱなしだ。建物がまともに見えないが、こじんまりとしているが確かに分かった。ここがアームズのアジトだ。
だって、デカデカと見つけてくれと言わんばかりに看板に「アームズ」と書かれているからだ。彼は、屈んで、それを見ていた。
「ユージン、戦いは、お前に任せるぞ。俺が加勢したら不味いからな」
コクは、ユージンの肩を叩き、彼は、その手を握った。
「おう、任せろ。それにしても、どれくらい強いんだろうな。楽しみだな」
ユージンは、立ち上がり、決意を固めた瞳でコクを見つめた。
「油断は、するなよ。ユージン」彼は、頷き、アジトへと足を踏み入れた...。




