矛盾してる貴方が嫌い
「何が起こったの?」アクアは、振り向くとアジトの中に火が撒かれ、煙が立ち込めた。彼女は、外に逃げなければ、死んでしまう。彼女は、ふと思った。
今まで何人の人を殺してきたのに、自分の死になると途端に恐ろしくなって、逃げ惑う醜い間抜けだ。
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ヒルアの背後から人の足音が聞こえ、ナイフを相手の腰に刺し当てるが口をおさえられた。身動きが取れない。「おいおい。やめろよ!ヒルア。ユージンだよ」
彼女が 振り返ると、茶髪の青年が立っていた。
「なんで、貴方がここにいるの」ヒルアは、険しい顔でユージンにそう尋ねた。
「話は、後だ、とりあえず外に出よう」ユージンの話によるとアームズは、目立ちすぎて、政府が嗅ぎつけている。このアジトが国際ギルド局に摘発される前にヒルアを助け出したのだ。外に連れ出され、燃え盛るアジトを目にした。
「大丈夫だったか?ヒルア」ユージンは、心配そうに彼女に聞くが、吐息混じりにこう言った。
「狂いそうだった。何度もアイツらを殴ろうと思ったか。葛藤しかなかったよ」
「よく耐えたな。辛かったな。あいつらは、自らのエゴで動いてるみたいだ」
ユージンは、そっとヒルアの肩に手を触れた。
「同じ千武族がこんな事をしてるなんて、知られたら世論は、こちらを批判するでしょ」「そうだな。やり方は、荒いが彼らに任すしかないな」
そう言って、ユージンは、遠くの方を見据えた。
「彼らって誰なの?ユージン」ヒルアは、彼が指ざす方向を見るが、遠すぎて見えなかった。「 国際ギルド局の奴らだよ」
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ジスタがここに来るのは、久しぶりだった。国際ギルド局、彼が前に勤めていた所だ。「裏切り者がここに何の用だ?」彼は、国際ギルド局のカウンター席に座り、ジスタを見た瞬間に威圧的な態度を見せた。
「それは、お互い様じゃないですか?」ジスタは、清々しい位の笑顔を見せると、彼は、険しい顔で返された。「相変わらずだな。ジスタ」
「貴方だって、ジロン」互いに冗談交じり、笑い合うが、目からは、火花が散っていった。受付のホールの椅子に座り、あの事件の事を話した。
「知っているさ。あんだけ目立ってちゃこちらも無視は、出来ない。そのうち、組織ごともみ消すさ」ジロンは、アームズの情報を既に握っていたのだ。資料を粉々にくしゃくしゃにして、ゴミ箱に捨てた。「やっぱりそうですよね」
「これ以上は、話せないな、どっか、場所を移そうか...」
ジロンの提案にジスタは、コクリと頷いた。近くの喫茶店へと場所を移した。
「起こした犯人の正体は分かっているんですか?ジロン」
喫茶店のテーブル席に座り、向かい合って話していた。
「まぁな。確実に世論は、君たちに矢を向けるだろう。それじゃ、今後の活動に支障を来すよな」ジロンは、ジスタ達のギルドの事を知っては、いたが静かに見守っていた。「ジロン、あなたなら協力してくれますよね」
ジスタは、手を差し出すが、振り払われた。
「俺を買い被りしすぎだ。お前に協力するとは、言ったがそれは、場合にもよると言ったはずだ」
「そうですか。じゃあ見捨てるですね、奴に反逆出来るのは、お前だと言ってくれたのは、貴方じゃないですか」ジロンは、ジスタのその言葉を聞いた瞬間に立ち上がり、彼に銃を向けた。
「俺の立場を分かってて言ってるのか。お前と違ってギルド局の一員だ。君の仲間に手を貸したなど知られてみろ。即刻、クビで処刑ものだ」
「そりゃそうだ」とジスタは、頷いた。ジロンには、俺達に協力するには、リスクが大きすぎる。直接、手をわずわらせない程度にじゃないと割に合わない。ジスタは、そう考えた。彼は、拳が震えたが、強く握った。ジスタは、あくまでもヒルアの命を預かってる。やり方次第では、見殺しにするかもしれない。それだけは、避けなきゃいけないんだ。静かに目を閉じて、こう言った。
「分かりました、じゃあ手助けをしてください。貴方は、召喚獣をお持ちですよね?」ジロンは、コクリと頷き、こちらを睨んだ
「それなら、好きに使ってくれていいさ。俺のだとバレないようにしてくれたらな」ジロンは、ジスタが差し出した手を握った。「分かってますよ。ジロン」と
囁き、互いに行き違いの道を行き、去っていた。
──── 彼らとは、言っても、召喚獣みたいだ。高い木の上に登り、彼らの様子をユージンと共に傍観していた。ヒルアは、生唾を飲み込み、口を開いた。
「...自分の行いに迷いや恥じてる者は、救えると思う?」
ユージンは、首を横に振り、見下ろしていた。
「ヒルア、それは、アクアの事だよな。救うとかそういう以前に人を殺したんだろ。魔法族だろうなんだろうが償いは、しなきゃいけないな」
「──彼らは、どうするつもりなの?」ユージンは、黙り、彼らを指ざした。
────アームズの彼らにとって逃げた先は、地獄だった。アクア達の前には、獣がそこら中にいて、彼等を見るなり吠え、今にも噛みつきそうだった。
「貴方達、裏切ったよね。やっぱり魔法族は、信じられない」
獣を操るのは、冷酷に笑った眼鏡をかけた青年だ。
「1度でも信じたんでしょ。初めから、こういうつもりでしたよ?騙された方がわるいでしょ」ジスタは、指をパチンと鳴らし、その合図と同時に召喚獣は、仲間を襲い出した。嫌な音がアクアの耳を支配して息がおかしくなりそうだった。そんな彼女を見てジスタは、嘲笑い、こう言った。
「殺しませんよ、身動きを取れないようにするだけですよ、アクアさん」
ジスタのその言葉を聞くだけで彼女は、恐怖だけで体が蝕まわれ、足がすくんだ。───バサッ!?金髪の少女が降り立ち、青い瞳でアクアを睨んだ。
「ごめんね。あたしもこっち側だったの。出会った時から、矛盾してる貴方が嫌いだった。こんな卑怯なやり方じゃなくてほんとは、真剣に戦いたかった」
アクアには、分からなかった。なぜ彼女は、ヒルアは、こんなにも悲しい顔をしているのか。
「あたしは、あの時、貴方に逃げろと言った。それは、自分の行為に迷いを生じていたから、まだ、救えるだなんて思ってた。でもそれは、綺麗事だったね」アクアが聞こえない声でヒルアは、囁いた。
「千剣!!」ヒルアの周囲には、剣がそびえたっていた。
「アクアさん、あたしと戦ってよ!誰も殺しても何も思わないだよね?じゃあ同族だったらどうなの?」ヒルアは、アクアを手招きしていた。
彼女から、逃げるなんてできるはずがない。逃げ場なんてあるはずがないからだ。次回に続く。




