血だらけの海で踊り狂う
アクアにとって、そう、彼女は、まっ赤な海で踊り狂う蝶のようだった。それは、戦の途中なのに見とれてしまう程だった。
「何ボッーとしてるの!敵が多いんだから、武器を振るいなさいよ」
ヒルアは、呆然と立ち尽くすアクアに怒鳴り散らした。アクアは、頷き、拳銃を双剣に変えた。彼女の言う通りでアクアは、ボッーとしてる場合じゃない。
アクアにとって、羨ましい程に彼女は、強い。何が違うのだろうと考えたが、才能?実力?それは、全部、全てだ。いつの間にか、アクアは、魔物を何度切っても、切り裂いても、生臭い血と切断された肉片が散るだけで何も思わない。
そんな行為に慣れしまったんだ。
「やるじゃない。アクアさんなんで悲しい顔をしているの?」
ヒルアは、首を傾げ、そう尋ねた。
「何でもない。もう終わったのだから、奥に行くわよ」
アクアは、首に横に振ると、足を踏み出した。
「矛盾してるね。今の貴方は、本当は、殺戮なんてしたくないんじゃない?」
ヒルアの言う通りだったが、アクアは、頷くわけに行かなかった。
「何が言いたいの?あたしは、ボスに助けられたから」ヒルアの言うことに対して、アクアは、威圧するしか彼女に反論が出来なかった。
「それってボス様の口実でしょ。救い出したからって対価を払うなんて。あなたのさせられてる事は、それに見合ってないよ。まだ望みは、ある。逃げ出すなら今だよ」ヒルアは、あくまで冷静に淡々とそう言っていた。
「逃げる?辞めてよ。あたしは、好きでこの道を歩いてる!だから他人のあなたにどうこう言われる筋合いは、ない!!」アクアは、軽く笑い飛ばし、そう強く言うが、ヒルアは、全く動じていなかった。
「そう言い聞かせてるだけじゃない?」そう冷たく言い放った彼女は、アクアを見透かしてようだった。アクアにとってそれは、気持ちが悪いもの以外、何物でもなかった。彼女は、出会ったばっかりの人に見抜かれる程、浅はかな人間じゃないと思っていた。
「喧嘩は、それぐらいにしたらどうかな?アクア、ハンネス、久しぶりだね」
男女二人が木にぶら下がり、魔物の死体の上に立った。よく見ると双子だ。
「ガイラとライナーじゃないか。終わったのか?」
ハンネスは、すぐさま、駆け寄った。どうやら仲間みたいだ。
「そうだね。この先の景色をみるかい?魔法族の村人の」
ガイラは、にこやかにそう言うがヒルアにとって心底、気持ちが悪い。
「それ以上は、やめようよ。兄さん。村に魔物がいるって嘘ついたんだから殺り方は、卑怯だよ」ライナーがガイラの言葉を遮るかのようにそう話していた。
「僕が楽しかったらいいんだよ。騙される方が悪いよ。逃げ惑って罠にハマって、とても面白かったよ」彼は、狂おしい程に微笑んで、殺戮を楽しんでる人間の顔だ。「このお姉さんは、誰なの?」
ヒルアを指ざして、ガイラは、不思議そうに尋ねた。
「ヒルア·ダルク。あたらしく入った者です」彼女は、軽く頭を下げた。
「ふーん、そっか指名手配の人じゃん、面白いね。これから仲良くしようよ」
ガイラとヒルアは、互いに微笑ましく、握手を交わした。
「アームズは、君みたいな強い人大歓迎だよ」少年は、にこやかにそう言っていた。「それは、嬉しいですね」少年の体には、血の匂いが染み付いていた日常的にやっているだろうか。ヒルアは、そう察した。「他にお仲間は、いるんですか?」
「いるよ。もうすぐで終わるじゃない?きっとニュースで騒がれる日が来るよ。その時は、絶対に見てよね」ガイラは、ニヤリと笑い、ヒルアにそう言った。
「それは、楽しみですね」ヒルアからしてみれば、多分、聞けば聞くほど、吐いてくれるだろう。そう思うと中身は、純粋な子供なのか?そして、違和感を覚えるのは、何故だろう···。
****
ワールドプロジェクトのギルドの電話が鳴り響き、眼鏡をかけた男性は、受け答えをしており、とっても怖い顔をしていた。
「はい、そうですか。ヒルア、組織名は、わかったんですね。試しにそれで調べてみます」ヒルアからの電話が終わってすぐにパソコンを弄り出していた。
「何をしているの?ジスタ」ラブリーは、パソコンが置いてあるテーブルにコーヒーを置いた。「ラブリー、調べているんですよ。ヒルアの話によると連日、テロを起こしてるらしいです」
ジスタは、それを受ける取るとお礼をラブリーに言っていた。
「屑な人達だね。あの場で始末した方が良かったんじゃないかな?」
ラブリーは、髪を弄りながら不機嫌そうにしていた。
「全体的な規模も掴めてないのに、潰しても組織は、消えないですよ」
ジスタは、とっても冷淡な表情をして、眼鏡を上に上げた。
「残党でまた作り出す可能性がある」マスターがジスタの背後に居た。
そしてギルドのメンバー全員が、集まり始め、パソコンに一心に視線が注がれる。「そうです。出てきましたよ、アームズ反政府組織」
「ご丁寧にホームページまであるじゃない。完全に舐められてるわよ」
パトラの言う通り、アームズ専用のホームページがそこには、あった。ジスタが持っていたマウスで下にスクロールする度にアームズが、起こした事件と場所と死体が写っていた。「気味が悪いですね。今日もさっそく更新されてますよ。全員、足止めしないと意味がないですね」ホームページには、newと書かれていた。
「そりゃそうだろうよ。これじゃ政府も嗅ぎつけているだろ」
ケンは、あくびをかきながら、そう言っていた。
「そうですね。ケン。これは不味いかもしれませんね?」パソコンを閉じて、ジスタは、皆の方が向いた。「あっちが動いたらあたし達は、身動きが出来ないよ」
ラブリーは、気難しそうに腕を組んでいた。
「ラブリー。そんな事になったら、今度は、ヒルアが危ないですよ」
「逆におびき出せばいいじゃないか?ジスタ、お前なら出来るはずだ」
マスターは、ジスタの肩を勢いよく叩いた。
「そういうことですか。分かりました。俺のコネでギルド局に掛け合うにしても、リスクが大きすぎます。ヒルアは、どうしますか?」
ジスタは、首を傾げ、マスターに尋ねた。
「あいつなら、俺達が取り戻す。ノアールとの約束だからな」
マスターは、ジスタに「だから、大丈夫」だと言っていた。
「スパイにしたのが裏目に出ましたね」ジスタは、少しつらそうにしていた。
「まだそう決めるのは、早いよ。ヒルアちゃんだってジスタを信じて、あっちに行ったんだから、責任を取ってよ」ラブリーは、ジスタにそう軽く肩を叩いた。
「ラブリーの言う通りですね。俺は、しばらく帰ってきませんが、マスター。後のことは、よろしくお願いします」
「分かった。いい報告を待ってるぞ」マスターは、軽く手を振り、ジスタは、ギルドを後にした。
─────数日後。アームズのアジト。
「見てよ!ヒルア、やばいよ。こんなにも僕達が映ってるだよ」
ガイラは、嬉しそうに彼女に言っていた。
「って言っても、ガイラさんとライナーさんだけじゃないですか?」
ヒルアは、笑っていたが目は、笑っていない。
「優越感がやばいね」とガイラは、はしゃぎでいていた。テレビに映っていたニュースは、連日のテロ事件特集をやっていた。双子が血だらけで、どんどん村人を罠にハメ、トドメを刺していく、その姿を防犯カメラが捉えていた。
「凄いですね。ガイラさんは、」 ヒルアは、偽りの言葉を並べ、ガイラをおだてていた。「君の方が年上でしょ。敬語は、辞めてよ!なんの縁もない人間を殺すなんて簡単でしょ?何も思わないよ」突然、爆発音が聞え、煙が蔓延して息が詰まる。
ヒルアは、こう思った。も、もう、政府に嗅ぎ付けられたの。
周辺は、真っ暗になり、足元に影が見えた。
次回に続く。