ブルーメンヘッド決戦 後編
「いいのかよ。大事な女が殺されても...」
ケンとタカの前にゼロスが立っていた。
「俺はパトラの事を信じてる。パトラは俺と違って頭が切れるから
絶対に勝ち筋を見つけるはずだ。」
「本当に信じてるだな。あんたは薄情だよな。ホークアイをほっといて
自分の故郷を助けるなんて」
ゼロスはタカを指さして挑発するような目をしていた。
「あいつらならあたしなしでもテゼルトを奪還出来ると信じてるからだ。
あたしはここを故郷だと思っていない」
「何言ってんだ。あんたはここで生まれたんだろ」
「そうだ。でも本当の故郷はホークアイにある。アイツらを助けた時から
私は昔の自分に決別した。」
「そうかよ。じゃあなんでここで戦ってんだ。故郷がじゃないのなら
理由なんてないだろ」
「罪滅ぼしだ。私はこの国の将軍だったが帝国には逆らえず戦うことを辞め、
ブルーメンヘッドを衰退させる所だった。」
「何もあんただけが原因じゃないだろ。ロンディ首相だってそうだった。」
「それは違う。ロンディ首相は覚悟と勇気がなかっただけだ。
私はその2つとも捨ててしまってた」
*************
周囲は爆風が吹き荒れて電流が走っていた、
「グワァァァァァァン!!」
巨大な熊型の化け物達は雄叫びを上げて歩く度に地面が揺れた。
「前よりも強くないか。フェルト」
「そうじゃのう。毒薬ならたんまりとある片っ端から試してみるか」
フェルトはポケットから毒袋を化け物に投げつけた。
「ウグッッッ!」
化け物達の腰あたりに毒袋の粉が降りかかって腐敗していた。
「ロンディ、頼んだぞ」
「あぁ分かった。ファイアフォース!」
ロンディ首相は杖を振り回して猛烈な炎を発した。
「グワァァァァァァン!!」
化け物達の体は火傷程度でまだ息があった。
「しぶとい化け物じゃのう」
「フェルト、時間稼ぎしてくれ」
「老体に無茶なことを」
フェルトは心底嫌そうな顔をしながらポケットから注射器を取り出した。
「仕方ないだろ。詠唱時間が長くなるんだよ」
ロンディ首相は杖を突き立てて凄まじいオーラを放っていた。
「手間がかかるのう」
フェルトは化け物達に注射器を投げつけて腕の部分に刺した。
「狂毒乱」
フェルトは手を叩いて、注射器から猛烈な毒が放出され化け物は
もがき苦しんでいた。
「ファイアブレイク!!」
ロンディ首相は杖を地面を叩いて地盤に亀裂が走って炎が
発され化け物達の体は大火傷して死に果てた。
「やっと終わったな。加勢しに行くか」
「嫌、その必要はなさそうじゃな」
フェルトはケンとタカを見つめてそう言った。
***************
ブルーメンヘッド国境周辺があの映像に包み込まれ、
帝国軍勢は杖を落とした。
「白魔王様が己の欲望のままに殺戮するはずなどない」
「今まで何を見てきたんだよ!白魔王は今まで千武族やテゼルトの
都市開発の為に人を殺めてきた。真実を教えてるだけだ。」
ケンはゼロスの襟元を掴んで声を荒らげた。
「真実がなんだよ。この戦争は何のための戦だ。」
ゼロスはケンの腕を振りほどいて落とした杖を拾い上げた。
「戦争に意味などない。互いの正義のぶつかり合いだ。あたしの仲間は
約束を果たしてくれた。だからあたしも必ず果たす...」
タカは地面に杖を差して魔法陣を発生させた。
「俺もあんたと同じだ。ここにいる帝国軍、俺とあんたで蹴散してやる」
ケンは大剣を空中に投げて双剣に変化させた。
「奴らが見せた幻影に惑わされるな!杖を取れ、帝国の誇りを守り抜け」
ゼロスは杖を翳して軍勢を奮い立たせた。
「いくぜ 」
「おう。思い存分殺ってくれ」
タカの杖を叩く音で周辺に雷が走って帝国軍の1人、1人が猛烈な電流に
打たれて倒れていく...。
ゼロスはそれをものともせず、ケンに魔法を放った。
「ファイアフォース!」
炎をまとった放射線が落ちて周辺の草原に引火して燃え上がった。
「おっかねぇな。水龍剣」
双剣を一振すると水龍を発生させ炎の放射線とぶつかりあった。
「本当に信じてたのか。帝国のことも白魔王の事も...」
タカがゼロスに問いかけた。
「信じてる。お前らは知らないだろうな。帝国の民は洗脳に侵されてる。
小さい頃から洗脳教育は徹底された。お前らが革命だの何をしても
無駄だ。」
ゼロスの言葉にケンは舌打ちをした。
「何しないままじゃ俺たちは殺される。大事な人も仲間も守れない。
俺たちはそれが全てだ。世界なんてどうでもいい」
「お前らは革命を掲げてるだろう」
「そうだな。でも俺には関係ない。革命、そんな抽象的なものに身を捧げたり
しない」
ケンは双剣を投げて回転させ、大剣へと変化させた。
「まぁそんなことはどうでもいいだろ。」
「三日月」
月を描くように大剣を振るった。
そこには凄まじい衝撃波が走って周囲は地盤はひび割れて足場を不安定させる。
「君は囚われ過ぎだ。」
タカは再び杖を叩いた。
「囚われて何が悪い!俺は白魔王様を帝国を...」
ゼロスは高く飛び越えて魔法を唱えた。
「インフォニティランス!」
無数の槍が魔法陣から解き放たれ地面やブルーメンヘッドの兵士に
突き刺さった。
「インフォニティファイア!」
ゼロスは杖を振り回して球型の炎が何方向にも放たれた。
「タカ、こんなの受けたら一溜りもねぇぞ!」
「あぁ分かってるさ。キングオーブ!!」
タカの魔法のおかげでブルーメンヘッドの兵士達の頭上には透明な壁に
包まれていた。
「行くぜ!散桜剣!」
細かい鋭い刃が桜のように散ってゼロスは切り裂かれ、大量に血が流れた。
「もうやめようぜ。ゼロス」
ケンは大剣を背中に背負い、ゼロスに歩み寄った。
「くそっ!」
ゼロスは地面に膝を着いて痛みに悶えていた。
****************
「あたしの弾を避けるだけじゃダメよ」
パトラはアリエッタに銃弾を放ってたがギリギリの所で避けられていた。
「避けられるのが悪い。ポイズンサンド」
アリエッタが杖を振るうと毒の砂が散らばった。
「癒しの雨」
パトラがそう唱えると毒を抹消する効用がある雨が降り出した。
「貴方の場合、封じ込めた方が早いわ。」
パトラは銃を投げて鎖に変えていた。
「捕まえられたらいいのにね」
アリエッタの動きは素早く残像しか見えない。
「逃捕鎖」
パトラは鎖を振り回して解き放った。
「また鎖?懲りないね」
アリエッタの背後には鎖が迫り巻きつこうとしていた。
「ポイズン」
アリエッタがそう呟くと毒の液体が放たれパトラの腕に振りかかった。
「いつまで持つのかしら」
「さぁね。余所見にしてる暇があったら前を見た方がいいわよ」
「ちゃん前を見ろよ。アホが...」
アリエッタの前にはケンが現れ刃を落とされた。
「ほら捕まえた。案外頑丈なのね」
アリエッタとゼロスは鎖に繋がれ捕まっていた。
「タダで済むと思うなよ」
ゼロスの怪我は治され不機嫌そうにこちらを見ていた。
「思ってないわよ。捕虜として捕らえるだけよ。」
「どうだか...」
「人間ごときか白魔王様に勝てるわけがないわ」
アリエッタとゼロスは不満そうにパトラを見上げていた。
「それは知ってる。うちのマスターから聞いてるわ。貴方たちには情報を
聞かせてもらう」
パトラは後ろを向くと腕を押さえ痛そうにしていた。
「おい、フェルトさんに治してもらえよ」
「分かってるわよ」
戦いが終わり、フェルトがこちらに駆け寄った。
「パトラ、毒に侵されてるようじゃな。ほら解毒剤じゃ」
フェルトは解毒剤の軟膏をパトラの腕に塗っていた。
「染みるわ」
パトラは腕を震わせ痛みに悶えていた。
「ゼロス、アリエッタ、君達は帰ったところで殺されるだろ。」
ロンディ首相はゼロス達に駆け寄った。
「負けたからな」
「白魔王は何を目指してるんだろうな」
「さぁな。ブルーメンヘッドもマシーンアイランドも手に入れて支配して、
反乱分子である千武族を虐殺して本当の平和を手に入れる」
ロンディ首相はゼロスに問いかけた。
「それが本当の平和か。あたし達にとっては絶望の始まりだ。」
「そうだな」
ブルーメンヘッドの戦いが終わりパトラ達はブルーメンヘッドの兵士達の治療に尽力していた。
ゼロスとアリエッタは捕まり、ブルーメンヘッドの地下牢へと
牢獄されていた。
次回に続く。
ちょっと遅れてしまいました。時は早いものですね。
次回の更新からはマシーンアイランド決戦、前編後編
2話続いて更新する予定です。
よろしくお願いします(՞ . ̫ .՞)"