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僕は、君のヒーローになる。  作者: ブラックキャット
最終章 革命
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テゼルト決戦 後編

  全世界に浮かべられた映像は人々の足を止めて

 目を離さなかった。


「白魔王様が大虐殺なんて...」

  映像の中の白魔王は千武族を殺し尽くして

 ある少女に返り討ちに遭わされその報復に村を燃やしていた。


「なんて酷い事を...」

  そこにいた女性は顔を手で覆い涙を流していた。


「こんなの嘘に決まってる!千武族は人を惑わせる種族だ。

 きっと言霊術で...」

  男は映像の前に立ちはばかり手を広げていた。


「そんなハッタリがあったら便利だよね

 こんな綺麗な帝国に居たら真実なんて分からないでしょ」

  煌びやか髪を靡かせ女性は仁王立ちしていた。


「裏切り者のラブリーじゃねぇか。国際ギルドを辞めて...」


「あたしの意志で辞めたの。彼らのせいじゃない。ここで

 見てればいい。あたし達の革命を...」

  ラブリーはそう言い捨て、空へと魔法で飛び立った。


 ***************

  触手が飛び交ってホークアイの者達は

 何度も切り裂くが無限に再生される触手に苦戦を強いられていた。


  「お兄ちゃん、この人達強いよ」

  どこかで少女の声が聞こえた。


  「誰の声?」

  スズメは周りを見渡すが仲間と敵であるエルしかいない。


「あれ言ってなかったけ。エム、出てきていいよ」

  エルに寄生していた触手は消えて少女へと変わっていた。


「あたしはエム。貴方達のお仲間が壊した研究覚えてる?」


「ビーストは完全に消滅したはずだ。それにアイラも博士も...」

  クロウはブルーメンヘッドの事をパトラ達に聞かされていた。


「そう、処分されたよ。でもビーストウィルスは生かされた。」


「あのウイルスをお前に投与したのか」

  クロウは少女に問いただした。


「そうだよ。あたしは白魔王様に実験台されたの。こんなあたしがあの方に

 お役に立てるなんて...」

  少女は顔を赤らめて声が高揚していた。


  あのビーストウイルスを少女に投与してどんな影響があるのだろうか。

 俺達はこいつらに勝てるだろうか。

  そう考えを巡らすとクロウの手は震えていた。


「この戦いに特効薬はないの。だってヒルア・ダルクはいないし

 抗薬剤だってない。どうやってあたし達に勝ってるの」


「勝てるよ。ビーストウイルスは生物を凶暴化させる作用がある。

 でも人間に投与すればどんな影響があるか分からない。」

  マオはエムに杖を向けた。

 


「君達だって知らないよね」

  エムの右腕が触手に変わり、マオの杖を掴んでいた。


「僕は知る事が好きなんだ。フェルトさんにもペーパー首相にも色々なことを

 教えて貰った。そのビーストウイルスってマウスに投与した場合、凶暴化する

 作用で肉体が強くなりあらゆる形で他人に寄生することも出来る。

 けどそのマウスは力を制御できなくなってウイルスはどんどん体の中に広がって

 痛みが増していくみたいだよ」


「へーそうなんだ。あのフェルトおじちゃんも実験しててたんだね。」


「フェルトさん、言ってたよ。このウィルスは危険だから人間には絶対に

 投与したらダメだって...」


「マウスはそうなるのは知ってるよ。だから何?」


「ビーストウイルスを人間に投与して兵器として使うには

 危険すぎる。だっていつ死ぬか分からないから...」


「そう。忠告ありがとう」

  マオはエムに睨まれエルの体にエムは触手へと寄生していた。


「僕の妹をからかって面白かったかい?」


「からかってなんかないよ。当然の事を言っただけだよ」


「ほんと気に食わないね、マオ君」

  触手が枝分かれしてマオは何方にも刃を向けられていた。


「炎炎龍剣!!」

  クロウは炎を纏った剣でマオに向けられた刃を切り裂いて灰へと

 変化させた。


「クロウさん、ありがとう」

  彼に持ち上げられちょっと遠くの方に連れていった。


「坊っちゃま、乗ってください!」

  そこにはセバスチャンが立っていた。


「お前の言う通り、勝てない戦いじゃない。ボスが託してくれた。

 備えがあれば憂いなしだ」

 

  クロウから布に包まれた物を受け取りマオは頷いた。

 

「俺達がアイツらを引きつける。その隙にお前は突破口を見つけてくれ」


「うん。分かったよ」

  マオはセバスチャンの背中に乗り、颯爽とは走り出した。


  *************

 

  感覚がどんどん侵食されていく血の海へと落とされていく...。

 そこには口を開けた獣がいて食われるみたいだ。


 ふと目に少年が映った。兄じゃないあの少年だ。


 *****************


  無作為に無限に触手は何方にも伸びて縦横無尽に覆い尽くして

 ホークアイの戦士は勇敢にも武器を振るって立ち向かった。触手の再生能力は

 どんどん弱まり肉片が飛び散っていた。


「これで終わりだと思ってるの?君達」


「思ってねぇよ。お互いに尽きるまで戦おうぜ 」

  クロウにエルは剣を向けられていた。


「お兄ちゃんはあたしが守るから」

  体の中からエムの声が聞こえた。


「分かった。絶対にテゼルトを奪わせたりしないよ」

  エルに寄生していた触手は巨大化して鋭い刃をクロウに向けた。


「ふっ面白くなってきたな!」


  何度、傷負っても立ち向かうことを辞めない奴等が怖い。

 武器を決して離さない彼らが怖くて恐ろしい。

  エルに寄生している触手は変貌自在に毒を吐き始めた。


「清聖氷」

  スワンがそう唱えると毒は氷漬けされ触手は剥がされエルの背後に

 エムが浮かび上がった。


「やっと解放できるね」

  セバスチャンが高くジャンプして浮かび上がったエムにマオは

 注射器を刺した。


「はぁ...はぁ...」

  エルは血を吐いて、そこに蹲くまっていた。

 エムは抗薬剤を投与され、体は疲弊して横たわっていた。


「長時間にビーストウイルス侵されて適応できたくなったんだね。

 エルもエムも...」

  マオは切なそうに双子を見つめていた。


「僕達は死ぬのも時間の問題だ。僕達は白魔王様に帝国に良いように

 利用された。認めたくなかっただけかもね。あの凄惨な真実も実験台に

 されたことも...」

 エルは悲しそうな顔をして目を閉じた。


「君達は悪くないよ。悪いのはこの世界だ。」

  段々、消えていくふたつの魂にマオは手を震わせ涙を流していた。


「酷い世界だ」


 次回に続く。テゼルト決戦 END。





 

 


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