マシーンアイランド編 終幕(前編)
「ジスタ、どこか行くの?」
彼は何気なく彼女を横切った。
「ラブリーですか。ちょっと遠くに...」
彼は微笑むとすぐにドアに手をかけた。
「行き先位言ったら?」
ラブリーはジスタの服の袖を掴んだ。
「心配しなくてもどこに行きませんよ。」
彼はラブリーが服の袖を掴む手を掴んだ。
「だったらなんで行き先言わないの?皆と一緒に革命を起こそうって...」
「その革命の為に何人死んできましたか?
村長から話を聞きましたよね。俺と何年も一緒にいるなら分かりますよね」
ジスタはラブリーの袖を掴む手を振りほどこうとしたが握る手は強く
それは叶わなかった。
「分かるから引き止めてるの!こっちに勝機がなくても戦うことに意味が
あるの。」
「俺は貴方にも仲間にも犠牲になって欲しくないんです」
彼が身につけた指輪が光出して足元に魔法陣が現れた。
「ジスタ、あたし達は強いよ。分かってるでしょ」
「はい勿論です。」
彼は微笑んで指をパチリと鳴らした。
周辺に光が溢れて目を瞑るとそこに彼は居なかった。
息が詰まる。引き止められなかった自分に吐き気がする。
ラブリーは涙を流さずただ立ち尽くしていた。
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地下室は薄暗く静かに過ごしたい彼女にとっては最適だった。
彼は今頃何をしてるんだろう...。
そう考えたって意味ないのに...。
「ラブリーどうしたの?マスターが来てるわよ」
地下室の階段から足音が聞こえ振り返った。
「わかった行くよ」
「無理して行かなくていいわよ。マスターには話しておいたから...」
パトラはラブリーが座っているソファーにそっと座った。
「ありがとう。パトラ、ジスタから何も聞いてなかった?」
「あたしは貴方と違ってジスタと仲良くないのよ」
「それもそうだね。変な事聞いてごめん」
ラブリーはちょっと苦しそうに笑っていた。
「できるだけらしくいましょう。彼が去ったことを悔しがるように」
パトラはラブリーの手を優しく握った。
「うん、そうだね」
ラブリーは精一杯、微笑んで握り返した。
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そこには華やか匂いが漂って眩しい位の照明に目眩がした。
「ジスタ、あなたどういうつもりなの?」
白魔王はテゼルトの王座の間の椅子に佇んでいた。
「帝国出身である僕が白魔王様に忠誠を誓ってはダメですか?」
ジスタはただ跪いていた。
「どういう風の吹き回しと聞いてるの。貴方は簡単に落ちないでしょ」
「白魔王にとったらおかしいですよね」
ジスタは冗談ぽっく笑うと白魔王は眉間に皺を寄せた。
「貴方が仲間を裏切るなんておかしくて仕方ないわよ。
聞いたわ。彼らはここテゼルトに攻めてこんで来るんでしょう」
白魔王は口を押さながら笑い声がこぼれていた。
「はいそうですね。」
ジスタは白魔王に微笑み返した。
「その前にマシーンアイランド共々叩き潰しましょう。最後にブルーメンヘッドを
残しておいた方がいいかしら」
白魔王はワインを口に運んだ。
「その方がいいかもしれませんね。ブルーメンヘッドはよく燃えそうですから...」
「そう?貴方はロンディ首相とも仲間だったんでしょ。随分と生意気な人に
なったわよね。この私に戦いを挑むなんて...」
「中身はヘタレ首相のままですよ。ふたつの国がかかってきてもあちらには
勝機がありません。白魔王様はご安心した座ってくださいませ...」
ジスタは深々と跪いていた。
「随分と自信があるようじゃない。ワールドプロジェクトの策士様、
頼りにしてるわよ」
「はい。おうせのままに」
ジスタは立ち上がり、頭を下げて去っていた。
「信じていいんですか?あの男を...」
ハクは白魔王の横に立っていた。
「さぁ...面白いじゃない。あんな信念深い男が仲間を裏切るなんて...」
「いつこちらが裏切るなんて分かりませんよ」
「例え虫けら1人に裏切られても動じないわよ。こっちの勝ち戦には
変わらないわよ。ハク、マシーンアイランドに手配してくれる?」
「はい。分かりました。」
ハクは白魔王に会釈をした。
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「ジスタは上手くやっているかしら」
パトラは自室に閉じこもって武器の整備をしていた。
「パトラには話しておきますが何も皆に言わないでくださいね。」
と微笑むジスタの顔が思い浮かんだ。
「マシーンアイランドに彼らを連れていくので迎えてやってください。
外壁から攻め込んであの城を崩しにいきましょう。」
「なんでそんな話あたしにするのよ。わざわざあたし達を裏切るフリなんか
しなくても、策士ならやってくれるでしょ」
「パトラが1番適任なんですよ。絶対に俺の事止めないでしょ。」
「うん、引き止めないわ。貴方のことよく知らないから...」
「そうですね。パトラ、思い存分戦ってくださいね。じゃあ
...」ジスタはパトラに手を振った。
「ジスタならあの帝国で策士をやるなら思い存分、惑わしてくれるでしょ。
信じてるよ」
「はい。俺も信じてますよパトラ」
ジスタは微笑むと去っていた。
絶対に後悔させてやりましょう。
マシーンアイランドに来たことを悔やむ位にあたし達が叩き潰してやる...。
次回に続く。