光の剣(つるぎ)
先週末まで投稿するつもりだったんですけど勉強を詰め込め過ぎて疲れたので休んでました(´ヮ`;)
言い訳はこのくらいにしてご愛読よろしくお願いします。
10歳の頃、祖父が持っていた光の剣で白魔王を倒せると思っていた。
けど違った。
人に言われなくても分かっていたはずだ。
光の剣は光を滅せない。分かっていたのに理解をしなかったのは絶望を味わうのが嫌だった。
ユージンは父の蔑んだ目を思い出した。
父の祖父と曾祖父さんのせいで一族は呪いを授かった。
それは魔力を制御できづらくさせ魔法を使えない
呪いだった。おかげで簡単な魔法しか使えない。
「魔法を唱えるのはやめなさい。無駄な時間を消費するだけだ。」
「そうかもしれないけど俺は許せないんだ。白魔王のせいで...」
「うるさい!!誰のせいでこうなったとおもってるんだ。革命なんて馬鹿なものを掲げたクソジジイのせいで我ら一族は白魔王に呪われた。」
父の凄まじい剣幕に子供のユージンは黙るしかできなかった。
「祖父と父と同じ事をしないでくれ。革命なんてくだらない事を考えるなよ
ユージン。」
「でも...」父は転がっていた木刀でユージンのはらわたに向けて思い切り振った。
口からは唾液が漏れて吐き出されて猛烈な痛みを生じさせそこに倒れた。
「お前はまだ小さいから知らないだろう。魔法を使えない我ら一族はどんな酷い
扱いを受けたか。
世界を変えるだなんて言わないで普通に生きてくれ」
”普通ってなんだよ”とそう言いたかったがあまりの苦しさに声を発せず
父は去っていた。
そこに祖父がやって来て、倒れ込んだユージンに手を差し伸べた。
「ユージン、大丈夫か?」
心配そうにユージンを祖父は見下ろした。
「大丈夫だよ」
差し伸べられた手を握り立ち上がった。
優しい祖父はユージンに父に隠れて稽古を付けたり
歴史を教えていた。その同時に革命の真実を話していた。
それは50年前の事だった。でも沢山の犠牲者が出て革命は失敗は終わり、
2回目の30年前もそうだった。
「我が父は50年前に亡くなった。その時に光の剣を授かった。
次はお前が革命を起こす番だと...」
10歳の頃から5年が経ち祖父は病で倒れ、寝たきりになっていた。
「その話は何度も聞いたよ。」
ユージンは祖父に優しく微笑みかけ手を握った。
「分かってるさ。俺はもうすぐ死ぬだろう。
その前にお前に渡したい物がある。」
ベッドの横に置いていた光の剣を渡された。
「お爺ちゃん、どうしたんだよ。こんなにハッキリと喋れるのに...」
「何度も三途の川を渡って来たんだ。自分の死期位は分かる。
ユージン、今から言うことに黙って聞いてくれ」
ユージンはただ頷いて固唾を飲んだ。
「白魔王は、偽りの栄光を振りかざし、王座に座っている。あれだけの人を殺し、苦しめておいて、ユージンが知っているのは、偽りの真実だ。それを武器にしてワシの父だった英雄クレスの悲願だった野望を果たしてくれ。」
「野望ってなんだよ」
祖父はユージンの耳元に囁いた。
「闇に支配された白魔王を光の剣で滅する。お前がこの世界に革命を起こせ。
それが英雄クレスの野望だ」
ユージンにそう言い残して息を引き取った。
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ユージンは光の剣を握りしめ真っ黒に染まりきった夜空を見ていた。
「こんな所でなにをしているの?ユージン」
草原に座り込んでいたユージンの横にヒルアは座った。
「嫌、昔の事を思い出していただけだ。」
「そう。あたしは本当の事を知れて清々しいの。おばぁちゃんは断片的にしか
話してくれなかったから...」
「そうか。俺は知っていたんだよ。祖父がよくその話をしてくれた。
でも理解をしてなかった。光の剣の役割を...」
「まだ諦めるのは早いよ。マスターに光の剣の事を聞けば何か希望が見つかる
かもしれない。」
「光の剣は黒魔王を殺す為に作られた物だ。その事実はどうやっても覆せない」
「それは違うよ、ユージン。確かに闇属性である黒魔王は光の剣で殺された。
でも黒魔王は闇に支配されず光のオーラを纏っていた。
希望を持ち続ければ世界の為に戦えれば...」
「俺のお爺ちゃんだってひい爺ちゃんだってそうだったんだ!ずっと世界のために戦っていたんだ。だけど死んだ。革命なんて馬鹿しいんだよ」
光の剣を抱きしめてユージンは顔を隠した。
「そうかもしれないね。あたしも叔母ちゃん似たような事を何度も言われた。
でもねあたしは許せないの何もしてないのにこんなにも周りが殺されてこのまま
何もしなければ多分、あたし達も殺される」
「そうだな。ヒルア」
「マオ君を見て思ったの。必死に小さな体で世界を変えようとしてる。
あたしは世界を変えたいじゃないの。革命なんかどうでもいい。
ただこの世界を仲間と生きていたいの」
「ヒルアがそんなことを言うなんて思ってもいなかったよ」
ヒルアはふと立ち上がり、腰にかけていたナイフを見せてきた。
「ユージンのおかげだよ。その光の剣で貴方が光を刺してくれたからあたしは
今ここにいるの。何も役に立たない剣じゃない。それを一緒に証明しよう」
ユージンは眩しすぎる光に目を瞑り、差し伸べられる手を握った。
なぜこんなにも彼女の手は暖かいのだろう。
ユージンは立ち上がり頷いた。
「あぁ...そうだな」
次回に続く。