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僕は、君のヒーローになる。  作者: ブラックキャット
マシーンアイランド編
105/121

白黒戦争(前編)

  「どうなってるんだ!!」

  コクは拳を震わせ苛立ちを露わにした。


「コク、事態を把握する為、周辺を見回りましょう。」

  ハクはコクの肩を掴んだ。


「把握してどうするんだ?相手は白魔王だ。何をしてくるか分からないぞ」

 コクはハクの手を優しく振りほどいた。


「ハクさん、白魔王様は呪いの書を使いになれたんですよね?」

 クレスはそう尋ねると怪訝な顔をした。


「そうですけど...」


「黒魔王様はこの世界の皆から慕われています。会ったばかりのあたしでも分かるぐらいに...。そんな黒魔王様に白魔王様は憎しみを抱いたかもしれません。

 思い通りに操れるのならきっと村人を黒魔王様に殺させる」

  クレスは淡々と推測を語り出したがコクとシロは信じられないと首を横に

 振った。


「黒魔王様にそんな事をさせてどうする?」

  コクはクレスにそう尋ねたが民衆の悲鳴に遮られた。


「あぁぁぁぁぁぁ!黒魔王様、何故...」

  そう遠くない所から悲鳴が聞こえコク達は駆け出した。


 *****************

  ザクッ!ザクッ!と音を鳴らして剣を突き刺した。

 何度返り血を浴びても止むことは無い。

 命が消えるまでは...。


「黒魔王様!!」


 黒い影を纏った黒魔王は振り返るとコク達がいた。


「あたしを殺せ...」


「殺せません!黒魔王様を殺す以外に呪いを解く方法はあるはずです」

  コクの悲痛な表情を見ると黒魔王は俯いた。


「無い。呪いの根源の白魔王を消すか、あたしを殺すかどちらかだ。

 この地獄を終わらせるには...」


「この地獄を始めたのは白魔王様です。だから白魔王様が報いを受けるのです」


「この世界にいる全員では白魔王は倒せない。

 闇は光に勝てない。光は闇を圧倒する。そういう風に仕組みを作った神は光に

 贔屓する」

  黒魔王を薄く纏っていた黒い影は真っ黒に色褪せながら渦巻いていった。


「そんなの関係ありません。白魔王様に光などあるはずありません。あるのは呪怨です。」

  ハクは黒魔王の事を真っ直ぐ見つめた。


「貴様らは何も分かっていない。この地獄を...」

 黒魔王の目は赤く光り出して再び影に引きずり込まれていた。


  「次はどこに向かったんだ」


「ファージ村です。白魔王様は私に素質があると言いました。」

 

  「それと何が関係があるんです?」

  ハクは怪訝な顔をしてクレスに尋ねた。


「黒魔王様は地獄を分かってないと言ってました。間違いなくあたし達はさらに残酷な現実を見ることになるでしょう。私の故郷で」


「黒魔王様を止めに行きましょう。今からでも間に合うはずです」

 ハクの言葉に2人は頷いた。


 ***************


  業火はファージ村を支配して焦れたい暑さを漂わせていた。

 コク達は周囲を見回しながら黒魔王を探していた。

  彼らが行くところ死体ばっかりで精神は削れ、足は重くなるが血痕を頼りに

 歩みを進めた。


「クレス、助けて...父さんが...」

 

  「母さん!!」

  クレスの母親は黒魔王に怪我を負わされ足を引きずりながらこちらに逃げて

きた。


  「クレス、黒魔王様は別人の様だわ。父さんが黒魔王に

 殺されそうなの。助けて...」

  クレスの母親は涙を流しながら息子に助けを求めた。


「分かったよ、母さん。必ず父さんを助ける。」

  クレスは母親にそう告げるとコク達と共に黒魔王の所へと向かった。


 **************


  黒魔王は死体を引きずりながら歩いていた。

  その死体は首には締められた跡があり顔は青白く染められていた。


  「黒魔王様!父さんを殺させ...」

  クレスは黒魔王に駆け寄り剣を向けたがその手は震えていた。


「こいつがお前の父親か?」

  黒魔王はクレスの目の前に死体を差し出した。


「父さん...。」

  クレスの父親は変わり果てた姿で何も語ることも無く項垂うなだれていた。


「弱かったぞ。貴様らの一族の魔法など取るに足らない。

 膨大な魔力を操れないのなら...」


「父さんを愚弄するな!!魔法を操れない俺を決して見放したりしなかった。

俺の力であなたを止めてこの地獄を終わらせて見せる。」


  「そうだ。その意気だ英雄クレス...。」

  真っ黒な手に影に引きずり込まれ黒魔王は姿を消した。

 

  「面白いことになったわね」

  カツンとヒールを鳴る音はどんどんコク達の所へと近づいていく...。


 ***************


  赤く染った空を見上げると光を纏った飛来物がこちらに振り落とされた。


  「何だ...これは」

  クレスは恐る恐る飛来物に触れると光は解き放たれ剣のような形状をしていた。


  「あなた達、それは黒魔王を倒す為に作られたひかりつるぎよ。闇を滅することが

出来る」

  その言葉が聞こえるとクレス達が振り返ると白魔王が居た。


  「どういうおつもりですか?白魔王様、こんな地獄を引き起こして平気で

居られるんですか」

  ハクは声を震わせていたが拳を握りしめ苛立ちを必死に抑えた。


「あら怒っているの?珍しいわね。こんな地獄を引き起こしたのは黒魔王よ。

クレス、その剣で黒魔王を殺しなさい」

  白魔王は地面に突き刺さったひかり(つるぎ)を引き出してクレスに渡した。


「俺は白魔王様の操り人形になりません。

 黒魔王様を止めてこの地獄から皆を救い出します」

  クレスはひかり(つるぎ)を白魔王に向けた。


「随分と不可能な事を言うのね。英雄クレス...」


 次回に続く。



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