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僕は、君のヒーローになる。  作者: ブラックキャット
マシーンアイランド編
103/121

白黒戦争前日談 怠惰な神と狡猾な女王。(前編)

  愛と憎しみは紙一重だ。黒魔王の事を愛しくて憎たらしいかった。

 白魔王は自身の中に混同した感情がいつまでも停滞しているのが癪で

 仕方が無い。


  気だるい体を起こしカーテンを開けた。

  窓の真正面から見える稽古場は早くも賑わっていた。

  そこには黒魔王とハク達が居た。

 ゆっくりと窓から降りると黒魔王は彼女に挨拶を交わした。


「シロ!今日は起きるのが早いな」

 

「騒がしくて起きただけよ。貴方は相変わらず剣の修行をしているのね。」


「あぁ...俺は魔力を持たない種族の人達を見捨てたりしない。

 君が理想とする魔法世界と共存できるように...」


  黒魔王は白魔王を真っ直ぐ見つめた。


「それは叶わない話しね。魔法が出来ない人間に寄り添ってられないわ。」


「そんなに魔法が大事か?」


「大事よ。魔法があればこの世界は格段と繁栄するわ。黒魔王、使命を忘れないでくれる?」


  「忘れてなどいない。どちらかを差別をすればいずれ争いを生んでしまう。

 俺は戦争を避けたいんだ。

  君だって人々が苦しんでる姿を見たくないだろう」

 

  黒魔王は自身で選んだ言葉で白魔王に語り掛けたが

 彼女にとってどれも綺麗事に聞こえて嫌悪感を覚えさせた。


  「綺麗事だけを並べても世界は繁栄しないわ。人々の歴史は争いともにあるのよ。戦争を起こしたって貴方のせいにはならない。愚かな人間達がした事よ」


  「俺は当事者にも傍観者にもなりたくないだけだ。争いともにある歴史なんて

 要らない。この世界に血など流れさせない」


「貴方には何を言っても無駄なようね。ハク、行くわよ」

  白魔王はハクを引き連れて黒魔王に背を向けて去っていた。


 ***************


  白魔王はハクともにある村に向かった。

 

  「なぜ、白魔王様は魔法と無力な者との共存を拒絶するのですか?」

  ハクの問いかけに白魔王は踏みとどまった。


「魔力を持たない者に可能性を感じないからよ」


  「努力をすれば必ず報われるはずです。この世界はまだ出来てばかりです。

 彼らの可能性を見限るのは早くないですか?」


  激しい風が吹き荒れる中、白魔王の心の中からはカランという音が鳴り響いて

 崩れた。


  「黒魔王に感化されたようね。綺麗事は輝いて見えるでしょ。眩しくてどんな

 言葉も彼が紡ぐと心に響く。いつだって希望にすがるの」


「それの何が悪いですか?」


  「悪く無いわ。貴方はこの世界が初めてよね。あたしが幾度となく愚かな人間達を見てきた。でも黒魔王はあたしと同じを世界達を見てきたはずなのに希望を消えていない。あるはずのない光を見てるからよ」


  「白魔王様、黒魔王にはこの世界を良くしようと言う信念があります。」


  「あたしにはないって言うの?ハク...」

  白魔王は威圧的に問い質した。


「そうではありません。白魔王様と黒魔王様が互いに協力しあえば素晴らしい世界を築けます。だから...」


「煩いわ。あなたの言葉なんか何も響かない。」

  白魔王がそう言うとハクは押し黙った。

 

  *************


  白魔王とハクはファージ村にたどり着いた。

  そこには畑と人々の住処だけが存在していた。


  「ファージ村にはこの世界で1番魔力を持ったものがいるわ」

 

  「この村にですか?そんな人間どこも見たことないですよ。」

 ハクは周りを見渡して魔力を探ったがどこにもそのような者は見当たらない。


「彼の場合は感知できないの。家に行くわよ」

  白魔王は小さな家にたどり着きドアを叩いた。


「クレスです。何か用ですか?」

  青年はすぐさまドアを開け白魔王達にそう尋ねた。


「貴方に話があるの。」

  白魔王達はクレスの家に上がり込んだ。


「話とはなんですか?」


「貴方、強力な魔法が使えるようね。」


「そうですが...自分では上手く制御は出来ません。力が暴走して家族にも迷惑を

かけました」

 

  「そうね。それは村長から聞いたわ。貴方が魔力を制御できるようにするから

あたしの部下になってくれない?」


  「それは大変、光栄なことですが先程も言ったように」


  「魔力を制御すればきっとあなたは偉大な魔法使いになれるはずよ。」

 

「私はそのような者になりたい訳ではありません。平和に暮らしたいだけなのです。でも魔力を制御できるのなら白魔王について行きます。」


「じゃあ交渉成立ね。」

 

  「はい。お願いします」

  クレスは深々と頭を下げた。


 ***************


  白魔王は自身の家に帰る為、ハクともに道を歩いていた。


  「クレスをどうするおつもりですか?」


「村長に依頼されたのよ。魔力が強すぎるあまり制御できない者がいると。

彼の力が暴走すれば魔法に揺らぎが生じるわ」


  「それが理由ですか?白魔王様」


「そうよ。それ以外に何も無いわ。」


  ふと自分達以外の存在を感じて周囲に視線を向けた。


  そこにはとても綺麗な女性と黒魔王が寄り添って歩いていた。


  「クロ、ここに綺麗な華があるわ」

  その女性は屈んで花を優しく撫でた。


「そうだな。とても可憐で綺麗でまるで君のようだ」


  「何よ突然、照れるわ」

  2人は互いに笑い合い仲睦まじい感じだった。


  「あれは黒魔王様ですかね...」

  ハクの言葉がよく聞こえない。

 ただここが息苦しくて動悸が激しく脈を打っていた。


  こんなにも愛しくて憎しみを覚えさせて苦しくさせるなんて不愉快で吐き気が

しそう。こんな感情、いらない いらない。


  彼女自身の心に黒魔王は爪痕を残して光を与えた。

  それは叶わない恋のあまり彼女に愛しさに上回る憎しみを与えた。彼女の中で

黒い何かが渦巻いた。


 それは"呪怨"だった。

 

 次回に続く。


 



 

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