一年後……
ギーは我が主の小屋からボードゲームを見つけては引っ張りだし、説明書を解読して私と遊んでいた。
一通り遊び尽くしたら、独自のルールを提案してまた楽しむ。
幸いにして小屋にはそこそこの数のゲームがあり、私たちの退屈を紛らわせてくれた。
「ふぁーあ。オセロも飽きたな。次は何するか……」
もうオセロはしばらくやらないでいい。チェスも。
「一号はこういうパターンものを覚えるとそればっかだからな。定石に頼りすぎるとつまんねーぞ」
ギーはいつも私の予想のつかない戦法で勝利を狙ってくる。
対策しようにも、それを読まれてさらに負けてしまうこともある。
手堅い戦法で勝ちを拾うことも多いのだが、どのゲームでも勝率は5分5分といったところだ。
「『メダリオン』はどうだ?」
それもカードの癖を覚えた。
「『暗殺者と神』は?」
リプレイ集をなくしたのギーだろ。探してよ。
「嫌だよめんどくせぇ。あー、一周回ってしりとりでもするか?」
うん。3文字しりとりにしよう。
と、私たちが合意を得たところで、不意にキューという音が鳴った。
私とギーは顔を見合わせる。
ギー、お腹減ったの?
「お前から漏れるマナだけで腹一杯だよ。一号こそ、おならか?」
失礼な。そんな機能はつけてもらってない。
「じゃあ、なんだ?」
さぁ……。侵略者かな?
私たちは再度顔を見合わせ、周囲に視線を巡らす。
もちろんギーが見るのは動けない私の背面だ。
我が主、異常なし。
転移門、異常なし。
小屋、む?
ギー! 小屋の中、なんか小さいのがいた!
「でかした! なんか知らんが遊んでやるぜ!」
ギーは鼻息荒く小屋に突っ込んでいった。
たまには暴れるのも気晴らしになると思ったのだろう。
だが、ギーが小屋に突入してからも、私が予想したような破壊音はいつまでたっても聞こえてこない。
それどころが、キューキューという鳴き声のようなものと、ギーの話し声が聞こえる。
やがて、ギーは一匹の鼠を連れて小屋から出てきた。
同じ鼠でも、大柄な凶鼠のギーと比べると半分くらいの大きさだ。
連れ立って歩くギーの様子はなんだかそわそわとしていて、不自然だった。
ギー、その鼠は?
「ばっかお前、ただの鼠じゃなぇ! 魔鼠のビビさんだ! さんをつけろよ!」
キュー、と鳴くビビさん。
どうやら先程の音の主はこの鼠のようだ。
魔鼠ね。ビビさんは何のご用? 一緒にしりとりする?
ビビさんはキューと鳴くが、私には意味が分からない。
だが鼠同士らしく、ギーには分かるようだ。
「悪いな一号。遊びはまた今度だ。なんでもビビさんの住みかの近くに危険な怪物が出たらしい」
またキューと鳴くビビさん。肯定だろうか?
「そこでおいらの出番。ちょちょいっと倒してやるぜ!」
善は急げとばかりに、ギーは先程と同じように鼻息荒く駈け出して行った。
キューと鳴きながらその後を追いかけるビビさん。
残される私。
3文字しりとりは?
私は、今日は寝るまでギーと口をきかないことに決めた。
「オセロ」または「リバーシ」
二人対戦のボードゲーム。交互に盤面へ石を打ち、相手の石を挟むと自分の石の色に変わり最終的に石の多い方が勝ちという、いわゆる陣取りゲーム。
単純なルールながら戦略としての奥深さが光り、いまだにコンピュータによる全解析は達成されていない。
覚えるのに1分、極めるのは一生がオセロのキャッチフレーズらしい。
「チェス」
西洋将棋とも訳される戦争ゲーム。
6種16個の駒を盤面で操り相手のキングを追い詰める。
「詰み」という意味の「チェックメイト」の言葉はあまりにも有名。
遊戯としての側面のほかに、頭脳によるスポーツとも評される。
「ドミニオン」(『メダリオン』)
カードを使用しデッキ構築を楽しむボードゲーム。
トレーディングカードゲームのような戦略の多様性を持ちつつ、遊ぶ度に大きく展開の異なる新鮮なゲームプレイを実現している。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%B3_(%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0)
「シノビガミ」(『暗殺者と神』)
日本のテーブルトークRPG、いわゆるTRPG。
プレイヤーは妖怪や異能力者や忍者が跋扈する現代世界で忍者組織の一員となり、任務を達成する。
リプレイと呼ばれる基本的なストーリーの流れを題材にした本が多数ある。
もちろん、自分でオリジナルストーリーを作って遊ぶことも可能。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8E%E3%83%93%E3%82%AC%E3%83%9F
「しりとり」
言葉の最後の文字を繋げていく言葉遊び。古くは童歌や護法とも。
特別な道具は不要、参加者は二人から何百人でも遊べるというチート級ゲームである。
日本語は「る」で終わる言葉が少ないため、戦法としてるで攻めることがよく使われる。
三文字限定などの縛りやローカルルールが多数存在する。