ノーお兄ちゃん ノーライフ 前編
朝です。今は日曜日の11時なので正確に言えば午前中という言い方が正しいのかもしれませんが、そんなことはどうでもいいのです。お兄ちゃんはまだ寝ています。昨日大学時代のご友人と飲みに行ってたそうで、夜遅くに酔っぱらって帰ってきました。
これはチャンスです。今日こそはお兄ちゃんの布団の中に潜り込んでやるですよ。
せーのー
「おーにーいーちゃーーーん!」
「させるかぁ!!」
「へぶしっ!」
これは、痛い。痛すぎる。私がダイビングヘッドをかまそうと飛び込んだ瞬間、お兄ちゃんの手刀が、私のおでこにクリティカルヒットしました。……立ち直るのに30秒を要しました。
「……え~、なんで起きてるですか。」
「いや、なんか気配がしたから。」
どこぞの忍者ですかそれは。火影でも目指せばいいんじゃないですか。
「で、トモは何しに来たんだ?」
「良いところに気づきました!お兄ちゃん、ゲームをしましょう!」
3日前から、今日お兄ちゃんと何するかを考えていましたが家でゲームというのも楽しくて良いんじゃないかなって思ったんですよね。そういえば前回新しい服買ってたからお小遣い無くなってたーーなんて口が割けても言えないですね。
「まぁ、いいけど。どうせ新しい服でも買って小遣い無くなったんだろ。」
「ギクッ!」
鋭い!さすがお兄ちゃんです。
「図星なのか。わかった。じゃあとりあえず飯食べてくるよ。」
「ちょっとしたら外に出掛けたりもするので、着替えも宜しくですよ。」
「……?、わかった。」
ふふふ、お兄ちゃんにちょっとしたサプライズ仕掛けるです。
………
……
…
少ししてご飯を食べ終わったお兄ちゃんは、着替えをした後私の部屋に入ってきました。
「それで、なんのゲームやるんだ?」
「もちろんトランプです!」
そういってお兄ちゃんにバイシクルカード(手品でマジシャンの方がよく使うトランプですね。)をズバーンと見せつけます。
「またベタだな、あと二人でやるのはつまらなくないか?」
「ふふふ、お兄ちゃん。私がそれに気づかないとでも?」
「気づいていても良いそうなんだよ、トモの場合」
さすが私のお兄ちゃんですね。正直2人でトランプというのも考えましたが、どうせ私がお兄ちゃんとイチャイチャするだけで特に展開という展開もないですからここは彼女が全然いないお兄ちゃんに潤いを持たせてあげるのも妹の務めかなと。もちろん上手くいきそうになっちゃったら全力で阻止しますけどね。
「まぁ、そう思って私の友達を呼んでおきました。」
あー、一応言っておきますが、3話だからってテコ入れじゃないですからね。新キャラ呼んで色んな話広げようとか考えてないですからね!マミらないですからね!!
「ふふふ、お兄ちゃん今回は二人呼んできました。トランプゲームをやるなら四人でやりたいですからね。」
ちなみに新キャラ一気に二人出すのはお兄ちゃんが混乱しちゃうので双子をチョイスする私の優しさ、まじ天使です。
部屋の扉を開け、私が呼んだ二人を部屋のなかに招き入れました。
「お兄ちゃんこちらが新キャ……私のお友達のアキとミキです。二人は双子なんですよ」
「何か言いかけてなかったか?」
「いえ、別に……」
やばいです。心の声が表に出そうになっちゃいました。あぶない、あぶない。
二人はそんなことは日常茶飯事と気にしたそぶりも見せず
「「こんにちわー」」
とお兄ちゃんに挨拶をしました。双子なだけに息もぴったりです。そんなにぴったりなら幽体離脱でもしてテレビにでも出とけって話です。
「姉のアキでーす。」
「妹のミキです。」
アキがもし【マキ】って名前だったら二人とも名字は、スポーツメーカーみたいな感じだったでしょうに。うーん。非常に惜しいですねぇ 。
あ、お兄ちゃんが一生懸命に覚えようとしてるので手助けでも入れましょう。
「お兄ちゃん。覚えにくかったら適当にラムとかレムでも良いですよ。」
どうです?このフォロー。お兄ちゃんの妹ととしてどこに出しても恥ずかしくないレベルですね。
「なんだその、ゼロから始まりそうな名前は。もう覚えたから大丈夫だよ。」と、すぐ断られてしまったのは意外でしたが。
まぁ、とにもかくにもトランプゲームその1・「ババ抜き」スタートです。
「じゃあ配るぞ」
お兄ちゃんがシャッフルしたカードを周りに配っていきます。
このトランプは特に種も仕掛けもありません。イカサマ用もちゃんと持ってはいますが、イカサマを使わなくても勝てますので今日は使わないです。
ふふふ、なぜならこれには必勝法があります。それは「ババを取らない」こと!私には相手の表情からババがあるかないかと読み取れる能力【超絶心理眼】があります。これで、どこにあるかは一目瞭然!絶対に勝てる戦いとはこのことですよ!
「配り終わったよ。じゃあそれぞれ手札を見て。」
ふふふ、私の一抜けはほぼ確定的ですが。まぁ、少し手加減はしてあげるです。私は負けるのは好きじゃないので勝ちにいきますが、接戦は手に汗握る展開で楽しいですからね。
「…………あれ?」
ん?レム……じゃなくて、双子の妹の方の手が空です。
まだ、カードを持ってすらいなかったですか?……いや、これは……
「あ、あがっちゃいました。」
な、なに!?こいつ、まだ誰からも引いてすらいないのに上がりやがった……だと……?
「ミキすごいじゃん!」
姉はただ単にべた褒めです。妹のミキはたまにこういうミラクルを起こしてくるんですよね。能力名:【幸運引寄体質】とでも名付けておきましょう。まぁ、一人早々あがられてしまったのは予想外でしたがまだ負けたわけではありません。ババが手札に入る確率は1/4!つまりは25%ということです。こんな低確率私にかかれば引くはずがな……
「……!?」
私の手札にババがすでにある……だと……!?
嘘だッ!
……いや、まだです。このババをアキが引いてくれれば……勝機はある。
その後、
ミキを除いた3人で手札から1枚ずつ取り合っていきますが、アキは毎回ババを私の手札から引きません。
「……むぅ」
アキの思考から、ババの位置を変えたりしてますが全然引いてくれない……なぜでしょうか。もう手札も少なくなってきて終わりも近いのに……
「ま、まさか……」
にやり、とアキが笑ったような気がしました。
(いったいいつから【超絶心理眼】があなただけのものだと錯覚していた?)と
つまりは、そういうことですか。アキも私と同じ能力を持っていたということですね。
くっ、相手の力量を間違えていましたね。今回は私の負けということにしておきます。
結局最後まで私の手札にあったババは引かれることなく、ゲームは終了しました。
「ふふっ、皆さんの力を見誤ってました。次からは全力を出して勝ちにいきます。ちょっと待ってて下さい。」
そう言い残し部屋を出ると物置部屋からごそごそとアレを探しだします。
出来ればこいつだけは使いたくなかったんですがね……
「あの、お兄さん」
「ん?」
「ともってゲームする時ってあんな感じですか?」
「……うん。そうだね。だから適当な所で負けてる。」
「そうですか。やっぱり、」
(トモって顔にすげー出やすいんだよなぁ~)
(ともって顔にすごい出やすいんだよね~)
ハクシュン! なんか、私の噂をされてる気がしますね。
続きますよ。