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死んだ村? 信蛇村

「ふんふふんふふーん」


「おはようございまーす。おや? イヅナさん機嫌いいですね」



学校が終わった美香が出勤してきた。



「おう。なんせ今日は家賃の支払い日だからな。懐が温まれば心も温まるってもんさ」


「え? 家賃? イヅナさんアパートか何か持ってるんですか? 」


「んにゃ。アパートじゃなくてビル。ってかここ。言ってなかったっけ? 」


「ええええええ!? そうなんですか!? 初めて知りました! あたし不思議だったんですよ! なんで他に仕事してる様子もないのにイヅナさん生きてるんだろうって」



ちょっと言葉が酷くない?



「凄いですね! イヅナさんったらビルのオーナーだったんですね! 」



凄くはないけどな。ビルのオーナーも面倒だし。

特に確定申告。



「まぁ買ったのは俺の親父だけどな」



親父が死んで俺が相続したのさ。



「そうだったんですね。あれ? でもその割にはイヅナさん毎日のように金が無い金が無いって。ああ、負けてるからか」



悲しい事にそれが事実だ。



「ほい。というわけでこれミカちゃんの給料ね」


「あ。ありがとうございます」


「お疲れ様。じゃ、俺は戦場に行ってくる」


「どうせ負けるのに」



悪いな美香。俺は今日不思議と負ける気がしてねぇんだ。



「いやー。負けた負けた。不思議なこともあるもんだ」


「案の定負けてる! 一体いくら負けたんですか? 」


「3万」


おかしいな。

途中までは2,000枚位出て「ほら見ろざまぁねぇなミカちゃんペロペロ〜wwww」とか思ってたのに終わったら3万円無くなってた。



解せぬ。



「もったいない! 3万円もあれば高級なお寿司とか焼肉がたくさん食べられたのに! 」



失ってからその大切さに気付くよね。



「まぁ明日4万勝てば良くない? 」


「良くないですよ! どうせ負けるんだから! 」



勝つかも知れないじゃんねぇ?



「あのなぁミカちゃん。俺だって毎回負けてるわけでは」


「あのー……すみません」



む。客だ。



「いらっしゃいませー。本日はどのようなご用件ですか? 」



すかさず美香が接客に移る。



「はい……お願いしたいことがありまして」


「ご依頼ですね! それではこちらへどうぞ」



さてさて。どんな依頼かな?



〜5分後〜



「一緒に旅行に来て欲しい。ですか? 」



依頼者は洞山幽子(ほらやまゆうこ)

依頼の内容としては旅行に出掛けるので一緒に来て欲しいとのことだ。



俺たちを雇う理由としては一緒に行ける人がいないのでお金を払ってでも一緒に来て欲しいとのこと。

まぁ女の一人旅っていうのは危険もあるからな。



「はい……お願いします」



長いことこの仕事をしているが、旅行についてきて欲しいっていうのは初めてだ。



たまにショッピングに付き合って欲しいとかカラオケに行って欲しいってのはあるのだが。



「出張料としては1人あたり1時間3,000円となっておりますが」


「はい……問題ありません……あなたとそちらの方お二人お願いします」



参ったな。美香もか。高校生なんだよなぁ。



「ちなみにご予定はいつ頃? 」


「はい……今週末から始まるGW全てです」



なんだと……? 今年のGWは確か9連休のはず。



2人で1日144,000円。それが9日だと1,296,000円!?



と、とんでもねぇビッグビジネスじゃねぇか!



「ほ、本当に大丈夫ですか? 9日間だとこれくらいの値段になりますよ? 」



電卓を弾いて数字を見せる。



「はい……それくらいなら問題ありません」



うおお……マジかよ。



「ちなみに出張料には食事代及び旅費等は含まれませんが」


「はい……私が全て払います」



なんてこった。何者だこの女。怪しいな。



だが、金持ちの道楽という線もある。いや、きっとそうに違いない。それ以外信じない。



「ミカちゃん! GW暇? 」



机で書類を整理している美香に呼びかける。



美香は無言で親指をグッと立てた。素晴らしい。



「ちなみに料金は前払いとなっているのですが」


「分かりました……振り込みでよろしいですか? 」


「ええ! もちろん! 」



おっとっと。浮かれすぎて大事なことを確認し忘れてた。



「あと、非常に紛らわしくて申し訳ないのですが、私は男性ですが大丈夫ですか? 」


「ええ……何も問題ありません」



やったあああああああああ! 大金ゲットだぜ!



「それでは契約書を作成いたしますのでしばらくお待ちください」



こうして俺は洞山幽子と契約を結んだのであった。



「しっかしお金持ちって凄いですね。旅行に行くために見知らぬ人間を2人も雇っちゃうんですから」



洞山幽子を見送ってから美香が言った。



「お金は寂しがり屋だからな。ある所に集まるもんさ」


「ところで行き先はどこなんですか? バリ? ハワイ? ラスベガス? 」


「んにゃ。信蛇村とかいう地図にも載ってないクソ田舎」


「死んだ村!? 名前からしてヤバくないですか? 」


「まぁ怪しいけど金を貰ったんだから今更行かないとも言えないでしょ」


「あ、あー! そういえばあたしGWには予定が」



なんとかして逃れようとする美香の眼前に3本指を立てて突き出す。



「30万円。アルバイトにボーナスなんて出さないが、ボーナスに30万円あげよう」


「くっ……お金なんかに釣られ……行きます」



くっくっく。ただのJKには目も眩むような大金だろうからなぁ。



「よし。そうと決まればちょっと早めのGW開始としようか。女の子は旅行の準備大変だろ? 」


「あ。じゃあ今日はこれで終わりですか? 」


「おう。このまま連休に入るから次会うのは旅行に行く時だな」


「分かりました! では、お先に失礼します! 」



美香は鞄を手に取ると素早く帰って行った。



ふふふ。なんだかんだで楽しみなんじゃないかあいつ。



っっ!? 待てよ? よく考えたら俺今年のGWはJKとお泊り旅行ってこと?



いやいや、2人きりって訳じゃないし。特にあいつとどうこうしようとかそういうつもりはないけどね?



でももう1人の洞山幽子も中々の美人なんだよな。マジか。俺童貞なのにハーレム旅行だよ。



いやいや! 何をおっしゃいますか。美香は俺の大事な部下で洞山はお客様だぞ? 変な事を考えるんじゃないよまったく。



「よし。じゃあ行くか」



〜10分後〜



と、いうわけでやってきましたサカモトキヨシ。目的はただ1つ。コンドームである。



いやだから違うって。そういう目的で買うわけじゃないから。

ほら、あったじゃん? 財布の中にコンドーム入れておくと金運アップするみたいなおまじない。あれよ。



「落ち着け俺。ただ買い物するだけだろ? 」


「ありがとうございましたー」



俺が店の入り口で尻込みしていると店内から人が出てきた。

というか美香が出てきた。



「おひょおっ!? イイイイイイヅナさん!? 」



うわ、なんだこいつもう暗いのにサングラスして大量の買い物してんぞ。



「おう。ミカちゃん。どうした? 」


「りょ、旅行の準備ですよ! 」


「なんでサカキヨに……? 」



そしてなんでこんなに焦ってるんだ?

あっ! ナプキンか。



生理用品を買ったところを知り合いに見られて照れてるのか。これはデリカシーが足りなかったな。



「そ、そんなことよりイヅナさんこそどうしてサカキヨに? 」


「えっ?! 俺? 」



びっくりして声が裏返ってしまった。



「俺はほら、あれだよ。頭痛薬を買いにな。あれって酔い止めにもなるから旅行の時は持って行った方が便利なんだ」


「へー。すごいです! 大人って感じですね! 」



い、言えない。

「イェーイ! 本当はコンドームを買いに来たんどぅぇーっす! 」なんて言えない。



「で、ではあたしはこれで! 失礼します! 」



ピュンと走り去る美香。あの大荷物でよくもまぁあんなに走れるな。



「さて。では俺も行こうか」


「いらっしゃいませー」



よし。店員は若い男だ。女の子だったら俺の心は折れていたかもしれない。



歩きながらブツを探す。しまった。コンドームがどうやって売られてるのか分からねぇ。



え? どうやって売ってんのあれ。箱? 箱詰めなの?



ヤバいな。キョロキョロしすぎて万引き犯だと思われてしまうかもしれない。



「あった」



しまった。つい声を出してしまった。間違いないあれはコンドームだ!

すげぇ。女向けのタバコみたいな箱に入ってるのか。



うお。結構種類あるじゃん。どれがいいんだ?



「ピューピュピュピュー」



口笛を吹きながらコンドームの陳列されている棚の前を往復する。俺も美香のようにサングラスが欲しい。



あれか? あの0.01mmって奴か? つーか0.01mmってなんだよ。どんな世界だよ。



サッと万引き犯さながらの手つきでコンドームを手に取る。よし。



あとはカモフラージュの為にお菓子とかも買っておこう。

「しまった! お菓子買いに来たのにコンドーム紛れ込んでた! 」みたいな気持ちになれる。



「ありがとうございましたー」



ふぅ。ミッションコンプリートだ。いやぁ。コンパニオンのフリしてヤクザの飲み会に潜入した時より緊張したわ。



ははは。買いすぎてさっきの美香と同じくらいの量になってしまった。



こうして俺は来る旅行に向けて胸やらナニやらを期待で膨らませながら帰路についた。














なお、サカキヨでレジを担当していたアルバイトの青年は若い女が2人続けて(1人は男だが)大量のお菓子とコンドームを買って行ったので「やっぱり今の女は肉食系なんだなぁ」などと思っていた。


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