【ソーセージ mari & mari】 〜 #7 ごみたまり、隣の人に寄りかかられて困ったら
【ごみたまり、隣の人に寄りかかられて困ったら】
長距離バスは車酔いしない人や体力ある人にとっては
料金も安く、重宝な交通手段だ。
だが、長時間同じ人といるのはちょっとした不都合もある。
「ああん、もう困るんだな〜」
ごみたまりの隣に座った中年男性はお疲れなのか深い眠りに
入っていた。それはいいのだが、ごみたに体重預けるほど
もたれかかってくるのだ。
こういう時、ごみたは人目を気にしたりあまり遠慮しない。
両手で中年男をトスして向こう側へ押し返すのだが、
しばらくするとまたもたれかかってくるのだ。
「もう、確かにあたしはおじさんも引き寄せるくらいの
魅力はあるわ。でも夜は落ち着きたいのよね。
ベタベタされるのはガマンできないわ」
かつて、毛布を一枚ゲットするためにホームレスと一晩
付き合うほどタフなごみたも少々ニガテらしい。
「こうなったら奥の手ね」
ごみたは腰浮かせ、網棚から大型バックを取り出した。
その様子をチラチラ伺っていたハンサムヤローがほくそ笑んでいた。
彼の隣の席は空席だったのだ。
「おっ、あの女、席変わる気だな。ちょっと気になってたんだ。
こっち来いよ」
わざとらしくないようにハンサムヤローは寝たふりをして
ごみたが隣に映って来やすいよう知らんぷりをしてみせた。
だが、ごみたまりの解決策は全く違っていた。
「これでよし!」
ハンサムヤローはズッコケた。
なんとごみたは『世紀末覇者風』のゴツい武具、プロテクター、
ヘルメットまで着用して中年男の寄りかかりを防いだ。
これなら直接男には触れないため夜も安心!
肩や手首などから幾本も突起物が施されているがそこにもたれかかって
も覚めないほど中年男の眠りは深かったが。
リラックスしたごみたは『孟子』を読みながら旅を続けた。