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使節艦隊

お待たせしました。

遅れた理由は『境界』と『制限』を同時に執筆していたからです。

アストデル共和国使節艦隊。正規空母1隻、戦艦2隻を中心とした大艦隊。

旗艦、エリクサリーに乗艦する特使モングソウ・ベッヘラーはこれから向かうニホンなる国について思考を巡らせていた。

 有史以来人類と機械の上に君臨してきた叡智の塔。

 その塔の守護者と言うからにはそれ相応の文明を有しているのは確実。技術力は少なくともアストデル共和国と同等と考えるべきだろう。

 「特使殿、悩み事ですかな?」

 「艦長」

 悩んでいたモングソウにエリクサリー艦長アックス・エリアス大将が声をかける。

 「やはりニホンのことですか?」

 「ええ、やはりあの叡智の塔が守護者と明言し、あの忌々しい鉄くず共との仲介役にすると言ってましたから」

 この世界の住人にとって叡智の塔とは神の如き存在だった。そんな存在が自身の守護者と自分達を会わせようとしている。

 気になるのは当然だった。

 「まあわざわざこちらとコンタクトを取ろうというのですからいきなり攻撃を受けることはないでしょう」

 「それはそうでしょうが……」

 未知の国家と接触しようというのに楽観的な意見を言うアックスに呆れるモングソウ。

 「何、国交を結ぼうというのですから、彼らは機人(きじん)共とは違って話は通じるでしょう。こちらが何か不手際をしない限りドンパチすることはないでしょう」

 アックスの楽観的な言葉と笑みにモングソウは多少なりともプレッシャーが薄れるのを感じた。

 「ん?」

 外からジェット機特有の轟音が聞こえたので、窓辺へ行くと甲板で偵察攻撃機が発艦しようとしているところだった。

 「偵察機を出すのですか?」

 「ええ、叡智の宣言を知った機人の襲撃も考えられますし、出迎えのニホン艦隊も見つけておきたいので」

 隣に来ていたアックスの説明を聞いて納得するモングソウ。

 視線の先では艦上偵察攻撃機が蒸気カタパルトによって弾き出される。

 発艦速度に達した機体は、蒼空に向けて駆けていった。






空母エリクサリーから発進したバッハム艦上偵察攻撃機は10分前から変わらぬ洋上を飛行していた。

バッハム艦上偵察攻撃機はアストデル共和国が開発した単発複座の機体だ。

 最高速度はマッハ1・7と遅めだが、優れた航続距離と安定性で陸上型も含めて人類文明の多くの国で採用されている。

 「マンディ、何か映ってないか」

 操縦担当のバルバ大尉は後席のマンディ少尉にレーダーに何か反応が無いか聞くがマンディは否定する。

 「何も映ってません。そろそろ合流地点に着くので何かしらの反応があってもいいはずですが……」

 彼らは既に叡智の塔が指定した日本艦隊との合流地点の近くに来ている。事前の提案では彼らが日本本土まで誘導することになっているのだからアストデル共和国艦隊より先に着ているはずなのだが、影も形も無い。

 「ところで大尉。ニホンってどんな連中なんでしょうね?」

 「どんなって、事前に受け取った叡智の塔の情報に人間の黄色人種だって書かれてたことくらい知ってるだろう?」

 「そうじゃなくてどんな文化とか技術を持っているのか、気になりませんか?」

 マンディは楽しそうに喋る。叡智の塔の守護者の任の担う民族、というものに純粋に好奇心が働いているのだろう。

 「そうだな……東のほうにある邪馬台国の連中に近いんじゃないか?黄色人種でそれなりの技術力持ってるのあそこくらいだし、参考にはなるだろ」

 バルバ大尉は東からの機人の侵攻を防いでいる黄色人種の大国の名を挙げる。

 蛇足だが、この世界では人種差別はそこまで酷くない。機人という共通の敵がいるため、見た目が似ている種族同士いがみ合っている場合ではないという考えがあるためである。

 「まあ列強に名を連ねている黄色人種で高い文化も持っている国家は彼らくらいですしね……ん?」

 「どうした?」

 「いえ、今レーダーにチラッと反応が」

 バルバはそれが今探しているニホン艦隊、もしくは空母から発進した偵察機だろうと判断した。

 「どこだ?」

 「方位0-4-5。高度500フィートくらいです」

 「よし、そこに行くぞ」

 「アイ・サー」

 機体を滑らせてレーダーの反応があった場所へ向かう。

 やがて2つの黒点がバルバの視界に入る。

 「ん?」

 黒点はみるみる大きくなってバルバ達の方へ向かってくる。

 「来たか」

 ニヤリと笑うと機首を黒点に向けて速度を上げる。亜音速まで達した瞬間、灰色の何かとすれ違う。

 機を反転させ、灰色の航空機と並ぶ様に飛行する。

 「ほう、これがニホンの戦闘機か……」

 バルバの目には先ほどすれ違った航空機が鮮明に映っていた。

 色は全体的に灰色で主翼と胴体に国籍表記と思われる赤い丸が描かれている。

 主翼下には対空ミサイルと増槽、何かポッドのようなものを懸架していて、機体後部には2枚の垂直尾翼と着艦フックらしきものがある。

 双発単座のジェット艦上戦闘機。外見から分かるのはそれくらいだった。

 「うちのクララベルより早そうですね」

 「ああ、全体的に洗練されてるな」

 マンディの意見にバルバが相槌を打つ。

 ちなみにクララベルとは人類文明各国で主力の艦上戦闘機である。外見はF-4Eに似ており、単座であること以外はスペックも近い。

 『こちらは日本海軍所属小林孝少尉。貴機の所属を問う、どうぞ』

 「こちらはアストデル共和国海軍所属バルバ・ロッセン大尉だ。我々を誘導するニホン艦隊を探しに来た。艦隊は何処か?どうぞ」

 『艦隊はここから10キロ離れた場所にいる。貴国の艦隊が近づく頃には我々も到着している。安心されたし。どうぞ』

 「……了解した。艦隊にはそう伝える。アウト」

 無線を終えると2機の戦闘機――F/A-3Aは翼を翻して去っていった。

 「マンディ、艦隊への連絡は?」

 「しました。まもなく到着するようです」

 「そうか。じゃあ俺達は上空で待機だ。何もないと思うが、一応警戒してな」

 「了解です」

 そのままバルバ達はアストデル共和国艦隊が来るまで合流地点上空で旋回し続けた。






 アストデル共和国艦隊が偵察機をレーダーで捉えたとき、共和国艦隊を超える大きな反応があった。

 「艦長!水上レーダーに感あり、方位0-5-0より正規空母を含む艦艇多数!」

 「おいでなすったか」

 アックスは淡々と呟き、指示を下す。

 「各艦、警戒を怠るな。ただし、許可を出すまで発砲、ミサイルのロックオンは禁ずる。繰り返す 許可を出すまで発砲、ミサイルのロックオンは禁ずる」

 警戒しながら進む共和国艦隊からもしっかり見えるほど近くに来た。

 正規空母1隻を中心に広がる巡洋艦と駆逐艦。アムルタでは人類、機人共に海軍艦艇は地球でいう第2次大戦の艦艇を改装したような軍艦が主流だ。そのアックスから見て、日本のどの艦隊ものっぺりとしている印象がする。

 どの艦も灰色で統一されており、駆逐艦と巡洋艦は砲が一門しかないが甲板に板のようなものがついている。

 空母はガトリング砲が1門とランチャーと思われる装備が複数あり、飛行甲板はかなり広い。

 機動力はありそうだが武装は貧弱な軍艦。それがアックスの評価だった。

 「艦長、アレが日本艦隊かね?なんというか……予想していたものと違うな」

 「確かに。叡智の塔の守護者というからには排水量6万トン越えの巨大戦艦などを期待していたんですがね」

 拍子抜けしたといわんばかりにアックスに話しかけるモングソウ。2人とも期待外れだったという表情を隠そうとしない。

 「わざわざ我が国を指名したからにはそれ相応の軍事力を有していると思ったのだが……」

 「彼らの戦力が貧弱でないというならば……我々とドクトリンが違うのか、それとも技術体系が違うのか、ですね」

 「どういうことかね?」

 「彼らが戦力の運用思想……つまりどのように戦争で勝つか考えているか、ということです。それが我々とは違う、彼ら独自のものであれば兵器もそれに沿ったものになります」

 兵器とは使う国ごとに違う。その理由は国毎にそれぞれどんな風に戦争するか決めているからだ。

 ソ連なら圧倒的砲兵火力と兵員数で包囲殲滅。アメリカなら高度にシステム化された陸海空三位一体の連携によって分断し、物量によって各個撃破。

 それを実行するためには兵器もそれに適した仕様であることが求められる。肉を切るのに包丁ではなくオタマを使うわけにはいかない。

 故に自国で開発できるなら開発し、輸入やライセンス生産する場合でもできるだけ自分達のドクトリンに合ったものを選ぶのだ。

 「つまり彼らの考えている戦い方ではあの装備は適切だと?」

 モングソウは疑わしそうに聞く。彼は外務官僚として人類文明各国の兵器を見てきたが、日本の兵器はそのどれよりも弱そうだった。

 それには理由があり、アムルタではミサイルを始めとする誘導兵器があまり使用されていないのだ。

 ベトナム戦争時、米軍のサイドワインダーは命中率が高くなかったが、この世界ではどのミサイルもそれを下回る数値を叩き出した。

 お互いに相手の電子機器を妨害する電子戦機を投入しあったこともそれに拍車をかけた。

 そのためアムルタではミサイル戦を意識した兵器の開発がほとんど行われていなかった。ミサイルの信頼性向上が急がれているが、まだ充分な成果は得られていない。

 「まあ彼らがどのような技術を持っているか分からない以上、ここでこれ以上論じても無駄でしょう」

 「……そうですな」

 会話を終えた彼らの元に連絡員が駆け込んでくる。

 「艦長!ニホン艦隊より電文!『我、ニホン海軍なり。貴艦をこれより誘導す』とのこと!」

 「分かった。彼らに失礼がないように気をつけろ」

 日本の正規空母――和製ニミッツ級空母大鳳に目を向ける。

 「さてニホン。叡智の塔の守護者の力、見せて貰うぞ」

 アックスは普段では考えられない、獰猛な笑みを浮かべた。

次回更新は未定。

それと活動報告で作品に関する大事なことが。

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