プロローグ
何とか書けた……。
レシプロ機が主役の作品は筆が勝手に動くのに、ジェット機が主役の作品は筆が重い……。これはレシプロ機を書けという啓示なのだろうか?
と、そんな阿呆なことをほざきつつ投稿です。
巨大惑星アムルタ。太陽並みの大きさを誇るこの惑星にある国家が転移してきた。
日本。かつて太平洋という地球最大の海の覇権を巡り、世界最強の国家と戦争した末に滅び、属国として蘇った国。
その国がアムルタの、それも人類文明と機械文明を分ける世界の境界と称される叡智の塔の目の前に転移してきた。当然これは偶然ではない。
叡智の塔が転移させたからだ。
この世界では知らないものが多いが、叡智の塔には叡智の塔は人間を超える能力を持った人工頭脳が搭載されている。
彼(叡智の塔に性別は無いが便宜上こう呼称する)前々から危険視していた。
アムルタで行われている戦争。そしていずれ自らの下に来るであろう者達を。
人間にしろ、機械にしろこの力を手にしたらまず真っ先に相手を滅ぼそうとするだろう。
それは彼にとって望ましい事態ではない。彼の役目はこの世界での事象――生命体の進化、文明や道具の発達の仕方とありとあらゆる情報をアカシック・レコードに送り届けること。
片方が滅べば戦争は減るだろう。人間、機械同士の戦争も起きるだろうが、今ほど激しくはなるまい。
その頃にはどちらにしろ種全体が精神的に成長して、戦争を控えようとする。起きても規模を抑えようとするだろう。
そうなってしまえば技術の発展、種全体の進化が滞る。戦争しているときと同じ速度で進化してくれればどちらかが滅ぼうが構わないが、そうなる可能性が著しく低い以上、両者には殴り合って貰わねば困る。
だが殴りあいすぎて共倒れされても困るし、バランスが崩れてどちらかが圧倒的に不利になっても困る。
そこで自身の叡智を狙う者を追い払う守護者兼仲介人を求めた。
アカシック・レコードで調べたところ地球にある日本という国が適切と出た。
周辺に信頼できる友好国が無く、外交力も低いために力に頼るほか無かった国。
今は世界大戦で大敗し、属国に身を落としたがそれでもポテンシャルは十分。転移を実行したことは伏せておき、各種資源と技術、それに世界の情報を与えて国民を手懐けつつ裏から国の中枢を掌握する。
この星が寿命を迎えるのはまだ先だが、そのときも忠実ならば次の惑星に転移させてもいいだろう。
この考えの下、日本は異世界に誘われた。心ある誰かが聞けば勝手な理由だ、と憤慨するかもしれない。
だが考えて欲しい。この転移は日本にとって悪いことだろうか?
叡智の塔に従っていれば資源、技術に困ることは無く、お眼鏡に適えば星の寿命が来ても他の星に転移させてくれる。
偽りに塗れた歴史を盾に喚きたてる隣国も、裏切り上等の覇権主義国も、鬱陶しい宗主国もいないのだ。
他国に悩まされること無く、自国の問題も叡智の塔が解決してくれる。
ある意味、日本は楽園に来たのではないだろうか?
転移直後の日本は混乱の極みにあった。当然だろう、突然国外にいた日本人と資産が国内に戻ってきており、国内の外国人と外国資産は消え失せていたのだから。
だがそれらの問題はすぐ解決した。日本海だった場所に現れた叡智の塔が日本に接触してきたからだ。
塔は日本にこの世界の説明し、各種資源と技術の提供を条件付で申し入れた。
・日本は必要に応じて叡智の塔の防衛及び人類文明と機械文明の仲介を担う。
・叡智の塔は1の条項が守られている限り日本に資源、技術を提供する。
・日本が1の条項に反したと叡智の塔が判断した場合、叡智の塔は2の条項を履行しなくてもよい。
・1の条項を履行するために日本は憲法9条を改正し、国防予算をGDPの5パーセント以上に引き上げる。
・東京以外の都市への首都機能の移転などの有事の際への備え、研究に対する報酬の大幅な強化、兵器開発のための電波暗室等の設備設置などを行う。
・日本は叡智の塔の指示に可能な限り従う。
この提案に日本は飛びついた。条約に反対したものは「じゃあ資源とかどうするんだ?」、「戦争反対ってアメリカいないんだから軍拡は必要だろうが」と賛成派の意見に封殺された。
こうして叡智の塔の援助を受けながら日本は自衛隊を国防軍に改変、他国への侵攻能力獲得に始まり、空母機動部隊の設立、空軍の大幅拡張、陸軍の機甲師団数増加など自衛隊改め国防軍にとっての春が訪れた。
ただ日本政府と叡智の塔が経済を優先したためそれらの配備は緩やかな速度で行われたこと。液体火薬砲、レールガン、電磁カタパルト、ステルス機などの開発が大幅に遅れたことが不満だったという。
そして全ての準備が整った皇紀2687年(西暦2027年)。叡智の塔は人類文明に属する国家、アストデル共和国に対しメッセージを送った。
『私は叡智の塔。私に興味があるであろう人類文明に属する貴国に私の守護者たる国家、日本との国交樹立を願いたい。これまで私はこの世界の戦争には不干渉を貫いてきたが、ここにきて守護者に人類文明と機械文明両者の仲介を担わせようと思う。貴国が賢い選択をせんことを』
このメッセージにアストデル共和国は使節団を乗せた艦隊の派遣を決定。
日本と異世界のファーストコンタクトが近づいていた。
次回更新は未定。『極北』よりは早く、『制限』よりは遅い更新速度になると思います。