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 繭の中は灰色のくすんだ色をしていた。


 アレイスターは、ラベンダーのそばでふわふわと浮かんでいる。

 ラベンダーは、これは一体何でできているのだろうと思いながらじっと見つめていると、どうやら草糸で編まれていることに気付いた。


 空間の真ん中に誰かがうずくまっている。


 ラベンダーは息を吐いた。


「アニス、ここにいたの…」


 アニスは白いドレスを着ていた。

 膝のあいだに顔を挟んで肩を震わせている。


 アレイスターを連れてアニスに近寄り、薄い肩に手を置くと彼女が顔を上げた。

 唇は青紫になり、ひどく弱っている。目の色もかすんでいて、見えているのだろうかと不安になった。


「アニス?」

「ラベンダー…? ラベンダーなの?」


 アニスは顔を上げたが、力が入らずそのまま俯いてしまった。

 ラベンダーは隣に座り彼女の肩にそっと触れた。


「ここで何をしているの?」

「怖くて…」


 アニスの体は冷えていた。


 早くしないと、彼女の体力がもたないかもしれない。


「アニス」


 ラベンダーは剣を取り出しアニスに見せた。


「これは?」


 アニスがおびえた顔で剣を見つめる。


「これは、私たちの人生を左右する剣よ。あなたから先に選んで」

「どういうこと?」


 アニスの顔はこわばり、ラベンダーから離れた。


「アレイスター城主が誕生してしまったために、彼を育てなくちゃいけないの。そのために、今は不在であるサマークイーンとウインタークイーンを復活させる時が来たのよ」

「よくわからないわ」


 アニスは混乱した顔をしていたが、ラベンダーのそばでふわふわ浮いている赤ん坊を覗き込んだ。


「ローズのおじい様ね」

「ええ、可愛いでしょ」

「なんて可愛い赤ちゃん。抱いてもいい?」

「もちろんよ」


 アニスが立ち上がり、アレイスターを抱きあげる。

 アレイスターは穏やかな顔で眠っている。


「可愛いわ」


 アニスの顔に輝きが戻る。


「この子のために何ができるの? 喜んで手伝うわ」


 アニスはそう言った後、思い出したように口を押さえた。


「けど、先に大問題があるわね。忘れちゃいけないけど、私は復活したらすぐに扉を閉めに行くつもりよ」

「ええ、もちろん知っているわ」


 ラベンダーは慎重に答えた。


「けれど、アレイスターをこのままにすれば、彼は以前と同じ黒い魔術師になる可能性がある。冥界の扉も大事だけど、アレイスターに同じ道をたどらせるわけにはいかないの」

「分かったわ…」


 アニスは決心したようだった。そっとアレイスターを寝かせると、まっすぐにラベンダーを見上げた。


「どうすればいいの?」

「ただ、握るだけでいいの。剣が選ぶから。でも、自分を信じて」


 ラベンダーが剣をアニスの前にかざした。


 剣は鈍い光りを放っている。


 アニスはごくりと喉を鳴らした。


「ねえ」


 アニスはふとラベンダーを見た。


「どうして私なの?」

「え?」

「わたしはただの白い魔女見習いよ」


 ラベンダーはふふふと笑った。


「あなた、本当にただの白い魔女見習いだと思っていたの?」





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