欲望
ジョーンズは、タンジーが他の男に抱かれているのが許せなかった。
「彼女を渡して欲しい」
「僕はこの娘の兄だ。これから大事な儀式がある。一瞬でいいんだ。静かにしていてくれないか」
ジョーンズはかっとなると、ナーダスからタンジーを奪った。
タンジーが目を覚ます。
「タンジー、大丈夫か?」
タンジーは一瞬、きょとんとしたが、目を大きく開くと、ジョーンズに抱きついた。
「ああ、ジョーンズっ」
首にしがみついて、叫ぶような声を出した。
「夢みたい、あなたが手に入るなんて」
タンジーは、無我夢中でジョーンズにしがみついた。
「タンジー、久しぶりだな」
ナーダスの声に、タンジーはぎょっとした。
タンジーが悲鳴を上げる。
「タンジー、この男を知っているのかい?」
ジョーンズに尋ねられ、タンジーは震えながら首を振った。
「し、知らない、こんな男知らないわ」
ジョーンズは、タンジーを引きよせながら、ナーダスを睨んだ。
「彼女はこう言っているぞ」
ナーダスは顔をこわばらせた。
「僕を信じてくれないか。今、タンジーに魔法をかけないと大変なことになる」
ジョーンズは、タンジーを横に立たせると、ナーダスにいきなり殴りかかった。
不意を突かれて、ナーダスは後ろに吹っ飛んだ。
「行こう」
ジョーンズが背を向けた時、ナーダスが杖をかかげた。それを見たタンジーが、右手を振りおろした。
バシーンと杖が真っ二つに割れる。
ナーダスは茫然とした。
タンジーはにたりと笑うと、兄に手を振った。
「ジョーンズ、早く二人きりになりたいの。あたし、もう待てないわ」
タンジーの声が囁きかける。ジョーンズの欲望も限界だった。
「ああ、僕の方が耐えられないよ」
宿に戻ると、二人は駆けこむように部屋に入った。
「ジョーンズ、焦らしてごめんなさい。あたしがバカだったの――」
言葉を遮るようにジョーンズは、タンジーの口を塞いだ。洋服を破るように裸にして、二人はベッドにもつれこんだ。
ジョーンズは、これまでに経験したことのない感情に振り回され、喉の渇きと同時にタンジーを求めた。
驚いたのは、タンジーが処女ではなかったことだ。
キスひとつで赤くなった女性とは思えない。タンジーの喘ぐ顔にめまいがする。息ができない。
喉を締め付けられ、貪るように口を塞がれるたびに首を振って息を吸った。
タンジーはしつこく離れなかった。疲れたから、と拒もうとしたが、まだ足りぬと体をくっつけた。
喉の渇きに、ジョーンズは意識を失いかけた。
顔を叩かれて目覚めさせる。
「まだだ、まだだよ」
タンジーの声が頭に響く。
最初は、悦びに打ち震えた身体がしだいにけだるげで、だるくなる。目を開けていられない。
逆に、タンジーは生き生きしていた。彼女が自分の肉体を貪るたびにジョーンズは青白くなり、指先にさえ力が入らなかった。
最中に意識を失ったのは初めてだ。
「ジョーンズ…ジョーンズ…」
ロイの声に、ジョーンズは薄目を開けた。
どうしてここにロイがいるのか、疑問に思うのも億劫だった。
「ジョーンズ? 大丈夫か?」
水を差しだされ、ごくりごくりと飲み干す。
「もっと」
「ああ…」
ロイが水を足してくれる。喉の渇きが収まると落ち着いた。
ジョーンズは裸でベッドに横たわっていた。手の中にタンジーがいないと落ち着かない。
彼女とずっと戯れていたい。
「なんだ、そのみっともない格好は」
ロイが吐き捨てるように言って、ジョーンズにシャツを手渡した。
「着ろ」
ぞんざいな口調で言われ、しぶしぶ腕を通す。
「ほら、下着もズボンもだ。恥知らずめ」
ロイの言葉は辛辣で頭にくるものだったが、ジョーンズの脳は麻痺していて何も考えられずにいた。
洋服を身にまとうと、ぼうっとする頭を押さえた。
「タンジーは?」
「彼女は今、食事に行っている。それより、アニスが戻らないんだが。後、魔法使いとその仲間たちもだ」
ジョーンズは目をさまよわせると、ロイに頼んだ。
「ロイ、タンジーを探してくれ」
「だから、タンジーは…」
ロイが説明しようとすると、ドアが閉まる音がした。ジョーンズは音のする方へ顔を向けた。
「起きたの?」
タンジーが部屋に入って来た。青いドレスを来た彼女は胸の大きさを強調した洋服に着替えていた。
ジョーンズに歩み寄って抱きしめる。
「綺麗だ…」
ジョーンズがその胸元にキスをした。
「あら」
ふふふ、とタンジーが笑う。ロイは顔をしかめると、部屋を出て行った。
タンジーからバラの匂いがした。急いで洋服に手をかけると、
「だめよ、破らないで、せっかくのドレスが台無しよ」
タンジーはするりとドレスを脱いだ。下着もつけておらず、全裸だった。
タンジーがジョーンズに覆いかぶさり、ジョーンズは彼女を貪った。
妖艶な女性の肉体に溺れた。




