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Unknown  作者: 朔望
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Part:2 The continuance of the dream 1-[Ask your haert]

Memory of M


「だめ!!!!」

「えっ!?何で?」

 唐突に言われてびっくりした。

「だってお前めちゃくちゃつおいもん!! 」

「そうそう、面白くないよぅ!」

「あっち、行こうぜみんな!」

 ほらいつものパターンだ。

「いいもん、一人のほうが好きだもん!!」

 遠ざかる背中に叫ぶ。

 いつもと同じ台詞を、

 でも懲りずに同じことを繰り返す。



「早く起きなさぁい!!!」

「んぁゎぁ〜・・・・・何?母さん」

「何?じゃないわよ。転校初日から遅刻してどうすんの!!!」

 時計の針は六時半を指していた。

「だからって、こんな時間に起こさなくても・・・・」

「あら、早起きは三文の徳って言うでしょ」

 また、適当なことを・・・・

 でも、まぁ、あのまま昔のいやな思い出を夢で見てるよりましか・・

 そんなことを思いながら階段を下りていく。

「父さんは?」

 きょろきょろとあたりを伺いつつ訊く。

「道場よ、ほら早く朝ごはん食べちゃって」

「ふーん、朝早くから物好きなもので」

「いつもの事よ、あんただってちっちゃい頃はそうだったじゃない」

「ふぁ、ふひぁひはっふぁ・・・無邪気だったからねぇ」

 食パンを頬張りながらしゃべると、二回しゃべることになってしまった。

「またやってみる?」

 冗談www

 もうこりごりだ、やりたくない。

「行ってきます」

 そういって家を出た。



Memory of T


 くっそ、僕は、僕はなんなんだっ!!!!!!

 僕は人を殺してしまった。文字どおり自らの手で―――

 

 かつては綺麗に整頓されていた筈の其の部屋は、すでに見る影もなく荒れている。

 枕からは羽が飛び散り、壁には穴があき、打ち付けた右腕からとんだ血飛沫が壁一面に飛んでいる。

 どれだけ傷つけようと右腕の傷は瞬く間に傷跡も残らなくなった。

たとえ、腕の骨を折ろうが、包丁を突き刺そうが、結局何をしようとも、痛みはあるものの体は健康そのものに再生する。

 

 親は頻繁に何か叫んでくる。

 だからって、たとえ愛情があっても僕の苦しみなんて誰にも分かるわけがないっ。



血を失くし続けて、ふら付く頭で思考しようとしても、僕に分かることはひとつのみ。

 「僕は、バケモノなのかっ???」

何度もつぶやいた其の言葉は赤く染まった壁に消えていった。




Memory of Y


 あれから二週間、病院で検査しては首をかしげられ、警察で事情を聞かれては首をかしげられ、終いにはオオカミ少年かのような扱いを受けていた。


 両親だってあの事件の半分も信じてないだろう。

 あの状況から言えば俺たちが容疑者だ。しかし、凶器は見つからず、少年は二人倒れており、目撃者の少女は意味の分からないことを言うんだ。此れじゃぁ、事件が解決するはずがない。それに、あの現場には俺たちの血だって流れてた。外傷はまったく無いにもかかわらず、だ。

 全く警察も気の毒なもんだ。一人苦笑する。

 そもそも、あれはなんなんだ。

 いくら考えたって答えは見つからない。あの男(ニュースで中野だったか仲居だったそんな名前だったことを知った)の異形の腕、そして其の腕に酷似した冬真の右腕。

 くっそ、理解できない。

 それも結局病院で目覚めたら、元に戻っていた。それに、俺が見た夢、似たような夢のことを有利も話していた。俺は何か不安を感じて自分の夢のことは話さなかったんだが。

 結局あれはどう説明をつける?

 俺と冬真、そしてあの少女、三人が同じ記憶を共有してるんだ、夢だとは思えない。だとしたら、あの腕は、、、、

 

 「あぁ〜〜、くそっ!!!!!!!!!!」何時も同じ答え。

 行き着く先は「わけ分かんない、」だ。

 「こぉらっ!!またそんなに険しい顔して、老け顔になっちゃいますよー」

 「うおぁっ!!!!!!!!」不意の攻撃に間抜けな声を出す。

 今、眼の前で、俺の眉間の皺をつまんでいるのは、俺のもう一人の幼馴染の智紀だ。

 智紀って名前でも、男じゃなく、女の子だ。三人でよく日が暮れるまで遊んで、きまって三人ともそれぞれの親に捜され、別々の口から小言が同時に飛んできた。そんな平和な日々を過ごしてきたんだ、来る日も来る日も。

 

 「そろそろ、朝のホームルームが始まるんじゃないかな?ほら、早く早く」

 半ば引き摺られる様にして教室へと向かう。

 教室に入ると隅のほうに冬真の机が見えた。中は空だ、何にもはいってはいない。

 あれから冬真には会ってない。自分の部屋に引きこもったきりだ。

 俺だって、どんな顔して会えばいいのか分からない。だから、内心ほっとしているのかもしれない。



 「おらぁーー、ガキども、席につけっ!!!!!!!!!」

後ろから怒声が響きわたる。

 「うるさいよ牧ちゃん、朝っぱらから酔ってんの?」

智紀が耳を押さえながら言う。

 「おぉ、そうか今日もあたしはいい女かぁ」

 「酔ってるね、もう、決定っ」

 「これこれ早とちりするねい。上機嫌って言うんだよ、こういうのは」

智紀はなぜかこの担任と友達のように話す。

うん、楽しそうだ。それもいつものこと。


変わらない、何も。

変わろうとする気配すらない。


 ――――俺の心の中がどうであろうと、いつものように世界は変わらずに進んでいく。

        一人の世界がどうなろうと、人類の世界は不変なんだ―――――

 

 そう、冬真の席を見ながら思う。



 

 

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